ある『物語』の断片

『物語たち』は語り始める。

銀河の中

2008-01-28 01:05:50 | ある『物語』の断片
カーテンから漏れる
月明かりを顔に受けながら

夜空の向こうへ
想像を飛ばした


あの星も
この星も
あなたの身体も
私の記憶も
気付いたら
消えてしまうから

思い続けないといけないんだ


昨日の夢は
今日の夢へ

今日の夢は
明日の夢へ


夢の中の星たちに
今日も私は語りかける


朝目覚めるまでは
ずっと一緒だよ

手帳

2008-01-24 02:18:17 | ある『物語』の断片
空白に自分の予定が
次々と描かれていく

誰かと過ごす未来が
次々と描かれていく

その中でも
特別な一日に
大きく赤丸をして

その時までの
時を数えて

急に嬉しくなったり
急に不安になったりする

そんな普通な日々を
憧れていた日々


いつしか
予定は消えていって
日々の手順を
踏むだけになって

日常に埋もれていく

机の中にある
ついに使わなくなった
ボールペンと
古くなった手帳を

持て余し続ける日々


一昔前の自分と
憧れていた日々を

持て余し続ける日々

心配性

2008-01-23 00:26:45 | ある『物語』の断片
不安は心を駈り立てて
夜の街を走らせる

走っても走っても
迫り来る恐怖
目に見えない恐怖
焦燥

全力で走っているうちに

いつの間にか
街の外れの
こんな遠くまで来ていた


「思い過ごしか」

無駄な時間を
過ごしたものだと
自嘲しながらも

柵の向こうに広がる
水平線の向こうから昇る
よく冴えた朝陽を眺めながら

肩で息を切らしながらも
足を止めなかった自分に
呼吸を止めなかった自分に


それなりの
満足感を覚えていた

うた

2008-01-20 02:12:47 | ある『物語』の断片
いつも少女は
同じ場所に座っていた

空のネオンサインを眺めながら
お気に入りの曲を流しながら

「どんな辛い時だって」
「この曲を流すと」
「楽しくなるのよ」
「不思議ね」

と少女は笑っていた


今になって

君が何を伝えたかったのかが
分かってきたんだよ


ラララララ...
ラララララ...


そんな戻らない日々
一人で電車に乗り続ける日々

この曲の入ったMDも
いつの間にか古くなって
再生することができなくなった

それでもあの曲は
今でも口ずさむことができるんだ

今になって
何を伝えるべきだったのかが

ようやく分かってきたんだよ


ラララララ...
ラララララ...


やがて僕も古くなって
壊れてしまう時が来る

思い出も全部
地上から消え去ってしまって

ただ、許してもらえるなら
このフレーズだけは
君のところまで
持って行くつもりなんだよ

口ずさむために
声を合わせるために


ラララララ...
ラララララ...

ラララララ...
ラララララ...

抽象絵画

2008-01-19 04:22:25 | ある『物語』の断片
前を見るともなく
後を見るともなく

上を見るともなく
下を見るともなく

外を見るともなく
内を見るともなく

全体を見るともなく
部分を見るともなく

短期的でもなく
長期的でもなく

繋がりがある
わけでもないのに
繋がりを絶やさないように

主張がある
わけでもないのに
筆者を感じられるように

破壊的である
わけでもないのに
心をつかんで放さないように

あたかも
単に現実の姿をとらえて
描ききってしまったかのように

私と
あなたの願望の姿をとらえて
描ききってしまったかのように

誰も寄せ付けないようでいて
誰もかも包み込んでしまうように


その絵と
筆者の存在そのものが
とても不安定であることを
示唆しつつも

その絵は
奇跡のように存在していた

あとは誰もが
自分の物語を
その絵に補完して

完成させるだけ