失礼しました、お話をつづけましょう。
しっかりと娘を抱きしめました。華奢なからだを両の手でしっかりと、抱きしめてやりました。
そしてわたくしのこころに、またしても起きてはならないものがムクムクと頭をもたげてまいりました。
思わず、手に力が入ります。
娘も、負けじと力が入ります。
もうだめでございました。
止めることは出来ませなんだ。
恐ろしいことでございます。
そのおりのわたくし心境ときたら、おのれの都合のいいように考えていたのでございます。
”娘は知っているのだ、血のつながりのないことを。
そしてこの俺を愛しているのだ。
父親としてではなく、男として欲しているのだ”などと。
娘ですか? 人形でございました。
そのおりの娘の心情は、考えたくもありません。
もっともわたくしとしては、考える余裕もございませんでしたがな。
うす暗い洞窟のなかに閉じこめられたような感覚におそわれていました。
娘とふたりきりでございます。
赤い、どす赤い(ということばがあるかどうかはわかりませんが)液体がわたくしめをおそってまいります。
じわじわとではなく、どっとわたくしめにおそってくるのでございます。
どれほどの時間が経ちましたか、
と、驚いたことに、娘だとばかりに思っていたその女が、妻に変わっておりました。
いや、そうではなく、妻に見えたのでございます。
あの、わたくしの元に嫁いでくれたころの……。
わたくしが惚れにほれぬいた女に、見えたのでございます。
わたくしは叫びます、こころのなかで絶叫します。
”この娘は、この女は、おれのものだ。だれにも、わたさーん!”
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