昭和の恋物語り

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長編恋愛小説 ~ふたまわり・第二部~(二十七)の一と二

2012-01-06 22:57:31 | 小説


小夜子は、武蔵に対して良い感じを持たなかった。
値踏みをするように小夜子を見つめる武蔵の目に、何か卑野なものを感じていた。
細面で端正な顔付きをしているが、人を小馬鹿にするような目つきが嫌悪感を抱かせた。
「小夜子ちゃん、かぁ。
歳は、幾つかな?
英会話の勉強をしてるんだって?
どう、少しは話せるようになったの?」

矢継ぎ早の質問に対し、小夜子は愛想笑いをかかすことなく答えた。
「年齢は、十七です。
会話が通じるかどうかは、外人さんとの会話がないので、
正直のところは分かりません。
一応、学校での会話は成り立っていますけれど。
早口で会話されると、未だ聞き取れないことがあります。」
うんうんと頷きながらも、武蔵の視線は小夜子の全身を、舐めるように見ていた。




“なんて、失礼なの!
目線を合わせての会話が、常識でしょうに!”
次第に、小夜子の表情に険が現れた。
「こりゃ、申し訳ない。
初対面の女性に対する態度じゃなかったな。
こんなキャバレーに、君みたいな若い女性がいることが、珍しくてね。
ごめん、ごめん。
ま、ここにお座んなさい。
支配人には、私から言っておくから。」

そう言いながら、武蔵が五平に目配せをした。
五平は梅子と共に、席を立った。
「でも・・」
顔を曇らせながら、小夜子は席に着くことを躊躇った。
武蔵との接触が、この先の己に災いを及ぼさせるように感じた。
殆ど直感のようなもので、漠然とした不安感を感じた。

「いいから、いいから。
私と付き合って、損はない。
別に、取って喰おうと言う訳じゃないんだから。」
武蔵は席を立って、小夜子を無理やりボックスの中ほどに座らせた。


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