境内の入りぐちの大きな木のしたで、街灯の光からかくれるようにしながら公園をのぞきこんだ。
ずらりと並んでいた夜店だったが、テントと材木に分けられてきちんと整理されていた。
なにも残っていない、空間だけのところもあった。
足下を見てみると食べものの残りかすやら発泡スチロールの皿があり、そして割りばしとともに紙コップが散乱していた。
ときおり吹く風にカサコソと音をたてる。
あわてて人がいるのかと目をこらすが、人影はなかった。
そういえば祭りが終わったあとに、小銭ひろいをする輩がいるといると聞いたことがある。
先日の花火大会が終わったあとに、懐中電灯があちこちで光っている光景を思いだした。
めざす小屋は、大通りに面したかどにある。
向かい側は商店がたちならぶところで、人家はなかった。
これなら誰かに見られることもなく連れだすとができるぞと、友人はよろこんだ。
「あの人は、どこだ? どこで寝てるんだ」
「どこだろうね、ほんとに」
小屋のまわりを音をたてぬようにと歩きながら、小声で声をかけあった。
ふたり寄りそいながら、なん度も「どこだ」「どこだろうね」と声をかけあい続けた。
怖かったのだ。街灯は遠くにある。ここまでその灯りは届いてはくれない。
境内に張り巡らされていた電灯は、すべて消えている。
月明かりだけが頼りだった。けれどもその月にしても、ときおり雲間にかくれてしまう。
ややもすればくじけそうになる、こころの移ろいそのものの月だった。
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