開拓者であり、亡命者

今日はゲイの人にはあまり興味の無い野球（ベースボール）
のお話。

日本でもアメリカでもオープン戦が始まり、いよいよ
あと1ヶ月弱でシーズン突入しますが、自分が毎年
注目している選手がいます。

・・・・その選手はタンパベイ・デビルレイズに所属して
いる野茂英雄選手です。

野茂選手は６８年に大阪で生まれました。小学校・
中学校では野球部のエースとして大活躍。高校の
進学先に関西にある野球の名門校を希望しましたが、
当時の高校野球部の顧問に「あんな投げ方では大成
しない」と鼻で笑われ、入学を拒否されました。
結局進学先は野球では無名の高校。その高校時代には
鋼のような肉体を持った剛速球ピッチャーがいるとの
噂で大学やプロのスカウトが視察に来ましたが、
コントロールの悪さと独特の投げ方がスカウトの
連中に嫌われ、結局ノンプロへ進みます。

ノンプロ時代にようやく花が咲きます。その時に
バットにかすりもしないフォークボールを得とくし、
ノンプロチームでエースピッチャーに君臨します。また
ソウルオリンピックでも活躍。日本を銀メダルに
導きました。

翌年ドラフトで異例の８球団から指名を受け、近鉄が
交渉権を獲得します。そして当時では破格の１億円の
契約金が用意され近鉄に入団。その時の条件として
フォームをいじらないという１文が野茂の希望により
契約書に書き加えされました。

プロ１年目から野茂は大車輪の大活躍。シーズン終わって
みれば投手部門のタイトルを総なめにします。

しかし４年目に野茂の環境が大きく変わります。監督に
呑気な仰木監督から鈴木監督へ交代。鈴木監督とは
起用法、トレーニング方法など様々な事柄で衝突します。
いつしか日本の封建的な野球界に呆れて、メジャーリーグ
でのプレイを夢見るようになります。野茂は幾つかの法律家、
マネージメント会社と接触。野球規約の隙間を突いて
近鉄から自由契約選手の権利を獲得。ドジャースと契約を
結びます。

ドジャースで野茂は大活躍。現地でノモマニアが出現する
ほど社会現象化します。１年目でオールスター出場、新人賞、
奪三振賞を獲得、順風満帆な滑り出しとなります。彼の活躍で
日本人選手でも十分メジャーで通用することを証明しました。
その後メッツ、ブリューワーズ、タイガース、レッドソックス、
再びドジャース、今年からデビルレイズと幾つもの球団を
渡り歩きます。

野茂の残した記録は素晴らしいものがあります。

アメリカンリーグとナショナルリーグでノーヒットノーランを
達成。アジア選手初のメジャーリーグ１００勝を達成・・・・。

でも何といっても彼が成し遂げた偉業は、がんじがらめの
日本の野球界と戦い、そこから抜け出して、１人でメジャーに
乗り込み、後に続く日本人メジャーリーガーの為に道筋を
作った事にあるのではないでしょうか。

今現在日本のスポーツニュースは活躍しなくてもイチローや
松井を取り上げていますが、海外では野茂が活躍すると
しばしばニュースで取り上げられ、キャスターは必ず
「この人が道を作らなかったら、イチローや佐々木といった
日本人選手はメジャーでプレイできなかっただろう。」と
彼の偉業を称え、地元ファンのみならず、アメリカで
生活をしているアジア系やその他マイノリティーの人々に
勇気を与えています。

野茂は一昨年肩の手術を行い、その回復が思わしくなく、
昨年は不本意なシーズンを送りました。今年は選手層が
薄い球団での再出発なので、先発のイスは比較的勝ち取り
やすいと思います。

今年は既にオープン戦で２試合登板しています。まだ
本調子ではないようですが、問題は無さそうです。地元
新聞も間違いなく投手陣の柱になってくれるだろうと、
久々のスター選手の入団に期待を寄せています。

日本の三流スポーツ紙は３０代半ばを過ぎた選手で、少し
調子が悪いとすぐ「引退」と書き立てますが、メジャーでは
過去に４５歳でも１５０kmの剛速球を投げたノーラン・
ライアンや、４６歳までエースで若いチームを引っ張った
チャーリー・ハフ、今年も現役を続行する４２歳のロジャー・
クレメンスなど３０代はおろか、４０代になっても１０勝以上
する選手は結構います。彼にも怪我を克服してもう一花、二花
咲かせて欲しいものです。