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散歩 ◆新潟市のあたり

日々綴り 新潟市のあたりから

東京「進化」論

2009-06-22 05:33:21 | 本、映像・音楽
東京「進化」論-伸びる街・変わる街・儲かる街  増田悦佐 著 (朝日新書)

20年ほど前に博報堂生活総合研究所から出された
街の「人の流れ」をキーとしたマーケティング視点の本、タウン・ウォッチングがありました。
この新書ではそれの下敷きの上に20年の変化を重ね、
「住んでみたい街」と個人が発信している「まちブログ」を組み合わせながら、概要としてまとめた感じの新書。
マーケティング書の色は薄く、ここで取り上げられた街をこの視点で歩くとおもしろいかもと感じた本でした。

「タウン・ウォッチング」で発見、創造された「一つ目小町」。
今もその傾向は変わらないのだということを確認したことがこの本での収穫。
「一つ目小町」というのは、巨大ターミナル駅の一つ隣あたりの駅周辺に
隠れ家のように使える魅力的な店がある「ちいさなまち」ができるているというものであった。
「わざわざ」出かけていきたくなるお店のあるところとも表現されていたかな。

さて、東京(首都圏)のように鉄道を交通の基幹と捉えられない新潟市では
どんなところに「一つ目小町」が出来ているのだろう。
大規模郊外型ショッピングタウンが「巨大ターミナル駅」に相当して
旧来の商店街の中に「一つ目小町」の芽をもったところがあるのかもしれない。
そんなことを思ったのでした。

夜をゆく飛行機

2009-06-12 06:04:00 | 本、映像・音楽

夜をゆく飛行機 角田光代 著

1999年の秋。四人姉妹のいる酒屋さんが舞台。
お店の奥に居間があり、物干し場のある ちょっと古めかしくて懐かしい感じのある家。
四女「里々子」は受験生。色々な出来事が彼女の回りで起こる。
次女の小説が賞をとり、嫁にいった長女が突然家に戻ってくる。
父の妹が突然亡くなり、近くにお洒落なショッピングセンターが出来る。
そんな出来事の連続にも なにもなかったように過ごそうとする父母。
重くなりそうな出来事の中、淡々と進むのは里々子の眼で語られているから。



1999年はちょうど十年前。
ああ こんな家族いそうだなと思い、
ちょっと前のことを思い出しながらこの小説空間に入っていく。

この作者の作品にいつの間にかその作品世界の中に引き込まれてしまう。

あかね色の風 / ラブ・レター

2009-06-01 21:00:03 | 本、映像・音楽

あかね色の風 / ラブ・レター あさのあつこ 著

あっ、白い芙蓉のようだ。
千絵の笑顔を初めて見た時、そう思った。・・・
この書き出しではじまる「あかね色の風」。
小学六年生の遠子のクラスに転校生がやってきた。その娘の名前は千絵。
クラスではちょっと距離を置いた感じたけれど、実はなかよし。
まちに新しいショッピンクゼンターが出来て、山からナウマン象が出た。
そんな夏の物語。

もう一編は 小学五年生の女の子のはなし。
はじめてラブレターを書く、その気持ちの動きを綴る2日間の物語。

小学説の頃。今年もどこかでこんな物語があるのでしょう。
そんな懐かしさも感じた二編でした。
「バッテリー」での少年を生き生きと描いていた作者の少女を主人公とした短編。

オトナの片思い

2009-05-20 20:41:36 | 本、映像・音楽

オトナの片思い

その仕方も忘れてしまっている オトナになっての恋。
まるで恋知りそめし頃のようなときめき。
短編集でその執筆陣は
石田衣良、栗田有起、伊藤たかみ、山田あかね、三崎亜記、
大島真寿美、大崎知仁、橋本紡、井上荒野、佐藤正午、角田光代

最初から読むのではなくぱっと開いたところ読むというのも、短編集の楽しみかたのひとつ。
「やさしい背中」「わか葉の恋」「小さな誇り」など、この短編集の読みはじめに良いかも、
そして別の短編へ たとえば ちょっと変わったこんな話も良いかも
下の階の男性の作る料理、おいしいと一言「Enak!」
離婚する夫婦のおかしな関係「ゆっくりさよなら」

ルパンの消息

2009-05-13 22:34:41 | 本、映像・音楽

ルバンの消息 横山秀夫 著

15年前、ひとつの事件が時効を迎えた日に起きた女教師の自殺。
それは殺人事件だった。
警察に入った情報は、教え子の男子生徒三人が犯人だというもの
時効まで24時間。15年前の真実は出てくるか。

警察を舞台としたミステリーですが、
半分は「教え子の男子生徒」の話すあの日のことで構成されています。
「あの日」の出来事。「15年」のそれぞれの時間。
いくつもの人間のドラマが埋め込まれていて「犯人探し」に終わっていない作品です。

こんな一節があります。(抜粋 転載)
15年前、事件の真相を探すなか、友達のアパートへ行く。
サラ金の貼紙の貼られた鍵のかかったドアの向こう人の気配に強引に入ると、そこには彼の妹が隠れていた。
・・・「誰もいないんです、ごめんなさい」
少女は泣き声になった。
喜多は激しく込み上げてくるものを懸命に堪え、噛むように言った。
「違うんだ。相馬の・・・君のお兄ちゃんの友達なんだ。うーんと仲のいい友達なんだ」
「・・・」
すっかりコタツに潜ってしまっていた少女が、目と鼻だけ表に出した。喜多の顔をジッと見つめる。
「覚えてるだろう? ほら、こないだ麻雀をやっているところで会った」
「うん」「よかった ー じゃあ出ておいで 」「・・・お金・・・いいの?」
・・・「ご飯は? ご飯もう食べた?」「・・・」「食べた?」「・・・まだ」
・・・橘が気を利かし、ラーメンでなく、チャーシューメンが届いた
「さあ食べよう」「うん」
・・・よほど空腹だったのだろう、小さな手で丼を抱え、スープをゴクゴクと飲みはじめた。・・・

すきまのおともだちたち

2009-05-07 20:53:51 | 本、映像・音楽

すきまのおともだちたち 江國香織 著 こみねゆら 絵

経済学者にインタビューのために訪れた街。
仕事が捗り上機嫌の「私」は帰りの列車の時刻まで街を見て回り、
気分良く手紙を書き終えて立ち上がると・・・
迷子になってしまった「私」を助けてくれたのは
「おんなのこ」とプライドが高く車の運転の出来る「お皿」。
そんなちょっとかわった「おともだち」とのものがたり。

ファンタジーなのだと思いながら読みはじめると
これは旅の物語なのだと思いはじめるのです。
ちょっと気持ちがざらざらしてきたかもと思ったときに良いのかも、これは。

ぼくと、ぼくらの夏

2009-05-02 05:41:57 | 本、映像・音楽
タイトルに「夏」とはいっていると手にとってしまうんですよねぇ・・・

ぼくと、ぼくらの夏 樋口有介 著

高校二年の夏休みの朝、同級生の女の子が自殺したと刑事の父から聞いた。
「彼女のことを考えようとしたが、たいした印象をもっていないことに、すぐ気がついた。」
街で偶然会った今年同じクラスになった酒井麻子とその死の真相を探ることに。
そして、もうひとりのクラスメイトのひき逃げによる死。

何気ない高校生の夏休みの風景の中に、非日常のことが入り込むがそれも淡々と書かれ、話が進んでいく。
ミステリー小説の区分になるのだろうけれど
惹かれたのはこれがちょっと前の高校生の青春小説のような描写が所々にあること。
喧嘩をして借りていたものを突き返しにきた彼女。平手打ちを食らわし、ドアを強く閉めた。
平手打ちを食らった彼はしばらくして、彼女のバイクの音がしなかったことに気がついて、ドアをそっと開いてみた。
「・・・目の前に見えたのは麻子さんのシャツの背中と、ボニーテールをとめてある黄色い輪ゴムだった。・・・(中略)・・・僕は恐る恐る手をのばし、ボニーテールの先を抓で、ちょっとひっぱってみた。首をふっただけで麻子さんはまだふり向かないので、今度は三度、少し強めにひっぱった。・・・」
末尾の「解説」のなかにもあるのだけれど、彼女は「ツンデレ」。
ずいぶん前に書かれた小説ではあるけれど、
高校生の恋する女の子の行動は本質的にはそれほど変わっていない。
この小説を今読んでも古すぎると感じないのはそんな描写が所々に見えるからなのかもしれない。

フォトグラフノート 2009 Number3

2009-04-27 21:14:38 | 本、映像・音楽

フォトグラフノート 2009 Number3 誠文堂新光社

特集は「都市」を撮る。その視点と表現
登場写真家は森山大道、松江泰治、内山英明、尾仲浩二、瀧本幹也、中野正貴、柴田敏男、佐藤信太郎
「都市」のビル群を写した写真。そこで生きる人々の写真。街の造形。山の中の人工物。
写真家の表現。

「都市」を撮ることに興味があれば、
この雑誌で「都市」を撮ることに興味がわけば
ピンと来た写真家の写真集。巻末の七冊の写真集などを参考にアプローチする。
そんなことを思うに良い本号の特集です。

雷撃深度一九・五

2009-04-25 22:37:53 | 本、映像・音楽

雷撃深度一九・五 池上司 著

原爆を運んだ米海軍重巡洋艦インディアナポリスを、日本海軍の伊58潜水艦が撃沈した史実。
それを題材に史実とフィクションを絡ませて書かれた小説。

インディアナポリス、伊58を時系列で併行に
交戦する登場人物の因縁もはさみながら
遭遇、交戦、インディアナポリス撃沈、伊58帰投と描かれます。

潜水艦戦闘だとやはり 映画「眼下の敵」の場面を想像して読みますね。
ここでも対爆雷、無音潜航、奇策がみられます。

余談
巡洋艦インディアナポリスの名は
スティーヴン・スピルバーグ監督による1975年のアメリカ映画『ジョーズ』(Jaws) の中にも出てきます。
これは撃沈後の悲劇を語ったもの。
この悲劇のことは
巡洋艦インディアナポリス号の惨劇(朝日文庫)が参考になるでしょう。