昭和の恋物語り

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長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空・第二部~ (六十八) 六)別れの朝

2013-10-23 18:02:22 | 小説
(六)

翌朝、いよいよ小夜子が茂作との別れの朝。
いそいそと荷物を詰めている小夜子の後姿を、恨めしげに見る茂作だ。

「お父さん、夕べは飲みすぎてない? 
お銚子は一本までにしてね。

夕食をね、お茂さんにお願いしたから。
もし本家でご馳走になる時は、早く連絡してあげてよ。

それから、いくら本家からの頼みだからって、無理しちゃだめよ。
走り回ってるみたいだけど、あまり熱を入れるのはやめてね。

村長さんを支持している人たちとの諍いなんかに、巻き込まれないようにしてよ。
本当を言うと、武蔵は良く思ってないの。

身内に政治家がいるとね、大変なんだって。
手が後ろに回るようなことに巻き込まれないかって、心配してたわ。

あたしも、なんだか嫌な予感がするし。
もう本家の言いなりにはならないでね。」

身支度を終えた小夜子が、囲炉裏端で背を丸けてお茶をすする茂作のそばに来た。


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