ある『物語』の断片

『物語たち』は語り始める。

幼虫

2007-11-20 00:20:02 | ある『物語』の断片
毛布にくるまって
微熱に浮かされながら
少年は窓の向こうの景色を
夢見ていた

曇り空の向こう
大気の中
輝く羽根

透き通るような羽根は
飛立つには
まだ少し

殻を
破って
すっかり入れ替わった
自分の姿を見せる日まで

その痛みに
己が耐えられる日まで

少年は
この現状を
受け入れることにした

そして
諦めなかった

あの場所から
飛び立つことは
結局叶わなかったけど

少年は
今でも飛行している

あの大気の中を
陽射しを受けながら

透き通るような
羽根のままで