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散歩 ◆新潟市のあたり

日々綴り 新潟市のあたりから

かもめ食堂

2009-10-09 21:50:35 | 本、映像・音楽
   かもめ食堂 ruokala lokki
監督 ; 荻上直子 / 脚本 ; 荻上直子
出演 ; 小林聡美/片桐はいり/もたいまさこ/ヤルッコ・ニエミ/マルック・ペルトラ
音楽 ; 近藤達郎
2006年 日本、フィンランド

「Pasco超熟食パン」CMに「かもめ食堂にて篇」というのがありまして
この雰囲気が好いなぁと思っていたのです。
その「かもめ食堂」がこの映画。
フィンランド、ヘルシンキで「かもめ食堂」をひらいたサチエ。
でも なかなかお客さんがきません。
日本アニメオタクの青年、図書館で知り合ったミドリさん。
おいしい珈琲の入れ方を教えてくれるちょっとこわいおじさん。
空港で荷物が出てこなくて困っているマサコさん。
悩みをかかえたおばさん。とちょっとかわったひとたちが少しずつ来るようになって・・・

かもめ食堂のメインメニューは おにぎり(梅、鮭、おかか)、
鮭の網焼き、豚しょうが焼き、とんかつ、卵焼き、シンプルなごはんなんです。
そこはシンプルで心地よいカフェ。
かもめ食堂でおいしいコーヒーを飲み、サチエの料理を食べた人たちは、心の静けさを取り戻していきます。

さて もうひとつ きっとシナモンロールが食べたくなります。

図書館の神様

2009-10-05 21:05:20 | 本、映像・音楽
  図書館の神様 瀬尾まいこ 著

早川静(きよ)。この名は三代目になる。
先代は母が飼っていた雑種犬のキヨ。初代は母方の祖母喜代。
バレーボールに打ち込んできたが、あることをきっかけにバレーボールから離れる。
しかし、バレーボールはしたい。
大学卒業間近、バレーボールのコーチ(クラブの顧問)になる方法に気付き、高校の講師となる。
採用されたのは海の見える高校。でも割り当てられたは文芸部の顧問。
部員はただひとり。見た目は体育会系の垣内君。

垣内君も実は同じようなことを体験しているのだが、
そんなことはふたりとも語ることなく
ふたりのやり取りを中心にこの小説は進んでいきます。
話の展開とからむように 本作には色々な文学作品が出てきます。
そして一年が終わる頃、静は教師になることにするのです。

永遠の出口

2009-09-08 21:44:25 | 本、映像・音楽
  永遠の出口 森絵都 著

普通の少女、紀子が語る
70年代、80年代を舞台に
誕生日会をめぐる小さな事件の10歳から
18歳高校卒業までの九つのおはなしとエピローグ。

児童文学に区分されるらしいが、
おとなの、特に女性が読んだならきっと同調する部分が多いのではないかと思う。
見ている方からは劇的な、情緒的な、大事件と呼ばれる類いのものはないけれど
本人には劇的な、情緒的な、大事件がおこります。

第七章
高校生になった紀子ははじめてアルバイトをします。
アルバイト先は「ラ・ルーシュ(蜜蜂の巣)」と云う名の小さな欧風レストラン。
そこで出会ったお店の人たちとのふれあい。楽しいアルバイトの時間。
そしてここで力関係の変化とお店の居心地。社会の縮図と現実に触れます。

エピローグ
「・・・あの懐かしい風の匂いが鼻をかすめるたび、私は少しだけ足を止め、そしてまた歩きだす。」

あの懐かしい風の匂い。
この小説の九編にはそれがありました。

となり町戦争

2009-09-04 05:21:34 | 本、映像・音楽
   となり町戦争  三崎亜記 著

となり町との戦争がはじまった。
だけど銃声も聞こえず、昨日までと同じように人々は平穏な日常を送っている。
それど町の広報紙に発表される戦死者数は確かに増え続ける。
そんな戦争に現実感を抱けずにいた「北原修路」に、町役場から任命書が届く。
「戦時特別偵察業務従事者」
なんのことかわからず「総務課となり町戦争係」に電話すると香西さんという女性が説明してくれた
・・・やることは通勤時に通る隣町の国道沿いのことを偵察員記録表に記すこと。
そんな日々が過ぎ突然「戦時拠点偵察業務従事者」に任命替えされる。
これは「となり町」に「舞坂町の分室」を置き、香西さんと夫婦として暮らし、偵察業務をすると云うこと。

この小説には戦闘殺戮場面は出てきません。
戦闘場面・・・と言えないこともないでしょうが、脱出劇がひとつでてきます。
まるで公共工事のひとつのように処理される「戦争」。
もしかして戦争の中にいて情報が統制されていたならば・・・
・・・見えない戦争。この小説にはそのひとつが描かれているのかもしれません。

東京物語

2009-08-19 21:44:50 | 本、映像・音楽
   東京物語  奥田英朗 著

80年代の東京
大学を中退した田村久雄は小さな広告代理店でコピーライターをしている。(あの日、聴いた歌)
コピーを作らなければならないが、出前でとったカツ丼も食べられず、走り回らされる。
コピーは通らなかった、明日の朝にもう一本と言われた。
その日はジョンレノンが撃たれた日。

この小説は六編からなり
各々のタイトルに日付が記されています。
最初の一編「あの日、聴いた歌」は1980/12/9
続いて1978/4/4、1979/6/2、1981/9/30、1985/1/15、1989/11/10
キャンディーズ、名古屋オリンピック招致、バブル、ベルリンの壁崩壊、そんな時代を背景に
田村久雄の、浪人し大学に入り、コピーライターになり、独立して30歳を迎える直前のものがたり。
「大学十二年生」「青春が終り、人生は始まる」
この言葉が出てくる「バチェラー・パーティー」でこの小説は終わります。
作者と同年代ならば懐かしさに胸の苦しさを覚えるかもしれない。
世代が違うならば、自分の時代のことを誰か書いてくれないかなと思うでしょう。
そんなうらやましさを味わえる作品です。

この世界の片隅に

2009-08-16 07:16:15 | 本、映像・音楽
この世界の片隅に・下   この世界の片隅に こうの史代著

昭和18年から昭和21年1月。
広島で生まれ、呉で暮らすすずさんと家族のものがたり。上中下の三冊となっています。

作者は夕凪の街 桜の国で原爆投下後の広島を描いたが、
ここでは舞台を近隣の軍港 呉としてタイトルに「20年4月」と云うように時間を追っていきます。
ゆっくり進みながら広島に落された原爆、その後が家族のものがたりとして
戦争がひたひたと生活の中に入ってくる日々。
悲惨さだけではなくこのものがたりが終わるのが救い。

シー・ラブズ・ユー 東京バンドワゴン

2009-08-07 22:12:55 | 本、映像・音楽
   シー・ラブズ・ユー 東京バンドワゴン 小路幸也 著

下町で老舗の古本屋「東京バンドワゴン」とカフェをやっている堀田家。
そこには親子四代9人が暮らす。そこで起こる物語。
冬・百科事典は赤ちゃんと共に
春・恋の沙汰も神頼み
夏・幽霊の正体見たり夏休み
秋・SHE LOVES YOU

この副題で思わず手にとったのがこの本。
夏から読み出して、秋。短編集の楽しみ方でもいけます。
途中から読んでも沢山の登場人物が出てくるにもかかわらず、物語の世界に入り込めます。
そして、噛み合ない会話の食卓風景がまた楽しい。
そうこの食卓風景、昔テレビでやっていた「時間ですよ」を現代に再設定。そんな世界。
悪人が出てこない物語。暗い気持ちになりがちなときにはこんな話が好いですね。
これ続編なんだそうです。一作目が「東京バンドワゴン」。

夜の朝顔

2009-07-22 21:41:03 | 本、映像・音楽
夜の朝顔 豊島ミホ 著

海も近くて、山の上にはジャガイモ畑がある。
そんなところで暮らす「センリ」の小学一年から六年までのできごとを綴った七編。
一年生、「夏休み」大好きなお兄ちゃんがお盆にやってくる。
二年生、眠れない夜。はじめて見る真夜中の世界。
三年生、巣から落ちた雛を見る。
四年生、隣町の歯医者に行く。そこで「アザミ」に会う。
五年生、「バレンタイン」にちょっと悩む。
六年生、「アトムの角」の直し方を知る。

小学生の頃って、こんな感じ。
自分の知る範囲は狭いけれど、
その中に沢山の世界があって不安、傷み、ほのかな思いが詰まっていた。

ベーコン

2009-07-06 21:01:17 | 本、映像・音楽
ベーコン 井上荒野 著

九つの短編からなる一冊。
食べ物の名を表題として、それにまつわる語り手の記憶が綴られ、
そして日常の風景の中に艶かしさと「嘘」が埋め込まれています。
出てくる人たちの自分に対する「・・・のふりをする」「嘘」。

表題の「ベーコン」はこの短編集の最後にでてくるお話。
母と暮らしていた人は山に暮らし、そこに放し飼いで養豚をしている。
娘である私はその人にケーキをもって会いにいく。ふたつの報せをかかえ。
私の恋人はおいしいものを食べることに熱心で彼の眼鏡にかなう店に連れていってくれる。
ある日連れていってくれた店で厚切りでステーキのように焼いてある素晴らしいベーコンが出された。
そのベーコンはこの地方産の豚のもの。そう母と暮らしていたあの人の。
思わず「私、その人を知っているは」と言ってしまう。

さて、このように書いてしまうとどのような話を想像されるでしょうか。
この短編集、すべての話のが途中ではどのようになるかわかりません。
最後にまとまるのですが、でも、もしそのあとに数行加えられればその意味が変わるでしょう。
この短編集はそのように書かれ、不確定な関係性をもった登場人物たちが描き出されています。

ひかりをすくう

2009-06-29 20:23:31 | 本、映像・音楽
ひかりをすくう 橋本紡 著

仕事が楽しい。指名で仕事の依頼も来るグラフィックデザイナー 智子。
でも、突然PD(panic disorder)の発作を起こしてしまった。
・・・仕事を辞め、都心から離れたや家賃の安いところでしばらく暮らそうとパートナーの哲ちゃん引っ越す。
そこで週に二回英語を習いにくる小澤さんと小澤さんが拾ってきた猫「マメ」と暮らすことに。

日常の風景が綴られ、やさしく少しずつ積み重ねられていく日々。
この物語に結末はありません。
ここからはじまる物語なのです。
智子、哲ちゃん、小澤さん そしてマメ。