散歩 ◆新潟市のあたり

日々綴り 新潟市のあたりから

Feb.

2010-01-27 21:04:17 | Story 1
 2月って 何となく嫌いだ。寒いのに、春のような日射しだったり。
 この時期、今まで知り合った顔も、別の場所に離れていくまでの時間をよんでいるみたいで、何かを言い出したいけれど、時だけがただ過ぎていく。言い出せない気持ちに、時間を戻せるものならばとばかり思う日々。

 過ぎた日が戻らないことなんてわかっている。でも、断片が浮かんでは消えるこの季節、やり残したことばかりで辛くなる。
 もっと寒ければ、その寒さで震えていられる。もっと暖かければ新しいことに気持ちが向くのに。

 行き先が見えない。

 いや、見ようとしていなんだ、この季節には。



 坂の途中にその店はあって、いつもコーヒーと暖かさで迎えてくれる。
 今日も、いつもの扉を開けてそこへ行く。いつもの顔が並んでいるあのカウンターの席へ。

Jan.

2009-12-27 20:16:42 | Story 1
「あけましておめでとうございます」
「ずいぶんあらたまった言い方だなぁ」「おめでとう」
「いよいよ卒業だね」「いつ頃までいられるの ? 」
「2月に入ったら荷物をまとめて、中頃くらいかな」
「そっか あと一ヶ月か」
「どうした ?  なんかいつもと違うぞ」
「・・・」「由紀ちゃん元気 ? 」
「唐突だなぁ」「元気だよ。」
「電車のホームで泣くんだぜ」「今生の別でもないのに」
「そこが かわいいんでしょ」
「そっかな」



「じゃ」
「手紙くれよ」
「イ ヤ」
「そんなこというなよ。」「オレ書くからさ」
「・・・しかたないなぁ」「 (・・・私の方が先に出会ったんだよ・・・) 」

Dec.

2009-11-27 21:06:36 | Story 1
 紅茶の香りとクッキーの甘い香り。

「今度 結婚するの」

「え !? まだ学生だろ。卒業まで一年あるし。」

「学校は卒業まで通うよ」
「彼もご両親もそれでもいいって、いってくれたから。」
「あっ ! 子供が出来たからじゃないからね。」

「どんなひと」

「あなたの知らないひと。でもいいひとだよ。」

「・・・そっか。 おめでとう」

「・・・うん」「由紀ちゃんを大事にしなよ」

 それから、店に流れる音がただ通り過ぎていくだけで、なにをしていたのだろう。



「そろそろ、出ようか・・・」

「・・・今までの話 全部 嘘 ! 」

「 えっ ・・・」

Nov.

2009-10-27 20:24:15 | Story 1
学園祭

「待ってる間にさぁ」
「ん ? 」
「ラブレターもらった。」
「すごいじゃないか。」「確かにちょっと見 かわいいもんな」
「今度の土曜日 もう一度会ってくださいって・・・」

「何となく、気乗りしない感じだなぁ」
「・うん・・」

「それじゃ。オレが彼です。ってやってみようか」
「ほら、嘘っぽいテレビドラマにある あれ (^_-) 」
「あっ それいいねっ」
「やってみたかったんだ。オレの女に手を出すな ! って」
「じゃ 今度の土曜日」



喫茶店

「そいつは何時くるんだ?」
「来ない」「指定場所は別の店」
「え !?」
「でも、待ち合わせ時刻は 今だから」

Oct.

2009-09-27 17:55:25 | Story 1
毎年秋に開かれる定期演奏会。今年はその最後の参加の年。


「(そうそう もっと うたって)」「(周りの音を良く聞いて)」


「来たよ」「よかったよ。はい ! 」
「わっ ! すごい 赤い薔薇の花束だ。」
「勘違いしないでよ。花言葉とは関係ないんだからね。」
「はい わかってますって」
「ても、勘違いしてみたい気もするけどなぁ (^_^)」

「これから 打ち上げなんだ。」
「ほら 由紀ちゃんが待ってるよ」「最後なんだからって、はめ外すんじゃないよ。」
「じゃ (^_^)v 」



「そうだ ! 約束だよ。」「今度はうちの 学園祭に来てよ ! 」
「おっ 行くよ ! 」

「・・きっと だよ・・・」

Sept.

2009-08-27 21:37:57 | Story 1
いつもの喫茶店。

「ここがいつも来ているお店なんですね」「素敵なお店ですね」
「いらっしやいませ」
「ブレンドをください。」
「いつもの」
「はい」

「あら? 珍しい女性連れ」
「あ 倶楽部の後輩で、」
「由紀です。Tomoさんですね」
「? はい」
「いつも お名前おうかがいしています。」
「そうなんですか」
「(あっ)いい人だって伝えているから」
「どうだか」



「今度定期演奏会があるんです。」「是非来てください。」
「(それはオレが先に言いたかったんだよ)」
「年一回の定期演奏会なんだけどね。今年で最後だし、聴きに来てくれないかな」
「それは 是非 (なんで先にいわないのよ)」

Aug.

2009-07-27 20:40:50 | Story 1
いつもの喫茶店。

「夏休みでしょ」「家に戻らないの ?」
「卒業研究があるからね」
「え !? ちゃんとしてるのぉ ?」「いつもここにいるから留年かとおもったわ」
「口が悪いなぁ。いつものことだけど」
「どういたしまして」
「(微笑)」

「なに見てたの 」
「この映画見に行こかなぁと」
「 好いみたいよ」「見てないけど」
「そっか じゃ行くことにしよう tomoさん推薦なら」
「感想聞かせてね。(本当は一緒に行きたいくせに)」
「。。。あ ああ」




夏期合宿おわりの帰り道。由紀と。

「合宿楽しかったです。」「見たい映画があるんです。今度連れていってください。」
「・・・うん」
「ありがとうございます。」

July

2009-06-27 06:17:33 | Story 1
 「CMが面白いと思うんだよ」「それもラジオの」
 「え どうして」「テレビじゃなくて」
 「テレビもいいんだけどさ」「画が流れていくだけみたいで、なんか違うんだよなぁ」
 「また、変わり者が顔だした」
 「そんなことはないと思うんだけど」

 「CMって毎日全く違うもの流すわけではないだろう」「ある周期で交換していくじゃない」
 「で、そんな中にドラマ仕立てのがあるのさ」「ふたりの話でさ、CMが変わるたびにふたりの距離感が変わっていくのさ」「ちょうど、まえのCMとの間に何があったんだろうという含みを持たせてさ」
 「画でも出来るんだろうけれど、音だけで作るラジオだとさ、登場するふたりの顔って、聞き手のイメージの中に出来るじゃない。そして繰り返すうちに、ふたりの間に何があったかという話を聞き手がつくる。」

 「こんなこと思うのはラジオドラマって、好きだったからかなぁ」



 「CMとしては、商品がわからないんじゃないの」
 「そうだね。具体的なかたちのある商品には向かないね」
 「でも、ふたりが幸せそうに思えたら、それで安心をうる生命保険だとか何かに使えるんじゃないかなぁ」

 「ふぅぅん」

 Tomoさんとはこんな他愛無い話をしていた。

June

2009-05-27 21:05:07 | Story 1
いつもの喫茶店

「先週ね。夜の遠足へ行ったよ。」
「なに それ ?」
「え!? 知らないの」「うちの学校とそちらの学校との昔からの共同企画でしょ。」
「そんなのあったの ?」「ところで、何するの」
「夕暮れ時に公園を出て、夜通し歩いて 明け方に湖に着くという『夜の遠足』」
「え! あそこまで80kmくらいあるんじゃないの」
「そう、夜通し歩く間にカップルが出来ることもあるって 企画 」
「そっか、 知っていたら出たな」
「当然 いるものだと思っていましたわ 」
「残念 ! ずっと学校にいて知らなかったとは」
「本当 ? 講義に出てたの」「代返頼んで 別のことしてたんじゃないの」
「いえいえ、講堂と部室と食堂に毎日通いました。」
「ほんとにぃ」「ここにいつも居たんじゃないの」
「あ 」



部室から下宿への帰り道。帰る方向が同じだった「由紀」と一緒。突然のにわか雨に傘一本。

「傘にお入りよ」
「はい」
「送るよ。で、どう行けばいいのかな」
「そこを曲がって」「ここを曲がって」

「あれ、遠回りだったんじゃない?」
「長く歩きたかったから」

May

2009-04-26 18:12:16 | Story 1
 5月の連休明けには、クラブの新入部員のパート分けもほぼ固まる。学部の関係もあり未経験者もかなりの数入ってくるので、そのレベルにあわせた基礎練習が始まる時期となる。

「先輩、このメンバーがうちのパートの新入部員です。」
「ちょうどいい数が揃ったね」
「そうなんです。」「でも、一人だけ初心者で、なかなか音がでないんです。」「教えてもらえますか」
「どうせ暇だからなぁ」「お前らと違って、オレも初心者で、なかなか音が出せなかった口だからな。」
「そうですね。その話、水谷先輩から聞いています。」
「そうだ、お前らみたいに簡単にできた人間と違って、苦労人の方が指導はうまいもんだぞ。」
「はい お願いします。」
「よぉっし それでは 誰だ。」
「この娘です。」



 マニュアルに書いてある通りには、なかなかできないもので、マニュアルが理解できるのは出来るようになってからなんてことが、往々にしてあるものでした。

「名前は ?」
「由紀です。」