Tomotubby’s Travel Blog

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吉岡実「タコ」から

2009-12-10 | Japan 日常生活の冒険
千代取り岩」の伝説を読んだとき頭を過ぎったのは、前にも紹介したことのある吉岡実の「タコ」という詩である。「タコ」は詩集「サフラン摘み」所載の最初から二番目の詩篇で、前に載せたのはその第三連部分だったが、今回はおよそ詩らしからぬ第二連部分である。なお本詩集の最初の詩が表題作の「サフラン摘み」で、こちらはクレタ島クノッソス宮殿に絡んで引用したことがある。なかなか因縁深い詩集だが、私にとっては、それだけ愛読した一冊ということなのだろう。

タコの生殖はとても呪われたフォームを見せる それは
濡れて裂かれた傘のような肉の散乱にちかい タコのオ
スの七つの足は水を抱きこむ そして残されたごく先細
りの一つの足がくだの器官の役目をする ちょっと見る
と 靴の紐のようにみすぼらしく タコのメスの小さな
孔を探し求めて入りこむ これが交接といえるだろうか
水は起伏してながれる 透明な世界では悦びもなく射
精は終る すぐそばにタコのメスのみひらかれた眼があ
る それには汎神論的な悪意が感じられる 受胎せるタ
コのメスは海の底の石の巣へゆっくり帰って行く 二十
万粒の透明な卵を生むために それから絶食状態のまま
ブドウの房のようにたれさがった袋の卵群へ 必死に
泡を吹きつづける それは呼吸に必要な酸素を送るため
だ ゆらぐ海草のかげで タコの母親はただ一度の排卵
で腐る肉質へと替る

私には「千代取り岩」の伝説に出てくる好色なタコは、八本ある足(正確には「腕」になるが)のうち「交接腕」と称される生殖を司る一本の足を温存して、残りの七本の足を千代に鎌で切らせたのではないか?と思えた。オスのタコが足に生殖器を持つことは、昔から漁師たちには知られていたようで、タコに与えられた「好色性」は、このようなタコの生態から連想されたものではなかろうか? そのような連想が妄想となり、もう一歩、歌麿の「河童と海女」の河童をタコに置換することで有名な北斎の「蛸と海女」が生まれたのではなかろうか?


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