ある『物語』の断片

『物語たち』は語り始める。

夜行バス

2007-11-08 13:13:53 | ある『物語』の断片
いつもの目的地に
向かうはずのバスは
いつしかルートを外れて
人知れない夜道を走っていた

でも、誰も何も言わなかった
その行き先を知っているから

灯りも無く
会話も無く
呼吸するのも
重苦しい

ふと、中年の男性が
呟く声が聞こえる

「『救い』ってさ」
「あるのかな」

誰もそれには答えない

生きることの意味を
見失った者たち

ただ、一つの目的で
連帯する者たち

速度の変わらないバス

寡黙な運転手は
どこまで続くか分からない
暗闇の中を
いつまでも走らせ続けていた