ある『物語』の断片

『物語たち』は語り始める。

曇り空

2007-11-04 12:55:27 | ある『物語』の断片
目覚めたら
今日も曇り空

家を出る頃には
雨の匂いが濃くなっていた

さんさんと注ぐもの
傘から透かして
バスを待っていた

今日は、何から話そうか

一輪の花を添えて
位牌の前で
手を合わせる姿を想像する

目の前に立ち止まるバス

そのドアに映った
男の顔は
あの人が笑っていた頃より
幾分、老けて見えた

景色が流れる
どこも変わらない街

でも
どこか違う

全ては
あの日から入れ替わって
そこから
動けない

ふと気が付くと
長靴を履いた子供たちが
ぱたぱたと乗車してくる

林檎のような
紅い頬

少しだけ
心が軽くなった気がする

そうだ
久々に、
まだ二人が
若かった頃の話でもしようか

再び
バスは動き始めた

終点を目指して。