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Tomotubby’s Travel Blog

Tomotubby と Pet の奇妙な旅 Blog。
でもホントに旅 Blog なんだろうか?

「スティール・ボール・ラン」に引用されるマグリット作品

2007-01-13 | 漫画... 「デスノート」と「ジョジョ」など
「ウルトラジャンプ」連載時にはあまり気にならなかったのですが、お正月に荒木飛呂彦「スティール・ボール・ラン」のコミックスを読み返していると、ベルギーのシュールレアリスム画家、ルネ・マグリットの作品の引用と思われる箇所がいくつも見つかりました。最近は「回転」の原理に黄金比がでてきたりするし、荒木さん、アートにご執心なんでしょうか?

まず、前にコメント欄で指摘したと思いますが「ウルトラジャンプ8月号」の表紙絵。そしてコミックス第9巻の表紙絵です。



林の中に見え隠れする乗馬像は、色合いが違えど、どこかマグリットの「白紙委任状」を思い起こさせます。


「白紙委任状」

表紙絵では連載の物語から離れて絵が描けるせいか、荒木さんが楽しんで描いているように思えます。

次は「すみませぇん」が口癖の、大統領の刺客(小林信彦の「オヨヨ大統領」シリーズみたい。復刊希望)ブラックモア。雨滴を空中で固定して、それを足場に空中を歩行する能力を持っています。


空中を歩くブラックモア

空中を移動するシーンはマグリットの「ゴルコンド」という作品、山高帽にコートを着込んだ男性が、雨粒のように空からたくさん落ちてくる絵を思い出させます。


「ゴルコンド」

「スティール・ボール・ラン」はレースを競う物語ですが、それはまた宝探しの物語でもあります。宝に相当するのが、レース・コース上にばらばらに隠されている「キリストの遺体」なのですが、そのうちの両眼が隠されていたフットルース山の目印は、山頂のシルエットが「crus」という文字になっていることでした。

この山は、山頂が鳥のシルエットになった「アルンハイムの領地」を想起させます。絵では手前にある巣の中に卵がありますが、物語では卵が眼球に化けたのかもしれません。ジョルジュ・バタイユの「眼球譚」みたい。ちなみに「アルンハイムの領地」と「白紙委任状」は何年か前に日本で開催された「マグリット展」で展示され、どちらもポスターに使われた目玉作品でした。


「アルンハイムの領地」

いろいろ想像していると、ジャイロの操る鉄球も「天空の声」などに出てくる球体に見えるし、この球体と指が描かれた「イレーネ(または)禁断の文学」はジョジョのスタンドを暗示しているようにも思えます。

「天空の声」


「イレーヌ(または)禁断の文学」

(以下、コミックス派の方、ネタバレ注意)
ネイティブ・アメリカン、サ(ウ)ンドマンの音を実体化するスタンドだって、石の文字の積み上がった「会話の技術」という絵に似ています。


サ(ウ)ンドマンのスタンド


「会話の技術」 REVEとは夢のこと、上の方はなんだかハングルみたい。

このようにマグリットの絵画作品は、荒木さんの描くイメージの源泉になっているのかもしれません。

それからマグリットではないんですが、ディオとサ(ウ)ンドマンが共同戦線を組むくだりで背景になっていた階段は、赤瀬川原平いうところの「超芸術トマソン」ではないでしょうか。このブログでも取り上げたことのある、単に上がって下りるだけの「無用階段」、まさに四谷にあった伝説の純粋階段です。


純粋階段上にすわるディオ。サ(ウ)ンドマンはドアの下に隠れている。


東海道「四谷階段」

【ジョジョ】シュトロハイムの原型をインディ・ジョーンズに見た

2007-01-03 | 漫画... 「デスノート」と「ジョジョ」など
お正月は実家でくつろぎモード。ジョージ・ルーカス関連本を眺めていたら、「インディ・ジョーンズ 失われたアーク」で映画に採用されず没になったナチス将校のスケッチを発見しました。これって「ジョジョの奇妙な冒険」第二部に登場するナチスのサイボーグ将校、シュトロハイムの原型ではないのかな?

年末のデスノート

2006-12-29 | 漫画... 「デスノート」と「ジョジョ」など

夜神月亡き後、ミサはどうしてるのかな?

銃刀法違反で活動自粛かと思われた小畑健の新作「ラルΩグラド」は期待が大きかっただけに期待外れでつまんないし、自分の中ではとっくに終わってる筈の「デスノート」なんですが、他方では今まさにブームのまっただ中にいる人たちがいたりして、なんだか「ダ・ヴィンチ・コード」のときのような気分です。そのうえ来年は、Lを主人公に据えた「デスノート外伝」の映画まで撮られるそうで、ああそうですか。としか反応できないんですが、また西尾維新が原作書いてくれるのを期待することにしましょう。

切り裂きジャック (ジョジョをめぐる旅 第三回 ロンドン)

2006-12-06 | 漫画... 「デスノート」と「ジョジョ」など
「手口の残虐性は他を寄せ付けずッ!
動機!正体!真相は一世紀たった今も闇の中の謎!
ロンドン中を恐怖のどん底に突き落とした男!
究極の殺人鬼ッ! 切り裂きジャック!!」

ジョジョの奇妙な冒険」第一部(第三巻)で、石仮面をかぶり吸血鬼となったディオは、ロンドン・イーストエンド・ホワイトチャペル街で犯行を犯していた切り裂きジャック(Jack The Ripper)と出会い、彼を下僕とします。そして

「ジャック・ザ・リパー この殺人鬼はある日をさかいに犯罪をピタリとやめ...謎の彼方に消える...」


「ジョジョ」第一部は、1987年~88年、つまり20年近く前に描かれていますが、1988年は、1888年にロンドンを騒がせた猟奇殺人事件「切り裂きジャック事件」からなんと百周年目の年だったわけです。この偶然が作者・荒木飛呂彦を刺激して、ジャックが作品に登場したのかもしれません。意外とジャックの登場が先にありきで、19世紀末のロンドンという舞台が作品に選ばれたのかもしれないと思います。

近頃この切り裂きジャックのモンタージュ写真がロンドン警視庁で作成され話題を呼んでいます。フレディー・マーキュリーに似ているとの声もありますが、荒木先生描くところのジャックとも雰囲気がよく似ています。背の高い男をイメージしがちですが、身長は165~170cmと意外に小柄。



ところで「ジョジョ」に登場するジャックは、最後の犯行において、同行していた一般の若い女性をホワイトチャペル街で襲っています。女性は時刻が21時になったのに気づき、
「ああ...もうこんな時間! 早くおうちに帰らなくっちゃあ」
と漏らし、
「でもあたし怖いわ...あの...新聞の...あいつが」
と新聞に出ていた切り裂きジャックを思い出します。
「手術用のメスみたいなもので女性ばかり狙うって話よ! 内臓を壁の額ぶちにぶら下げてあったって話を聞いたわ! おお! 恐ろしいッ!」
そして、自分こそが切り裂きジャックだと名乗った男により、メスのような刃物で喉を切り裂かれ殺されてしまうのです。


おお恐ヮ

切り裂きジャックは、その残虐性と犯罪予告など派手な振る舞いで世界的に有名になりましたが、コリン・ウィルソンの著書によると、実際に彼の犯行と確実視されているのは5件だけで、被害者の女性はいずれも娼婦という特殊な職業でした。犯行の順に被害者を並べると、次のようになります。
①1888年8月31日 娼婦 メアリー・アン・ニコルズ(42)
②1888年9月8日 娼婦 アニー・チャップマン(47)
③1888年9月30日 娼婦 エリザベス・ストライド(44)
④1888年9月30日 娼婦 キャサリン・エドウズ(43)
⑤1888年11月9日 娼婦 メアリー・ジャネット・ケリー(24)
犠牲者5人のうち最初の四人は40代の女性ですが、最後の犠牲者だけは20代の若い女性で、「ジョジョ」の内容と一致しています。荒木先生、調べてたのかな。と思ったりもしましたが、彼女だけは家の中で殺されていました。作中で女性が話した額縁に架かって内臓は、他ならぬメアリー・ジャネット・ケリーのものだったのです。

* * *
怖ろしいことに、この記事を書いた頃にイギリスの片田舎で悪夢が現実として甦っていたのでした。ぞぞぞ...

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伝説の殺人犯のモンタージュ 「切り裂きジャック」で英警察

1888年にロンドンで売春婦ののどを次々と刃物で切り、少なくとも5人を殺害した伝説の猟奇殺人犯「切り裂きジャック」のモンタージュ写真を、このほどロンドン警視庁が作成した。

当時の警察はジャックの正体に迫ることができず、事件は迷宮入り。警視庁のスタッフらは今回、過去の資料などを洗い直した上で、最新の捜査技術を駆使。現在の時点でどの程度犯人像に迫れるかに挑戦した。

モンタージュ写真の作成過程は、21日放送の英民放テレビのドキュメンタリーで紹介されるという。(共同)

2006年11月21日 17:06米国東部時間

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切り裂きジャックはこんな顔 ロンドン警視庁が似顔絵

【ロンドン=岡安大助】これが切り裂きジャックの顔だ-。19世紀末、少なくとも女性5人を殺害し、ロンドンを恐怖のどん底に陥れた連続殺人鬼の似顔絵が、ロンドン警視庁の最新技術を使って作成された。21日夜の民放ドキュメンタリー番組で放映される。

AP通信などによると、似顔絵は目撃者13人の証言をはじめとする当時の捜査資料をもとに、顔の復元技術を駆使してコンピューターで描かれた。面長の顔に濃いまゆ毛と口ひげが特徴的だが、猟奇的な連続殺人犯としては「驚くほど普通」(同警視庁関係者)。身長は165-170センチとみられる。

切り裂きジャックは1888年8月から3カ月間に、残虐な手口で売春婦5人を殺害した。新聞社に犯行予告を送りつけるなど「劇場型犯罪」の元祖とされ、犠牲者は最高20人に上るとの説もあるが、未解決のまま終わった。

中日新聞

コム・オンボ神殿 (ジョジョをめぐる旅 第二回 エジプト)

2006-11-11 | 漫画... 「デスノート」と「ジョジョ」など
ワニ頭のセベク神が祀られ、ワニのミイラで有名なコム・オンボ神殿は、「ジョジョの奇妙な冒険 第三部」で印象的なエピソードの舞台となっています。主人公、空条承太郎の仲間で、「銀の戦車」のスタンド(特殊能力)を操る正義漢 J・P・ポルナレフが、強敵「冥界の神 アヌビス神」のスタンドと派手な真っ向対決したのが、この神殿の中なのでした。「アヌビス神」の実体は切れ味鋭い刀で、その刀身を手にした者に取り憑いて、その心を奪い殺人者に変えるという恐ろしい敵でした。初戦、コム・オンボ地元の青年チャカに取り憑いた「アヌビス神」を、苦戦の末にポルナレフは下すのですが、刀の美しさに魅入られた彼は、コム・オンボの下流にあるエドフの街で、今度は「アヌビス神」に取り憑かれ、主人公承太郎を襲うことになります。まさに「ミイラ取りがミイラに」なったというオチです。

ナイル河畔から麦畑の向こうにコム・オンボ神殿が見えますが、途中にはカラベーヤを着て本物の銃を携えた人↓がいたりして、


ちと、おっかなかったです。




ピクチャレスクです。

ポルナレフは第五部で、ローマのコロッセオにおけるクライマックス・シーンに再登場しますが、どうも爬虫類と縁があるようで、亀に生まれ変わってしまう可哀相な運命にあります。(ネタバレ)

「スティール・ボール・ラン」 第5ステージ急展開・今後の予想

2006-10-29 | 漫画... 「デスノート」と「ジョジョ」など
「ウルトラジャンプ」最新号11月号では、「ジョジョの奇妙な冒険第七部、第5ステージに入った「スティール・ボール・ラン」が急展開です。

以下ネタバレになりますが、下半身不随の「身体障害者」にして頼りなげなジョニィ・ジョースターとともに、ここまで物語の主人公と思われた「死刑執行人」ジャイロ・ツェペリが、ジョニィに「回転」のワザの奥義を教えた後、ミシシッピ川で「意外な敵」の操る「音」のスタンド攻撃(「ジョジョ」第四部に出てくる広瀬康一の「エコーズ ACT1」みたい)に屈して死んでしまったもようです。

思えば「ジョジョ」第一部でも、ジャイロの生まれ変わりともいえるツェペリ男爵が、ジョナサン・ジョースターに「波紋」のワザの奥義を授けた後、タルカスの攻撃に対してジョジョの盾となって死んでしまいました。ツェペリ一族はジョースター一族にワザを授けて盾となり死んでいく運命を負うのでしょうか?

しかし、ジャイロの「スティール・ボール・ラン」レースへの参加目的は、無実の罪で処刑されることになった少年マルコを救うため、優勝して恩赦を勝ち取ることにあった筈です。こんなところで死んでいいものでしょうか? 彼の目的は志半ばにしてここに潰えてしまうのでしょうか?

そういえば 「ジョジョ」第六部でも、フー・ファイターズが瀕死のアナスイに乗り移り再生させたこともあるので、まだジャイロが死んでしまったとは断定できません。ジョニィとジャイロの近くにいる筈の「男装の少女」ホット・パンツが持つスタンド「クリーム・スターター」は「再生」の能力のスタンドだし、「意外な敵」がナイフで刺し殺した筈の、臍を二つ持つ日本人老人、ノリスケ・ヒガシカタが、もしかすると死んでいなくて「再生」のスタンドを持っているのかもしれません。 「ジョジョ」第四部の主人公、東方杖助と同じ姓を持つ登場人物が、殆ど何の活躍もせずに消えていくのはまったく解せません。例えばノリスケ・ヒガシカタは、第六部に登場したエルメェス・コステロみたいに、二つのものを貼り合わせるスタンド能力を持っているのではないでしょうか。過去に誰かの体と自分の体を一体化したため、臍を二つ持っているのではないでしょうか? ヒガシカタ+ジャイロ、ジョニィ+ジャイロ、或いは前々回に期待を持たせた割に惨めな最期を遂げたドット・ハーン+ジャイロのような合成人間ができたりするのではないでしょうか? はたまた「スティール・ボール・ラン」レースに隠された宝「キリストの遺体」、例えばジョニィの持つ脊椎部分が何らかの奇跡をもたらすのかもしれません。

若しジャイロがこのまま物語から消えてしまったとすると、「身体障害者」&「死刑執行人」のコンビに代わり、今後はジョニィ&ホット・パンツという新しいコンビができあがる可能性があります。この「身体障害者」&「男装の少女」のコンビは、以前このブログでも指摘したように、まるで「百鬼丸」&「どろろ」のコンビではないですか。ジョニィはジャイロの死を乗り越え、ホット・パンツの愛を得て、新しいキリストの遺体を見つけて体に取り込むことで成長して、最後は「健常者」としてレースにゴールする。という展開も見えてきます。

(長大なる「ジョジョ・サーガ」について関心を持たれた方は、今回リンクさせていただいたウィキペディアに詳しく出てるので、参考にしてください)

他人の空似 (出光美術館)

2006-10-02 | 漫画... 「デスノート」と「ジョジョ」など
雨の中、出光美術館で行われていた「国宝 風神雷神図屏風」展最終日に行ってきました。最近最終日ばっか。ブログで紹介した時点で会期終了じゃ意味ないじゃん。というなかれ。展覧会入場は閉館30分前まで、つまり18時30分なんですが、この時間に入場すると、後から入場する人はおらず、行列と混雑を避けて鑑賞できるわけです。入場券はどうせ新聞屋さんからせしめた招待券だしぃ。

展覧会の目玉は、江戸初期に描かれた俵屋宗達の二曲一双「風神雷神図屏風」(建仁寺所蔵)、それから一世紀を経て宗達を模写して描いた尾形光琳の「風神雷神屏風」(東京国立博物館所蔵)、さらに幕末、光琳を模写した酒井抱一の「風神雷神屏風」(出光美術館所蔵)と、三作品が一堂に会したことで、なんと66年ぶりらしいから、前に見に行ったのが懐かしいな。とか、そういう体験談は聞けそうにもないでしょう。

今回初めて知ったののですが、抱一は恐らく宗達のことを知らず、光琳の作品をオリジナルと信じていた可能性が高い。ということです、光琳は宗達の作品をなぞって自作を描いたのは間違いないのですが、抱一と光琳の作品はまったく重ならないのです。それから抱一の風神雷神は指が四本しかないことも知りました。Tomotubby は妖怪人間を思い出してしまいました。

閉館が近づいてくると、いつもと違う異様な雰囲気が漂ってきました。そうマティス展の最終日みたいに。琳派・命というより、宗達・愛という感じの人たちが、国宝の前に地べた座りし始めたのです。


電車の中で、地べた座りしている少年少女をつかまえて「最近の若い奴らは...」とかぼやきそうな、いい大人たちなのに。名残惜しそうに、若干一名なんか目をうるうるさせて、別れを惜しんでいます。美術館の人たちも理解があって、最後の別れを15分くらい延長してくれました。ああ、ここには愛があります。まさに宗達・愛です。

その頃、光琳・抱一の前はどうだったかというと、


正面から写真が撮れるほどに閑散としていました。特に抱一↑。ああ、ここには愛がないのであった。

やはりオリジナルの持つ風格とでも言いましょうか。偉大なる先人・宗達の前に光琳・抱一すら霞んでしまうのでしょうか。実は、宗達・光琳・抱一のあとにも、琳派を継いだ鈴木其一、さらには洋画家・前田青邨が同じモチーフで絵を描いてたりします。そういえば平成の絵師とも呼ばれ、最近、銃刀法違反で逮捕された小畑健も「風神」を描いていましたね。↓


あ、リュークでした。他人の空似?


【発見!?】この記事ですが、goo ラボ ローカルトピック検索実験の有楽町/日比谷(東京)の部門で晴れて一位を獲得してました。しかし、どこか間違っているような気がします。こんなのでいいのか。goo?

全日空「旅割」ポスターは「ジョジョ」が元ネタ?

2006-09-22 | 漫画... 「デスノート」と「ジョジョ」など
全日空の「旅割」のテレビCMに出てくる「宇宙戦艦ヤマト」の顔色の悪い悪役の名前が思い出せなくて、ここ数日いらいらしていました。インターネット検索すりゃすぐ判りました。デスラー総統でした。



で、このCMと同時か、少し時間差つけて、駅なんかに貼り出された一連のポスター、標識の人が抜け出しちゃってるポスターなんですけど...これって「ジョジョの奇妙な冒険 Part6 ストーンオーシャン」の終わりの方で登場するディオの息子、ウンガロが操るスタンド「ボヘミアン・ラプソディー」がネタ元なんじゃないでしょうか? 漫画や絵画や看板などのキャラクターを実在化させてしまう不思議な能力でした。(読んでない人は何のことかさっぱり判らないでしょうが)フロリダ・オーランドのディズニーワールドのキャラクターが悪意を持って実体化して、キャラクターに惹かれた人の魂を物語世界に引きずり込むという恐ろしいお話でした。

ロサンゼルスBB連続殺人事件

2006-08-20 | 漫画... 「デスノート」と「ジョジョ」など
「ANOTHER NOTE アナザーノート ロサンゼルスBB連続殺人事件」?

あの西尾維新による「デスノート外伝」と聞きまして、旅行中に読んじゃいました。
昨年、西尾デビュー以来の、いーちゃんなる男子が狂言回しの「戯言シリーズ」が完結してしまったので、デスノート外伝をシリーズ化するのではないか?と思われます。メロがLから聞いた三大事件、「ロサンゼルスBB連続殺人事件」の他の二つ、

「欧州バイオテロ事件」:ワイミーズハウスの初代Xから初代Zまでのそそるべき子供達がゲストとして参戦する、世界三大探偵(L、エラルド・コイル、ドヌーヴ)による探偵合戦の舞台

「ウィンチェスター爆弾魔事件」:世界一の発明家キルシュ・ワイミーことワタリと、当時推定八歳のLとの出会い--世紀の名探偵L誕生のきっかけとなった、第三次世界大戦をすんでのところで食い止めた
についても触れられているので、早書きの西尾のこと、構想は既に出来上がっているのでしょう。映画の続編に合わせて出版されるのではないか?と思われます。

肝心の「ロサンゼルスBB連続殺人事件」なんですが、Lと南空ナオミを取り上げて独自の世界を展開しているあたり流石ぁ西尾維新と思われますが、二人の関係は、ジェフリー・ディーヴァーの「リンカーン・ライム」シリーズやトマス・ハリスの「ハンニバル・レクター」シリーズと同じ設定で、筋立ても一昔前に流行ったプロファイリングを取り上げた「FBI心理分析官」シリーズみたいです。こういうの読まないデスノ・ファンには気にはならないと思うけど、オリジナリティに欠けるかなー。密室トリックの方は、私、壁に打ちつけられた藁人形からすぐ判りました。(あるのなら)次作に期待します。

天才児を集めたワイミーズハウスは、設立目的が違うけど、浦沢直樹の「MONSTER」に出てくる「511キンダーハイム」にちと似てるかも。と思えてきました。そういえば、西尾維新の「ERプログラム」にもちと似てるかな。


池袋駅で発見。言わずと知れた「L」と、影の薄い南空ナオミ
「DEATHNOTE」のロゴ立てると、横になっていたロゴが「ATT」なことに気づかされます。Lの手には携帯電話があってもおかしくないし、これは一種の「サブリミナル効果」なのかも

「スティール・ボール・ラン」と「どろろ」

2006-06-24 | 漫画... 「デスノート」と「ジョジョ」など
昨日、自分の脊髄感覚について書いたのですが、そういえば、ウルトラジャンプ連載中の荒木飛呂彦「スティール・ボール・ラン」では、主人公ジョジョがイエス・キリストの脊椎を手に入れました。例によってジョジョは脊椎を自分の体内に取り込んで新たな能力を手に入れるわけですが、異物を体に入れるわけですから、眩暈がして気分が悪くなってしまいます。

あ、こういうシーンってどこかで見たことあるなぁ。と思ったんですが、それは手塚治虫の時代劇漫画「どろろ」でした。四十八匹の妖怪によって体の殆どのパーツを奪われた究極の不具者、百鬼丸が、妖怪を倒すごとに体のパーツを取り戻していくという筋立で、取り戻されたパーツが再び百鬼丸の体に取り込まれ同化されるとき、彼は決まってもがき苦しむのです。百鬼丸の場合は、体に同化されるのは異物ではなく、かつて自分自身の一部だったわけですが、どこかエロティックなものを感じました。

前にブログで「スティール・ボール・ラン」は、下半身不随の身体障害者と死刑執行人が主人公というコミック史上たいへん珍しい設定であることを指摘し、「どろろ」の百鬼丸についても触れましたが、迂闊にも、体の一部を体内に取り込むという点で共通性があることは見逃していました。

「どろろ」のストーリーは、まさしく障害を抱えたヒーロー百鬼丸の復讐劇なのですが、彼の復讐の道行きに同行するどろろという子供の名がタイトルに選ばれています。百鬼丸は真の主人公に違いないのですが、人物設定が少年漫画としては非日常的であまりに重く陰惨なので、手塚は、明るい性格で若い読者が親しみの持てるどろろを配して、主人公を敢えて二人にしたのだと思います。目的が違うかもしれませんが、結果的に主人公が二人に落ち着いたのは「どろろ」と「スティール・ボール・ラン」の共通点でもあります。

荒木は長大なる「ジョジョ」サーガに多くの女性を登場させていますが、ジョリーンなど男性と互角に戦え、容貌以外はほぼ男性といってよいタイプが多かったと思います。男女間のロマンスに至っては、第一部・第二部で、少年漫画にお馴染み、申し訳程度に語られただけで、以降は殆ど取り上げられてもいません。掲載誌が少年ジャンプだったため限界があったのかもしれませんが、第六部まで荒木は「キャラの立った」女性を描けていないといえます。

思えば「ジョジョ」第三部の前半、香港からの船旅に、家出少女が(承太郎にすぐに見破られますが)「男装の少女」として登場します。彼女は危機を救ってくれた承太郎に淡い思いを寄せつつ、その後も承太郎の旅に従います。シンガポールでも重要な役割を果たし、一度別れた後にパキスタンでも再登場しています。てっきり彼女を準主人公に格上げするのかと思いましたが、結局名前も明らかにされず物語の舞台から降ろされてしまいます。彼女が準主人公としてうまく描かれていれば、「ジョジョ」は一味違ったストーリー展開になったのではないかと思います。

「スティール・ボール・ラン」の掲載誌が、読者対象年齢の高いウルトラジャンプに移されたことをきっかけに、荒木は今度こそ制約なしに「キャラの立つ」女性を描こうとしているように思えます。ひとりはルーシー・スティール、14歳にしてレースのプロモーターの妻であり、大統領の陰謀を知ってしまいます。もうひとりがホットパンツという意味ありげな名前の「男装の少女」。この二人が今後のストーリー展開上で重要な役割を担うのではないかと思います。

「どろろ」を印象深くしているのは、男の子と思われていたどろろが実は女の子だった、つまり「男装の少女」だった事実が最終話で明かされることです。手塚は「リボンの騎士」などでも「男装の少女」を取り上げ、倒錯的なエロスをも醸し出す「偽りの性」を描いていることは有名です。注目すべきは、荒木が「スティール・ボール・ラン」で、ホットパンツという「男装の少女」を登場させたことです。手塚賞受賞でキャリアをスタートした荒木の描くホットパンツとは、もしかすると手塚へのオマージュなのかもしれません。

蛇足ですが、話題の「DEATH NOTE」に続いて、なんと「どろろ」も実写版で映画化され、「どろろ DORORO」来年頭に公開されるそうです。配役はというと、百鬼丸が妻夫木君というのは、身長が足りないところは目をつむりまあ許してあげます(ホントは首の長い色白のハーフ顔が似合うと思います)が、子供のどろろが柴咲コウというのはどうなんでしょう? 最初からどろろが女性なのが丸分かりだし、主人公通しは私生活でも優香を失恋させたくらいいい仲と聞きます。柴咲コウがフェロモンを抑えつつ「男装の少女」を演技してくれることを希望します。ホントは小学生高学年の子役がどろろを演じた方がいいと思いますが。