VOL2 わ・た・し流

おとぼけな私ですが 好きな本のことや 日常のなにげない事等 また 日々感じたことも書いていきます。

桃花徒然 その60

2022-10-24 20:19:56 | 永遠の桃花

(桃花徒然 その59からの続きです)

「ねえ、劫を作るってどういう事かわかる?私は

劫を作る専門家ではないのに・・運が悪いことに

報恩の為に人間界に来ただけのはずが・・・違う人の

運を変える為に来ていた姑姑と遭遇したせいで、

それに巻き込まれてしまったの」「司命ったら

皇帝の情劫を作る相手がいなくなったからって

言って、その場に居合わせた私に強引に

その役を振ったの。私の辛さをわかってもらえる

かしら?司命からもらった台本に書かれた方法を

全て試したわ。なのに、皇帝は私への愛を変えよう

とはしなかった・・もうどうしようもなくなって

ついには、皇帝の紀妃あてに恋文を書いたの」

「これなら 自害するよう首を吊る白布とか毒酒を

賜るとばかり思っていたのに、貴方に下賜される

だなんて。何を考えているんだか・・・

貴方を巻き込めないし  かといって

立ち去るわけにもいかない・・・」

 

靑テイはこの晩  鳳九に一目惚れしてしまった。

もとより  聞き及んでいた。神仙には人間と

違って  七つの情も六つの欲もない、と。

靑テイは鳳九への情を断とうとあらゆる努力を

する羽目になってしまった。

彼女に負担をかけたくはなかったので、この

情愛は死ぬまで心に秘めて  墓場に埋める

つもりだった。

しかし、皇帝が暗殺の危機に陥った時、

思いもかけない事が起きたのだった。

鳳九が手首に常に巻いていた鈴が  実は

皇帝に命の危機が迫った時に音を出して

知らせる「宝器」だったのだ。

靑テイの目の前で、 刺される皇帝の前に

飛び出して行った鳳九。「東華!」という悲痛な

叫びをあげて・・・

靑テイは何の迷いもなく  その鳳九の前に飛び出して

刀を受けた。刃先が自分を突き抜ければ  鳳九に

届いてしまう!

とっさに手で 刀を掴んで  鳳九をかばったのだった。

 

鳳九の腕の中で  ひん死の靑テイは言った。

「神仙は無情だと 人は言う・・・でも、本当は

神仙も情を持つことが出来る・・・そうでしょう?

」鳳九が泣きながら頷く。「今生はもはや  縁は

無い・・・貴女と・・・来世の約束を・・交す

事は出来ないか?」

鳳九は涙を流しながら言う

「靑テイ、貴方に命の借りが出来た。きっと

返すわ。」「靑テイ、貴方のために 三世の喪に

伏すわ。」「靑テイ  安らかに・・・」

 

彼は彼女を深く愛した。彼女のために命を落とした。

しかし、この世には、命を捨てたからといって

愛情を勝ち取れるという理は無い。

彼女は泣いて  返す  と言ったが彼に情を渡したくは

ないと  彼はわかっている。何を返すのか・・・

 

二百年前  幽冥司の前で目覚めた靑テイは

鳳九が彼の為に  仙体を作り、自分の修為の

半分を使って、再び輪廻に戻る事の無い魂を

作った事を知る。

そして、謝孤洲からは 東華帝君に対する

鳳九の深い情愛を聞かされ、 鳳九への情を断つよう

説得されるのだった。


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