昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

きのうの出来事 時間(その九)

2023-12-21 08:00:33 | よもやま話

でもねえ、K医師は深刻な顔をしてましたねえ。
「万が一感染症のばあいには、ペースメーカーを取り出さなければなりません。それ自体は簡単です。問題は、リード線です。
心臓(中だっけ? 外側だったっけ? どう言われたか忘れちゃいました)と一心同体化していると思われます。
なにせ、12,3年経過していますからねえ。うまく取り出せるかどうか……」

わたしが、「はあ、はあ、そうでしょうねえ」と、あまりにも軽い反応をしめすものですから、肩透かしをくらった感じ、なんでしょうね。
拍子ぬけ、といった感じです。まあ、鳩が豆鉄砲……とまではいきませんが。
「この間の、レントゲン室前でのようなことが起きると、心臓は動いてくれません。
いや、もっと軽いものでも、これまで経験された体感できないくらいのものでも……」

(すみませんなあ、先生。まったく実感がないんですよ)
「前回もあったんですけど、そのときは蜘蛛の巣みたいに、パーッと放射状に広がってたんです。でも、なおりましたし」
(まんがいちそうなっても、しかたないですよ。そのときはそのときです。なーんて、達観したような感じで、恐怖心がわかないんです)
「まあ、1週間後にまた来てください。いま出てる検査結果では異常はないみたいですが。残りの結果は来週ということで」

ネガティブな内容ばかりの説明でしてね、そういえば以前にERから回されて診てもらったときもそうでした。
「現状は問題ないけれども、すこしでもおかしい、いつもと違う、そんな風に思われたら救急車を呼んでください」でしたわ。
そうそう、執刀医のY医師も途中で顔を出されました。
「問題はなかったんですが……」と、責任はないぞといった感じでした。

結論は、こうしてご報告しているのですから、「問題なし」でした。感染症はなかったということです。
「そういう皮膚なんですかなあ、前回もでしたから。まあ、傷口にはしばらくの間さわらぬように。おふろなんかでも、ゴシゴシはやめてくださいよ」で、終わりでした。
人騒がせな肌ですわ、ほんと。怖いのは、オオカミ少年肌ではないことを祈るだけです。

ずいぶんと話がそれました、「時間」のことでしたね。
時間の概念がうすくなってるんですよ。昼夜逆転とか、そういった類いの感覚ではないんですけど。
特段に、トラブルになるようなことはありません。社会的時間というものは、しっかりと自覚していますので。
自然な感じで、ふしぎな時間の感覚を持ちはじめた、感じはじめたということなんです。

死後の世界とは? ダンテの「神曲」を読んでみたり、ゲーテの「ファウスト」を取り寄せてみたりしています。
そういえば、「てん・てん」という作品中に、「ファウスト」から拝借していたのかな、台詞を。
「霊の世界は閉ざされてはいない。汝の官能が塞がり、汝の胸が死んでいるのだ」とか。
いまおもうこと―― 死後の世界も、あんがいのところ、こんな「時間」という概念が失われた世界かもしれない。 



最新の画像もっと見る

コメントを投稿