街道をゆく 1 湖西のみち、甲州街道、長州路ほか (朝日文庫) | |
司馬 遼太郎 | |
朝日新聞出版 |
いま横浜そごうのそごう美術館では、「司馬遼太郎展」が開催されています。
たまたま昨日は横浜に用事があり、行ってまいりました。
とてもすばらしい展覧会だったので、ぜひたくさんの方にお越しいただければと思います。
嬉しかったのは、私が、(もう書いていいと思いますが)
大河ドラマの仕事をしていたときの、
「坂の上の雲」などの衣裳が展示されていたことですね!
「坂の上の雲」に関していうと、途中までしかかかわっていないのですが、
すべての制作過程が驚くべきスケールで、
時代考証も本当に緻密で、丁寧だったことが印象的です。
私は衣裳のお仕事を手伝っていたのですが、
たとえば、海軍の軍服のボタンがあるとすると、
何十種類ものボタンを集めてきて、
その海軍の階級にあったボタンを探し、
一個一個つけていく作業がとても面白いし、大変だったことを思い出します。
また、水兵さんのシャツを300枚「汚した」ことも
大変でしたが、いまとなっては懐かしい思い出です。
「汚し」というのは、洗い立ての衣裳では、
古さや質感が出ないので、洗濯機で何度も洗い、あえてくしゃくしゃにし、
戦国時代の衣裳などは、合戦などでの場面を想定して、
石油や泥などで、いわゆる「汚し」て質感を出すという作業で、
大変根気のいる作業です。
使われる場面は数カットなのですが、
時代考証を綿密に行い、厳重なチェックの上、場面に登場します。
300人の水兵さんが、私の手掛けたシャツを着てくださったのを
画面でみたときには、うれしくて涙が出たものでした。
というわけで、話がとてもそれてしまいましたが、
日本を代表する作家・司馬遼太郎は、大河ドラマの原作を数多く手掛けており、
その品格あふれる文体と、すぐれた歴史観で、
いまなおたくさんのファンを集めています。
そごう美術館の展覧会では、偉大なる司馬遼太郎の足跡をたどり、
日本の歴史の神髄に迫る構成をとっており、
大変興味深かったですね。
21世紀が迫りくる中、司馬遼太郎が若者に向けて書いた一文が
展示されており、見る者の胸をうつ名文となっていますので、
ぜひこれもご注目いただければと思います。
売店でも司馬遼太郎の作品は多々売られていましたが、
没後20年を経て、ふたたびもっと脚光をあびるべきだと思います。
そこで、この「街道をゆく」1を買いました。
これから、丹念に読み進めていきたいと思いますし、
これを機会に、あらためて司馬文学と日本人の来し方行く末を考えたいですね。