≪味のある顔と言われるのは、男にとって名誉なことではないでしょうか≫
陽水「“今の若者”って言葉がでてくるのは僕らもオジンになった証拠かな。(笑)」
沢田「34歳という年齢、こりゃしょうがないね。30過ぎて、“いやー、まだまだマッチやトシちゃんには負けませんよ”って言ったことがあるけれど、結局そう言ってるとしんどいのね(笑)。“だって34なんだもん”って言ってしまえば楽なもの。」
陽水「僕が年を意識するのは、2日くらい徹夜でトラックダウンやるでしょう。昔は平気だったのに、今は回復に二日や三日はかかる(笑)。沢田さんは最近何か気になることある?」
沢田「僕は体力以上に精神的な面ね。つまり仕事や業界のしくみが分かってくると、物分りがよくなって変にガマンしちゃうこと。あんまりわがままじゃなくなるのが、最近すごくいやなのね。自分で自分のことを“まあ、ジュリーはよくやっとる”なんて慰めること自体、年齢を意識してることかな。」
陽水「若さの欠如を補うのが年季(キャリア)だと、最近ちょっと分かってきた。人の顔のよさが分かってきたといえるかな。その意味でまたテレビですけど(笑)、この間沢田研二が女の子のファンに追いかけられるシーンを見たんだけど、そのときの顔が、やっぱり昨日今日追いかけられてる顔じゃない(笑)。磨きぬかれた、十何年間練磨され続けた顔が、僕にはとてもよく、新鮮に見えた。」
沢田「蜷川幸雄さんにも言われたよ、磨き続けてきた顔をしてるって。本人は、どんな顔だか分かんないけど(笑)。それと長谷川和彦さんにも言われたね、“実に冷たい顔しておるな。もう少しうれしそうな顔をできないものか”ってね。」
陽水「演出家だからね、やっぱり鋭いな、そのへんは。でも顔を話題にされたってことは喜ぶべきことですよ。顔相占いじゃないけど、味のある顔と言われるのは、男として名誉なんだと思うね。」
沢田「せっかくそう言ってくださるんだから(笑)。今年はちょっとマンネリ打破でいかないとーー。」
陽水「休むのがいちばんマンネリ打破する方法だよ。少し何もしなければ、人間ってすぐに何かやってみたくなるんだって。」
沢田「僕の場合は考えるよりパッと動かないと気がすまないみたいにやってきたでしょう。だから“休む?えーっ?大丈夫かね”って感じで、休暇をとるという勇気がまだないんだよね。」
陽水「僕らに共通していえるのは、性格的にまるで不器用ということね。はっきりいって趣味がない。」
沢田「本も読むし映画も見るけど、履歴書の趣味の欄に堂々と書くほどじゃない。(笑)仕事が終わるとボーっとして・・・。」
陽水「そうそう。でも不器用の分だけどっかほかの部分が伸びてくるということはある。例えば気軽に人と話せない人は、そういう気持ちをどこかにぶつけるかというと、手紙にぶつけたりして、そういう形で妙なところが伸びていく。周囲から見れば、それはすごく変わった形に見えるわけだけど、どのみちその変形を楽しんでいただくってのが僕らの仕事だと思うわけです。(笑)」
沢田「不器用なため、ひとつのことに熱中しちゃうと、もうほかのことが目に入らないってこと、確かにある。いや僕なんか、今でもそれが続いている、最近体力的に疲れると、ふと今までの道を振り返ることがあるけれど、歌しかなかったという悔やみと、歌があって幸福だったという気持ちが半分ずつ沸いてくるよ。」
陽水「その軌跡は顔に出てくると思うな、これから。顔のシワは若さの欠如ではなく、貴重な個人史である、というところで本日は手を打ちましょうか。(笑)」
- 完 -
陽水「“今の若者”って言葉がでてくるのは僕らもオジンになった証拠かな。(笑)」
沢田「34歳という年齢、こりゃしょうがないね。30過ぎて、“いやー、まだまだマッチやトシちゃんには負けませんよ”って言ったことがあるけれど、結局そう言ってるとしんどいのね(笑)。“だって34なんだもん”って言ってしまえば楽なもの。」
陽水「僕が年を意識するのは、2日くらい徹夜でトラックダウンやるでしょう。昔は平気だったのに、今は回復に二日や三日はかかる(笑)。沢田さんは最近何か気になることある?」
沢田「僕は体力以上に精神的な面ね。つまり仕事や業界のしくみが分かってくると、物分りがよくなって変にガマンしちゃうこと。あんまりわがままじゃなくなるのが、最近すごくいやなのね。自分で自分のことを“まあ、ジュリーはよくやっとる”なんて慰めること自体、年齢を意識してることかな。」
陽水「若さの欠如を補うのが年季(キャリア)だと、最近ちょっと分かってきた。人の顔のよさが分かってきたといえるかな。その意味でまたテレビですけど(笑)、この間沢田研二が女の子のファンに追いかけられるシーンを見たんだけど、そのときの顔が、やっぱり昨日今日追いかけられてる顔じゃない(笑)。磨きぬかれた、十何年間練磨され続けた顔が、僕にはとてもよく、新鮮に見えた。」
沢田「蜷川幸雄さんにも言われたよ、磨き続けてきた顔をしてるって。本人は、どんな顔だか分かんないけど(笑)。それと長谷川和彦さんにも言われたね、“実に冷たい顔しておるな。もう少しうれしそうな顔をできないものか”ってね。」
陽水「演出家だからね、やっぱり鋭いな、そのへんは。でも顔を話題にされたってことは喜ぶべきことですよ。顔相占いじゃないけど、味のある顔と言われるのは、男として名誉なんだと思うね。」
沢田「せっかくそう言ってくださるんだから(笑)。今年はちょっとマンネリ打破でいかないとーー。」
陽水「休むのがいちばんマンネリ打破する方法だよ。少し何もしなければ、人間ってすぐに何かやってみたくなるんだって。」
沢田「僕の場合は考えるよりパッと動かないと気がすまないみたいにやってきたでしょう。だから“休む?えーっ?大丈夫かね”って感じで、休暇をとるという勇気がまだないんだよね。」
陽水「僕らに共通していえるのは、性格的にまるで不器用ということね。はっきりいって趣味がない。」
沢田「本も読むし映画も見るけど、履歴書の趣味の欄に堂々と書くほどじゃない。(笑)仕事が終わるとボーっとして・・・。」
陽水「そうそう。でも不器用の分だけどっかほかの部分が伸びてくるということはある。例えば気軽に人と話せない人は、そういう気持ちをどこかにぶつけるかというと、手紙にぶつけたりして、そういう形で妙なところが伸びていく。周囲から見れば、それはすごく変わった形に見えるわけだけど、どのみちその変形を楽しんでいただくってのが僕らの仕事だと思うわけです。(笑)」
沢田「不器用なため、ひとつのことに熱中しちゃうと、もうほかのことが目に入らないってこと、確かにある。いや僕なんか、今でもそれが続いている、最近体力的に疲れると、ふと今までの道を振り返ることがあるけれど、歌しかなかったという悔やみと、歌があって幸福だったという気持ちが半分ずつ沸いてくるよ。」
陽水「その軌跡は顔に出てくると思うな、これから。顔のシワは若さの欠如ではなく、貴重な個人史である、というところで本日は手を打ちましょうか。(笑)」
- 完 -