昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

愛・地獄変 [父娘の哀情物語り] (三十五)

2010-12-15 22:40:31 | 小説
申し訳ありません!
申し訳ありません!!
私は、
犬畜生にも劣る人間でございます。
殺してください、
私をこの場で殺してください。
この大罪人の、
人を!

そうなんでございます、
男共は、
全て、
私の顔を持っていたのでございます。
・・・、
私の顔を・・・
持っていたのでございます。

蝿が飛んでおります、
銀蝿でございます。
あの野糞にたかる、
汚わらしい銀蝿でございます。

ぷーんぷーんと音も五月蝿く、
飛び交っております。
死人にも似た私めの周りを、
飛び交っております。
手で払いのけるのでございますが、
中々に立ち去ろうと致しません。

立ち去らない?
虫けらに
立ち去らないなどという言葉を
使う私、
ふふふ、
気が狂れたのかもしれませんな。

実は、
実は・・、
その銀蝿・・。
どうぞ耳を塞いでくださいまし、
後生でございますから。
おぞましいことに・・、
この私めの顔を持っているのでございます。

何と、
何と言うことか、
この私が、
銀蝿などと!


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