昭和の恋物語り

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長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空・第二部~ (六十四) 三

2013-08-03 14:27:21 | 小説
(三)

「茂作さん、ほんにおめでたいことで。
日の本一のおむこさんをお迎えなすった。

ご本家さんにも、鼻が高かろうて。
色々ありなすったものな。の、の、の。」

「婿さん、ありがとうございますの。
こんなに豪勢な祝宴に呼んでいただけて。
それに、子どもらにも気を使うてもろうて。」

「ほんに、ほんに。
見たこともない菓子をもらって、大喜びしとります。
ただ娘たちが、小夜子さぁに続けとばかりに、の。
『あたしも行きたい』なんちゅうて、困らせますわ。」

新郎である武蔵の下に大勢の村人が集まってきた。
皆が皆、一応に武蔵を褒めそやす。

武蔵は、娘婿である。
本来ならば喜ぶべなのだが、茂作の機嫌はすこぶる悪い。

「この男は実に情けない。
軍隊時代、厠の掃除ばかりさせられていての。

皆に馬鹿にされていたのよ。
大正生まれの、軟弱男よ。」


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