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Tomotubby’s Travel Blog

Tomotubby と Pet の奇妙な旅 Blog。
でもホントに旅 Blog なんだろうか?

ダイ・シージエのこと (その印象)

2011-01-02 | Europe ところどころ
2010年11月11日、私は風邪を引いてしまい頭が朦朧としていたのですが、来日中のダイ・シージエと彼のフランス語の作品を今のところ全て紹介している翻訳者の新島進氏とのトークショーを聴くため、タクシーで日仏学院へ向かいました。私にとっては単に耳で二人の対談を聴くだけではなく、ダイ・シージエという作家であり映画監督の在仏中国人がいったいどのような人物なのか、ユーモア溢れる作品を通して空想してきたイメージと合致しているのか、目で視定めることが大きな目的なのでした。

日仏学院には部屋ごとに同型のドアがあり、ドアの向こうがどのようになっているのか、内部で何が行われているのかは、外からは伺い知ることはできず、私はトイレの場所が分からず、間違って授業中の部屋のドアを開けてしまいました。こういう建物の構造は、昨年初に美術展で訪れた旧フランス大使館とも似ています。そんなところにも文化の香りを感じてしまうのはフランスならでは、です。

作家は時間に少し遅れて案内者に連れられて登壇しました。見るからに東洋人の特徴を備え、日仏学院の雰囲気とは似合わないおじさんで、小柄でどこかおどおどしているようにも見えました。ただ眼鏡の向こうの二つの目が(近眼のせいなのかもしれませんが)輝いていて、この男性の好奇心の分量は一般人に比べて過剰に多いのだろうと思えるのでした。そして彼こそがいかにも、あのような特別な、お互いに似ても似つかない個性的な作品群を産み出した人物に違いないのだと話を聴く前から納得したのでした。

新島氏の上手なリードに応えて、彼が次々と披露する体験談はどれも常人では想像しえない特異なものでした。聴いていると、それら自体が一篇の小説のようなのですが、彼のいくつかの作品と同様にユーモアで包まれているため、本来そこにあるはずの悲愴さは後退してしまっているのでした。例えば文化大革命期に下放政策で再教育を受けた体験は苛酷極まりないはずですが、フィクションである「中国の小さなお針子」と同じようなトーンに聞こえました。美術史を学ぶために異国フランスに留学して、そこで映画を志したきっかけ、さらに外国語で小説を書き始めたきっかけ、そして母国での映画撮影に関わる数々の苦難についてもしかりでした。
(つづく)

【急告】 TVで「ちらっ」と紹介してもらうことになりました♪

2010-10-23 | Europe ところどころ
朝鮮半島のテロリスト・ヒーロー安重根似の、世界のナベアツがプレゼンする行動実験バラエティー「オモロ幸福論」という仙台放送制作のTV番組で、ここ Tomotubby's Travel Blog を(たぶん)「ちらっ」と紹介してもらえることになりました。お下品ネタ「スキポール空港のトイレの蝿 (オランダ)」の件に関わっているので予告篇だと(たぶん)このへん↓。





まず、仙台放送で 10月25日(月)19:00~19:54 に放映されますので仙台近郊にご在住の方は必見です。観られた方はどんなだったか、コメントなどいただければ幸甚です。その後もフジテレビ系列で以下のように放映予定です。東京は平日の深夜だから観れないかな~。

北海道文化放送
 10月30日(土) 14:30~15:25
岩手めんこいテレビ
 10月30日(土) 14:00~14:55
秋田テレビ
 10月31日(日) 16:00~16:55
さくらんぼテレビ
 10月31日(日) 16:00~16:55
福島テレビ
 10月31日(日) 14:00~14:55
フジテレビ
 11月15日(月) 26:40~27:35

世界一有名なタコ、パウル君

2010-07-17 | Europe ところどころ
いつの間にかワールドカップが終わっていた。

今回、サッカー場の外で話題になったのが、オーバーハウゼン水族館「シー・ライフ」のタコ「パウル君」。タコの分際でドイツの戦う試合結果を次々と予言し、挙句の果てにドイツの準決勝敗退まで当ててしまい危うくサラダやパエーリャの具にされそうになったらしいが、その後も三位決定戦、決勝戦の結果を当て、ついに八試合連続で勝敗結果を的中させてしまった。確率的には二の八乗分の一だから、実に 1/256。大会後も優勝国スペインから移籍のオファーがあったりして未だに話題は絶えない。

しかし、あれはいったい何だったのだろう。タコが勝敗を占うことができるのだろうか。





勝敗予想の方法は、水槽内に対戦する二つの国の国旗のついた容器を並べ、それぞれにタコの好物の貝を入ておいて、パウル君に二者択一でどちらかを選ばせるというもの。パウル君は自己抑制の能力があるそうで、一方の容器だけ蓋を開けて貝を食べるらしいから、きっと賢いのだろう。ただ賢いといっても人間でいえば三歳児以下で、人間界のサッカー事情や国際事情に通じているわけでもなく、国旗の図案が国を象徴するものだという認識すらないに違いない。

タコの持つ目は、カメラと同じように対象物の距離に合わせてレンズを前後させてピントを合わせるしくみで、ロボットに応用されたりする優れモノらしい。目が認識した国旗の像を信号として脳に送り、そこで何らかの判断に基づいて、タコは二者択一を行っているのだろう。気になったので八試合の対戦国の国旗がどんなものだったか調べてみた。

ドイツ 4 - 0 オーストラリア

セルビア 1 - 0 ドイツ

ドイツ 1 - 0 ガーナ

ドイツ 4 - 1 イングランド

ドイツ 4 - 0 アルゼンチン

スペイン 1 - 0 ドイツ

ドイツ 3 - 2 ウルグアイ

スペイン 1 - 0 オランダ


この結果から直観的に判断するに、パウル君は黄~橙~赤の色の旗を好んで選んでいるように思われる。優勝国スペインの旗は、明るい黄色の面積が最も大きい。逆にオーストラリアやアルゼンチン、パラグアイといった青が基調の旗は全く選ばれていない。

しかしパウル君は、第二戦ではドイツの旗と比較して敢えてセルビアの旗を選んでいる。同様に第三戦ではガーナの旗を退けている。「黄~橙~赤の色の旗を選ぶ」のが原理原則なら、むしろセルビアの旗を退け、ガーナの旗を選んだのではないかと思われる。ただ、他の六試合と比べてこの二試合は、どちらを選択すべきなのか、タコにとっても難しかったのは事実だろう。そこに生物ゆえの曖昧さが現れたのではなかろうか。

Store Front (1)

2010-04-30 | Europe ところどころ
もうあれから一年経ったのかぁ~。と思い出します。帰国直前にアテネのホテルの近くで撮った八百屋さん。この後、タクシーで空港に向かうも、市内は交通渋滞が凄くて帰国便に間に合わないんじゃないかとひやひやし通しでした。



このシーズンは、果物が瑞々しくて綺麗。
それはそうと、ギリシャの通貨も黒板のように「€」、今日はスペインの国債が格下げになったそうで、この国の財政危機の影響がユーロ圏全体へ波及しそうな雰囲気です。日本も子ども手当の財源を赤字国債で賄っているようじゃ、いずれ同じ轍を踏むことになるんじゃないかと心配。円高のうちにドル預金すべきかも?

【Twitter拡張版】 ジェノベーゼ・ソースのレシピ

2010-04-23 | Europe ところどころ
01:45 from movatwitter
ジェノベーゼ・ソース作った。 ニンニク、塩、バジル、松の実、パルメジャーノ・レッジャーノ、ペッコリーノ・セミスタジオナート、エクストラ・ヴァージン・オイルの順番にすりつぶして...


01:49 from movatwitter
スパゲッティのできあがり。 シメジとベーコンといっしょに軽く炒めたスパゲッティに、ジェノベーゼ・ソースを混ぜまぜ。美味美味。



by tomotubby on Twitter
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NHKの放送で紹介されていたレシピ(+私見)

1) 乳鉢にニンニク(1~2片)を入れてすりつぶす。
2) 大粒の海塩(10g)を少々入れて混ぜる。(私見・少し塩からいかな)
3) 続いてバジリコ(4把)を加えてすりつぶす。
4) 松の実(30g)を加えてすりつぶす。(私見・なければクルミを代用してもいいと思う)
5) パルミジャーノ・レッジャーノ(45~60g)とペコリーノ(20~40g)を加えてすりつぶす。
6) ペーストがすりこぎに付着して落ちなくなれば、エクストラ・ヴァージン・オイル(60~80cc)を加えて出来上がり。(私見・少しオイリーかな)

【Twitter拡張版】 フェリーニ「道」 ニーノ・ロータ作曲「ジェルソミーナのテーマ」

2010-02-22 | Europe ところどころ
バンクーバー五輪のフィギュア・スケート、男子シングル銅メダルに輝いた高橋大輔選手がフリー演技に使ったせいで、フェデリコ・フェリーニ監督の映画が脚光を浴びているよう。今日はお昼に同監督の「8 1/2」を放映していたらしいが、単なる偶然なのだろうか。偶然にしてはタイミングが良すぎるような気もする。

高橋選手のスケートに使われたのは、アンソニー・クイン、ジュリエッタ・マッシーナ(フェリーニの奥様)主演「道」の音楽でニーノ・ロータの名曲。一度でも「道」を観て感動のあまり涙腺を熱くした者が再びあの音楽「ジェルソミーナのテーマ」を聴くと、パブロフの犬のように条件反応的に映画の感動が甦る。華麗なスケーティング技術を持ち合わせた高橋選手がこの曲を選び、スケートリンクにジェルソミーナの道化師の姿、さらには映画の最後に海岸で泣き崩れるザンパノの姿を浮かび上がらせたことで、メダルは確実に彼の手にたぐり寄せられたのではないかとさえ思える。


Federico Fellini「La Strada」

それで、当然「ジェルソミーナのテーマ」で滑ったのは高橋選手が最初かと思ったが、トリノ五輪男子シングル銅メダリストのジェフリー・バトルが2001年に使っていたのを見つけてしまった。こちらの方が映画のストーリーに忠実ではあるな。


Jeffrey Buttle

オマケは、かのカエターノ・ヴェローゾがフェリーニ夫妻に捧げたコンサート・ライブ盤「O Maggio a Federico e Giulietta」で歌う「ジェルソミーナのテーマ」。カエターノはライブで「ジュリエッタ・マッシーナ」と題された歌も歌っており、おそらくは彼女のファンなのだろう。


Caetano Veloso「Gelsomina」

奇しくも今日2月22日は故ジュリエッタ・マッシーナのお誕生日。今回も twitter 拡張版でした。

カステル・デル・モンテ、タコ、秘数8

2009-12-20 | Europe ところどころ
カステル・デル・モンテには謎が多い。正八角柱の構造の八つの頂点には高さ24mの小さな正八角形の隅塔を持ち、中心にはやはり吹抜けの正八角形の庭を持つ。このようにこの城は終始「8」という数に拘っている。フリードリヒ二世が十字軍遠征から帰還した際にイタリアに作った二百に及ぶ城塞の中には類似したものは一つとしてなく、誰がこの象徴的な建築を設計したのかも伝えられていない。



城を上から見ると、グラナダのアルハンブラ宮殿を飾るイスラム様式のモザイクにも似ている。八つの塔の屋上には天文台があり、ここでアラビアの占星術師が星の運行を観測して皇帝の未来を占ったといたという。ピタゴラスが体系化したという数秘学において「8」という数は、正八角形が「基礎」や「安定」を表わす正方形が二つ45度の角度でずらされて重なっていることから、「秩序」や「統制」を表わし、繁栄を導く「力」のシンボルとなる。先述したメドゥーサの首を備えた「トリナクリア」と同様に。「8」という数は言うまでもなくタコの足(触腕)の数でもあり、城塞の形は足を縮めたタコの姿に見えはしないか?

【Tilt-Shift Miniture】 八角形の城

2009-12-19 | Europe ところどころ
シチリアがギリシャ時代に用いられていた「トリナクリア」を再び紋章として採用するのは、1282年に「シチリアの晩祷」事件が起こりアンジュー家の王が島から脱出して、王国の領土がシチリア本島とイタリア半島南部(つまりナポリ王国)に分裂した後である。それぞれの領土はバルセロナ家とアンジュー家によって治められ、シチリア島の方が「トリナクリア」を旗に用いる。こちらは後に「トリナクリア王国」を名乗ることになる。

両家の統治が始まる以前のシチリア王国はノルマン人によって征服統治されてきた。歴代の君主の中で最も興味を惹くのは、ホーエンシュタウフェン家の神聖ローマ皇帝にしてシチリア王だったフリードリヒ二世ではないだろうか。キリスト教とイスラム教の共存する特異な文化を持つパレルモの地に生まれ育ったフリードリヒ二世は、近代的な知性と国際感覚を持ち合わせ自然科学にも造詣深く「世界の驚異」の名で呼ばれる。イスラム教に寛容でギリシャ正教とも友好関係を維持したことでローマ法王から何度も破門を受けるが生涯カトリック教会と対立した。中世にあっては稀有な個性というほかない。

一昨日、帰り道に古書店で澁澤龍彦の「旅のモザイク」の初版美本(なんと千円)を見つけて買い求め読み始めている。澁澤は生涯四度ヨーロッパを旅行しており、その詳細は没後「滞欧日記」として纏められていて私の旅の指南書となっていることは前にも触れたが、彼の二度目の旅行はイタリアに絞られており、パレルモほかフリードリヒ二世ゆかりの地を幾つか訪れている。このときの詳しい旅行記が写真つきで「旅のモザイク」に収められているのだ。



このとき澁澤は、イタリア半島の踵の部分にあたるプーリア州バーリ近郊の世界遺産、フリードリヒ二世の建てた八角形の城塞「カステル・デル・モンテ」にも訪れている。「滞欧日記」には「カステル・デル・モンテ。八角形の城。見られず。風強し。ミカゲ石か大谷石のような感じの城。窓少なし。」と記録があるだけでやけにそっけない。「見られず」とあるのは中に入れなかったということなのだろう。私は、澁澤がこの城にさして感銘を覚えなかったのではないか。と思っていたが、「旅のモザイク」を読むと、そんなことはまったくなく、城を訪れた彼の昂奮が伝わってくる。(つづく)

メドゥーサの「目」力

2009-12-18 | Europe ところどころ
シチリアのことについてもう少し。

先述したが、シチリアの紋章「トリナクリア」の中央の丸い顔は太陽神ではなくメドゥーサとする説がある。メドゥーサといえば、ギリシャ神話に登場する冥府の怪物で、元は美しい少女だったがアテーナの怒りを買って美しい髪を蛇に変えられてしまったという。その醜い姿は、目を直視した者を石に変えてしまう力を持っていたが、彼女に容赦ないアテーナの助けを借りたペルセウスによって退治されてしまう。ペルセウスは、鏡面に仕上げた盾と曲がった刀を用いて、目を直視することなく危険極まりない首を切り落とすのである。ペルセウスは切り落とされてもなお石化能力を持つメドゥーサの首を用いて、海の怪物からアンドロメダを救い出すのだが、このへんの話は夏の夜空の星座となっている。爾後、軍神アテーナはペルセウスから献上されたこの首を自らの盾アイギスに取付けることで盾を最強のものとしたのだった。シチリアの三脚巴紋の顔がメドゥーサということならば、アテーナの盾アイギスの持つ力を備えた紋章ということになろう。

気にかかるのはメドゥーサの蛇の髪とタコの持つ八脚の足(触腕)の類似性であるが、かのロジェ・カイヨワは、著書「蛸 ~想像の世界を支配する論理をさぐる~」の中で即座にこの類推を否定している。カイヨワは「蛸」を著す以前に「メドゥーサとその仲間たち」という著作を物しており、メドゥーサの神話の中で、「目」を見た者を石に変える首をペルセウスが持ち帰り今度は敵に向けて他者を石化するという点に着目する。そこに「仮面」の秘密伝授を伴う未開社会の通過儀礼を見たのである。未開社会においては、秘密を明かされていない者が「仮面」を見ると死を招くと信じられている。メドゥーサの怖ろしい「目」を見る恐怖と、「目」の力を自らのものとしたいという願望は、「目」を描いた武器や仮面や神話となって繰り返し現れていると考えるのである。


カラヴァッジョ「メドゥーサ」

(つづく)