リンドウについてはだいぶ以前に触れたことがある。長野県の花と指定されているリンドウであるが、それは園芸用に植えられている花をもってそう言われるわけではないだろうが、ちまたではそんな捉えかたをされてもしかたがないほど野から姿を消している。秋の花かと思うと春や初夏に咲くリンドウもあるが、そんなあまり意識しなかった季節のリンドウ以上に、秋の野からリンドウは姿を消した。
比較的昔のままの姿を残す自宅の近くのため池に二年ほど前にその姿を見たが、その年はそのため池で拝見しただけであった。あまり群生するという花でもなく、その際も一株程度であった。昨年はまったくその姿を捉えることはなかったが、この土日に妻の実家を農作業で訪れたところ、やはりため池の土手で久しぶりにリンドウの姿を捉えることができた。雑草がたいぶ伸びていたが、それでも夏の終わりに刈られたであろう土手には、ススキなどの丈の長い草は目だっていない。適度に日当たりがあって、丈の低い草花にはよい環境が維持できているのだろう。遠めで少しばかり紫色が見えたことで期待はしたが、この季節はツリガネニンジンが賑やかに咲いていて、間違えているのかも、という不安もあった。しかしそれとリンドウの紫色は濃さが違う。ということで寄ってみると見事にリンドウだった。やはり三株ほどと少ないものの、遠めでも期待を膨らませたほど目立つ存在であることに違いはない。
ここのため池は頻繁に訪れているにもかかわらず、リンドウを捉えたのは久しぶりのことである。「確か咲いているのを見た」程度の記憶だったので、どこに咲いていたかもあまり記憶になかった。草刈りの時期にもよるのだろうが、たまたまここ数年咲いている時期に訪れなかったのか、あるいは草刈り後で拝顔できなかったのか定かではない。もともと人造の工作物であるため池なのだが、けっこう自然環境上は多様な世界であることは今までにも何度か触れてきた。妻はこのため池に思いいれもあって、自然の残っている空間と言うが、こと植物だけで捉えると、自宅の近在にある比較的人目につくため池の方が多様な植物が残っている。池の中のことまでは解らないが、それぞれのため池にそれぞれの特徴があることを知る。思い入れのあるため池は、メダカもいればツボ(たにし)にドショウもいる。トンボの種類もとても多い。ほかにため池のような空間がないことによってため池が特別に目立っているだけなのかもしれないが、小さな生物にとってこれほど住みやすい場所はなさそうである。
リンドウについては検索してみると冒頭でわたしが述べたように、園芸用のものがたくさん登場する。自生しているものと園芸用の項目が半々くらいにひっかかるということは、いかに園芸の世界で一般化している名称であるかが解る。いわゆる絶滅危惧種として指定はされていないものの、わたしの視界ではとても珍しい花であることに違いはない。仕事で野に出て、またプライベートでも野に出ている者の視界は、かなり現実に近いと思うのだが…。
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