Tomotubby’s Travel Blog

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メドゥーサの「目」力

2009-12-18 | Europe ところどころ
シチリアのことについてもう少し。

先述したが、シチリアの紋章「トリナクリア」の中央の丸い顔は太陽神ではなくメドゥーサとする説がある。メドゥーサといえば、ギリシャ神話に登場する冥府の怪物で、元は美しい少女だったがアテーナの怒りを買って美しい髪を蛇に変えられてしまったという。その醜い姿は、目を直視した者を石に変えてしまう力を持っていたが、彼女に容赦ないアテーナの助けを借りたペルセウスによって退治されてしまう。ペルセウスは、鏡面に仕上げた盾と曲がった刀を用いて、目を直視することなく危険極まりない首を切り落とすのである。ペルセウスは切り落とされてもなお石化能力を持つメドゥーサの首を用いて、海の怪物からアンドロメダを救い出すのだが、このへんの話は夏の夜空の星座となっている。爾後、軍神アテーナはペルセウスから献上されたこの首を自らの盾アイギスに取付けることで盾を最強のものとしたのだった。シチリアの三脚巴紋の顔がメドゥーサということならば、アテーナの盾アイギスの持つ力を備えた紋章ということになろう。

気にかかるのはメドゥーサの蛇の髪とタコの持つ八脚の足(触腕)の類似性であるが、かのロジェ・カイヨワは、著書「蛸 ~想像の世界を支配する論理をさぐる~」の中で即座にこの類推を否定している。カイヨワは「蛸」を著す以前に「メドゥーサとその仲間たち」という著作を物しており、メドゥーサの神話の中で、「目」を見た者を石に変える首をペルセウスが持ち帰り今度は敵に向けて他者を石化するという点に着目する。そこに「仮面」の秘密伝授を伴う未開社会の通過儀礼を見たのである。未開社会においては、秘密を明かされていない者が「仮面」を見ると死を招くと信じられている。メドゥーサの怖ろしい「目」を見る恐怖と、「目」の力を自らのものとしたいという願望は、「目」を描いた武器や仮面や神話となって繰り返し現れていると考えるのである。


カラヴァッジョ「メドゥーサ」

(つづく)


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