ナイフと自己防衛

昨日の朝のこと。中学生の娘が、友達と花火大会を見に行くと言う。
「子どもだけでいくの？大丈夫？」
何人で行くのかとか、誰と行くのかとか、何時に帰ってくるのかとか、心配になってあれこれ聞いた。娘は、ちょっと口をとがらせて、めんどくさそうな顔をしながら出かける準備をしている。

「夜だよ。暗いんだよ。大丈夫なの？」
「大丈夫だよ！」
忙しそうに歯を磨く娘に向かって、平気かな、心配だな、などとブツブツいい続ける私。すると娘が言った。
「ナイフもってくから」

・・・。
「自己防衛。いいんだよ、ママ。自分を守るためには。」
ぽかんとする私を見てそう言いながらニコリと笑い、娘は出かけてしまった。

いいのかな？考えた。
私も、忙しく出かける準備をしながら。
今日は娘が「花火大会」に出かけるまでに帰宅できないかもしれない。「行くな」と言っても彼女のことだ、行くだろう。本当に「自己防衛」のために、ナイフを持っていくのだろうか？

急いで、朝ごはんの片づけをした。
急いで、化粧をした。
化粧をしながら、考える。

「身を守る手段って？」

「これ」という答えが出なかったけれど、その辺に無造作に置かれていた印刷に失敗した書類を拾い上げて、裏に書く。

・・・

おかえり！花火大会、楽しんできてね。だけど、気をつけて。
ママは、考えた。
で、やっぱりナイフは持っていかない方がいいと思います。
ナイフで本当に身を守れるかな？
「身を守る」ためにできることが他にあるんじゃないかな？

自分で、考えてみて。

ヒント？
友達と一緒に行動する。ひとりにならない。
人気（ひとけ、人気じゃないよ！）のないところには行かない。
困ったら、近くの人に助けを求める。
9時には帰ってくる。
変な人に話しかけられるような行動をしない。　など

自分を守るのは自分です。よーく考えて行動すること。
では、気をつけて行ってらっしゃい。

・・・

夕方、自宅の近くで18時半から研修の仕事が入っていた私はいつもより早めに帰宅した。娘は、ソファの上にひざを抱えるようにして丸まって座り、『桜蘭高校ホスト部』なんて本を読んでいた。そういえば昨日、「あれ、そのマンガ何度も読んでない？」と聞いた私に、「ママ、これ、マンガじゃないよ。小説。ほら。」と何やら不満げに答えた、その本だ。

テーブルの上には、私が書いたメモが裏返しになって置いてあった。
「で、ナイフ持ってくの？」
泡がふわっとして気持ちのいい除菌石鹸で手を洗いながら私は娘に声をかけた。
「もってかない。」

本を見ながら答えた娘は、ちらりと私のほうを見てちょっと恥ずかしそうに笑った。「ふうん」私は答えた。この一日、彼女は何を考えたのだろうか。

【今日の名言】
『人育ては、声をかけることの繰り返し。」
　とん

【写真】つまみ。
この間の日曜日。洗濯やら掃除やらをして、疲れた私は昼ビール。餃子に枝豆にキムチに。すっかり「おやじ」だ。ビール一杯（？）飲んで、昼寝をした。あ～極楽、極楽！

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