原作では最初から 白浅は顔に包帯を巻いている。
阿離に抱きつかれて身動きできず、
素素と呼ばれても自分の事とは思ってもみなかった。
団子の父だ。
やっと身動きが取れるようになって 目の前の人物を見た。
微笑んで言う 「仙友の目は少し良くないようね。
人違いだと思うわ」・・・その人の顔・・・
師父の墨淵??いや、違う。
しばし墨淵の思い出に意識が飛び ボーっとしていると
いきなり団子の父が 手を振って包帯を取ってしまった!
そして、眉間に手を触れた。
反射的に目をつぶり、長らく口にもしなかった言葉が出る。
「無礼者!」
・・・『彼の父君は長らく動きがない。さらに長い間の後、
ようやく私に包帯を包みなおしてから、言った。
「そうですね、私が人違いしたようだ。
彼女は貴女のように怒ることはないし、貴女のような
美し過ぎる容姿でもない。先ほどは失礼した。」
・・・
白浅は 彼の衣服で 彼がおそらく夜華だと気づく。
見目麗しい若者がかわいそうに 自分のような婆ちゃんと
結婚するはめになるなんて公平じゃないと憂えるのだった。
今回のような不敬を働かれても
自分のほうが申し訳ない気持ちで、笑ってごまかす。
「仙友のお褒め ありがとうございます」
夜華は底なしに深い冷淡な瞳で白浅を見ると
足早に去って行った。
夜華が包帯を取って眉間にさわり 長いこと考えていたのは
と ここからが私の妄想
昨夜 満月の美しい桃林で
思い出にひたって散策していた夜華。
三百年が過ぎてもなお素素を忘れることができない。
明日の東海での祝宴には 許婚の白浅が来るというが
とても結婚話しを進める気にはならない。
でもそれは決め事として、
いつかは彼女を娶らねばならないと わかっている。
いつしか 東屋に差しかかったちょうどその時、
屋根から人が転げ落ちるのを見た。
咄嗟に術をかけてその人を受けとめる。
美しい月の光に照らされ その人は衣の前をはだけた姿で
抱きつくと あろうことか
自分のズボンのひもに手をかけ、解こうとする。
夜華は驚いて身体を離し、その仙女の顔を見た。
強い酒の匂いがする。すると 瞬間、
仙女が手を振った途端 意識が朦朧となった。
「素・・素?」
素素、素素・・・貴女なの???
夢中で抱きしめ 言いようのない歓喜で胸が震えた。
・・・しかし、夜華は何かの術にかかった、と瞬時に気づく。
あまりにも素素を思うがゆえに
このような幻惑に惑わされるとは。
仙女は幸いにも酔いが回ったのか 眠ってしまっていた。
夜華は迷魂術をとくと、東屋に仙女を寝かせ
桃林をあとにした。
月光に照らされた美しい桃林で、幻惑にあったのだ。
翌日の東海で、いなくなった阿離を探して
裏庭に行くと
青い衣服に顔には包帯を巻いた姿の女性に
阿離が抱きついて 母上と泣きながら叫んでいる。
一瞬 心臓が止まり、早鐘のように波うち、駆け寄ると
素素と呼んで 包帯を外して 眉間のほくろを確かめる。
「無礼者!」と厳しい一喝を受けて 我に返った。
しげしげとみるが、強い神気を放ち、顔立ちはそっくりだが
ほくろもなく、神々しい美しさで 素素ではないと確信した。
夕べのおぼろな記憶が甦り あの術をかけた仙女に違いない。
丁寧に詫び、急ぎその場を去った。
しかし、仙女が後をついてくる気配を感じて
何か気にかかり 戻ると・・・
女性は二叔父 の妻と話しているところだった。
話しの筋から、この女性は、青丘の白浅に違いないが
その仕草は 懐かしい素素のものだった・・・
夜華の心に衝撃が走った。
その後 話しの展開で 朦朧と記憶に残る桃林の女仙が
幻惑ではなく 酔って落ちて来た白浅だと知る。
夜華は言いようのない喜びに包まれた。
宴会の席で酒をぐいぐい飲む白浅に夜華は言う
「お酒が強いようですね。また悪酔いしないよう、
飲みすぎに注意する事だね。」
白浅はその言葉に納得が行かなかった。しかし、どうせ
手の内は見せてしまった。恨むべきは自分の運の悪さ、
一切れの婚約によって 彼と私が一緒にいる事が
無理やり決められてしまった。・・・というのが
白浅の思ったこと・・・
夜華の思いは・・これで誰はばかる事なく娶る事ができる💖
二度と離さない・・・