昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

ボク、みつけたよ! (三十六)

2022-01-30 08:00:22 | 物語り

どうしたと思います? 
そうなんです、そのまま脱兎のごとくに、誰にも何も言わず、教室を飛び出したわけです。
そしてバスと汽車とを乗り継いで、無事に持ってきました。
バス停からは、猛ダッシュです。5分と違わないと思うのです。
歩いて学校に戻ればよさそうなものなのに、猛ダッシュしたんです。
ここらあたりは、真面目に超が付くゆえんでしょうか。
(当時のわたしですから。今は、真面目という意味が少し変わってきている気がしますね)。
汗だくです。確か、夏休み明けの二学期のことだったと思いますが、残暑が厳しい時期ですからね。
さあ、ここからです。教室の扉を引いた途端、その場に倒れ込んだのです。
扉のレールに引っかかったのか、ひざが笑ってくずれ落ちたのか、それとも恥ずかしさから自ら倒れたのか……。

「家から走ってきたらしいぞ」。そんな声が飛び交っています。
いえいえ、わたしはそんなこと、ひとことも言ってませんて。
先生が「保健室に連れて行ってやれ」と言ったような、言わなかったような。
「馬鹿正直な奴だ」と、笑っていたようないなかったような。
クラスメートの何人かに胴上げ状態に抱えられて、保健室へ直行です。
その時どうしてたか、ですか?
だだ目をつむって、失神(気絶?)のふりをしてました、と思います。
ほんと、だめですねえ。ひと言「大丈夫だから」って言えばいいものを。

 最後に、ひとことを。
当時は「いじめ」という言葉はありませんでしたが、「よそ者に対する視線」といったものはありました。
当人たちは意識していなかったかもしれませんが、少なくともわたしはそう感じていました。
話しかけてくれるとき、特に女子生徒なのですが。ひと呼吸おいてから言葉を発してくるのです。
それもていねいな言葉づかいでして、他の同級生に対するようなぞんざいな言葉づかいは、最後までありませんでした。

重圧ですよ、そりゃ。常に見られているという観がありましたからね。
それをはねのけるためにも、「優等生でなければ…」と言う思いが強かったと思います。
そしてそして、学業優秀だった兄の存在が大きかったのです。



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