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Cosmos Factory

伊那谷の境界域から見えること、思ったことを遺します

「伊那市」駅

2007-09-28 08:27:44 | 歴史から学ぶ
 わたしが毎日利用している「伊那市」駅について、昔から思っていたことがある。ふつうは「市」という接尾語はつかないのだが、この駅は「市」とわざわざついている。近在を見渡しても○○市という駅はない。不思議に思ったまま今に至っている。近ごろ昭和初期の国土地院の地形図を見ていたら、今の「伊那市」駅は「伊那町」駅と表示されていた。自ずと市制施行されたことにより駅名が変更されたということが解る。このごろの平成の大合併によって、市名が変わったり、市制施行された町もあったりで、駅名が変更されたところも少なからずあるのだろうが、どちらかというと広域名とか、地名に関係しない市名になったようなところですぐさま駅名が変わるということもないのだろう。

 なぜ「市」という名称が付けられているのか、よその話を検索してみた。たとえば出雲市駅の旧名が「出雲今市」であったのは、市制施行する前のその場所の自治体名が今市町であったためで、市制施行により自治体名が出雲市となったことで改名したようだ。このように市制施行によって駅名が変更された例は多く、それ以前には接尾語がついていなかったものの、改名して接尾語がついた例は多い。なぜ「出雲」ではなく「出雲市」になったのかという部分はわからないが、一般的には同名の駅が存在するため、区別するために「市」を付すケースが多い。このことについて調べていたら、大変詳しいページがあった。「駅名接頭・接尾語考」というもので、なぜ接頭語や接尾語がつくのかを探ることができるとともに、全国のそれらの駅名が紹介されている。必ずしも「なぜ」という部分は想定になり、本意は定かではないが、納得させられる部分が多い。

 その中で紹介されている「市」の接尾語が付されている駅名について、そのまま引用させてもらうと次のような44駅がある。



 ここで解るのはJRの駅では少なく、それ以外の路線の駅に多いことだ。この記事の中でも述べられているが、もともと国鉄時代にあった駅名に「市」という接尾語が付いていない駅があって、後に開業した私鉄が同名の駅名を付けられないために、「市」という接尾語を付したものが多いようだ。それどころか、先行して設置されていた私鉄の駅が、国鉄駅が開業したために改名を余儀なくされたケースもあるという(伊予鉄道・松山市、秩父鉄道・行田市)。伊予鉄道については、国鉄の駅が昭和になって開通し、「国鉄はお国の幹線だから」などという理由で国鉄の駅のほうが松山駅を称するようになったため、伊予鉄道の「松山」駅を「松山市」駅とせざるを得なくなったという。ということで、基本的には国鉄時代の駅に「市」が接尾語として付される例は大変珍しいことになる。

 ではなぜ「伊那市」となったのか、やはり前述のページでも紹介されているが、飯田線には「伊那○○」という駅がいくつもある。そうした「伊那○○」という「伊那」を接頭語に利用している駅と区別するために「町」を付したという印象がある。もともと伊那町という自治体名であったわけであるから、必ずしもその理由か正しいともいえないが、「伊那の町」という区別であったら市制施行をしたからといって「市」に変えなくともよいように感じるのだ。と、そんなことを考えていると、「いな」という二文字の呼称は呼びにくいからか、なんて考えもしたが、実はJRの「津」駅のように一文字の駅名もあるからそれはまったく該当しない。「伊那」という同名の駅があるわけではないから「伊那」のままでもよかったのだろうが、やはり同名の接頭語が付された駅と間違えないための「伊那市」が現実的理由といえよう。

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