「大丈夫か?」
「…何が?」
アトラクションを降りてからレイは不機嫌そうな顔をしている。隣で叫んでいてくれたら怖かったんだなと思えるけれど、乗っているときもずっと眉をしかめたままだ。
「次、何にする?」
コースター系はお気に召さないのだろうか。のんびり見て回るものを地図で探していると、組んでいたレイの腕が離れた。
「あの、浮き沈みのないやつで」
顔がものすごく“嫌”を物語っていた。何だろう、浮き沈みっていうことは高いところは大丈夫ということだろうか。
「苦手だった?」
「苦手って言うより…いえ、無理じゃないけれど」
妖魔だろうが悪霊だろうがヒールで蹴飛ばす度胸があるのだから、あれくらい単純に楽しいレベルだろうに。案外三半規管は弱いのだろうか。
(レイの苦手を発見なんて、ある意味特したのかな?)
はるかはやさしく背中をさすってやった。綺麗にまとめた髪を撫でると、さっきのアトラクションの風のせいか、すこしだけぱらっと落ちる。
「じゃ、お城の中を冒険するツアーみたいなやつは?」
「乗り物?」
「いや、歩いてみてまわるやつだよ」
レイは幾分かしかめていた眉を元に戻してくれた。自分の弱みを握らせたくないというのは、戦士としてはいい心がけだとは思うけれど。
「そう。楽しそうね」
目は笑っていないけれど、がんばっているレイに情けは逆効果だろうと感じた。
「あー、そう言えばレイちゃんって船酔いするんだよね」
いつまでも居座る美奈子を追い返す理由がないみちるは、あぁ、そういえばと返事を返した。せっかくの休日だからどこかへお出かけしてもよかったけれど、美奈子と二人でそんなことしてもお互いに気になるのは、片割れが行っているプレゼントデートだ。家でおとなしく帰りを待つのが一番心にとってはいい。
「レイ、確か船上パーティにはいつも来ないわね」
「うん」
「船酔いねぇ。三半規管が弱かったかしら?車は平気そうだけれど」
「確か横揺れっていうより上下にこう波波に揺れるのが無理らしいわよ」
「変わった子ね」
「大丈夫かな。あそこのテーマパークって7割くらいそういうやつでしょう」
「自己申告するでしょう、いくらなんでも」
「だよね」
レイがいっぱいいっぱいのとき、二人はそんな会話をしていた。
「ねぇ、はるかさん」
「何?」
何人かのグループに分かれて、お城の中を歩き回り悪いものを退治するというアトラクションから出てきたレイは、何か悩みを抱えているようだった。目が真剣だ。
「あの、光線を出していた機械があるでしょう?」
「あ?あぁ」
「まぁ、あの化け物はおもちゃだって言うことくらいはわかるけれど」
「うん」
「あの光線は本物?」
おっと。ある意味すごい。幼稚園レベルとまではいかないけれど、要するにレイはアトラクションの構造をわかっていないらしい。この場合はどうするべきだろう。子供なら夢を壊さないように自分たちが悪者をやっつけたんだよ、とかいえるけれど。それはさすがに馬鹿にしていることになるだろうし。
「たんなるレーザーじゃないかな?僕もわからないけれど」
「そうよね」
はるかはアトラクションのお姉さんに貰ったメダルをはずしながら、やれやれと苦笑いした。興味津々のレイが立候補しないなーと内心笑っていたが、まさか変わりに自分の手を持って勝手に上げさせるとは思わなかった。というか、やりたいならやればよかったのに。
「こういうのなら、楽しいだろ?」
楽しいを素直に認めないレイは、別に。なんていいながらぷいっと目を逸らした。
「…何が?」
アトラクションを降りてからレイは不機嫌そうな顔をしている。隣で叫んでいてくれたら怖かったんだなと思えるけれど、乗っているときもずっと眉をしかめたままだ。
「次、何にする?」
コースター系はお気に召さないのだろうか。のんびり見て回るものを地図で探していると、組んでいたレイの腕が離れた。
「あの、浮き沈みのないやつで」
顔がものすごく“嫌”を物語っていた。何だろう、浮き沈みっていうことは高いところは大丈夫ということだろうか。
「苦手だった?」
「苦手って言うより…いえ、無理じゃないけれど」
妖魔だろうが悪霊だろうがヒールで蹴飛ばす度胸があるのだから、あれくらい単純に楽しいレベルだろうに。案外三半規管は弱いのだろうか。
(レイの苦手を発見なんて、ある意味特したのかな?)
はるかはやさしく背中をさすってやった。綺麗にまとめた髪を撫でると、さっきのアトラクションの風のせいか、すこしだけぱらっと落ちる。
「じゃ、お城の中を冒険するツアーみたいなやつは?」
「乗り物?」
「いや、歩いてみてまわるやつだよ」
レイは幾分かしかめていた眉を元に戻してくれた。自分の弱みを握らせたくないというのは、戦士としてはいい心がけだとは思うけれど。
「そう。楽しそうね」
目は笑っていないけれど、がんばっているレイに情けは逆効果だろうと感じた。
「あー、そう言えばレイちゃんって船酔いするんだよね」
いつまでも居座る美奈子を追い返す理由がないみちるは、あぁ、そういえばと返事を返した。せっかくの休日だからどこかへお出かけしてもよかったけれど、美奈子と二人でそんなことしてもお互いに気になるのは、片割れが行っているプレゼントデートだ。家でおとなしく帰りを待つのが一番心にとってはいい。
「レイ、確か船上パーティにはいつも来ないわね」
「うん」
「船酔いねぇ。三半規管が弱かったかしら?車は平気そうだけれど」
「確か横揺れっていうより上下にこう波波に揺れるのが無理らしいわよ」
「変わった子ね」
「大丈夫かな。あそこのテーマパークって7割くらいそういうやつでしょう」
「自己申告するでしょう、いくらなんでも」
「だよね」
レイがいっぱいいっぱいのとき、二人はそんな会話をしていた。
「ねぇ、はるかさん」
「何?」
何人かのグループに分かれて、お城の中を歩き回り悪いものを退治するというアトラクションから出てきたレイは、何か悩みを抱えているようだった。目が真剣だ。
「あの、光線を出していた機械があるでしょう?」
「あ?あぁ」
「まぁ、あの化け物はおもちゃだって言うことくらいはわかるけれど」
「うん」
「あの光線は本物?」
おっと。ある意味すごい。幼稚園レベルとまではいかないけれど、要するにレイはアトラクションの構造をわかっていないらしい。この場合はどうするべきだろう。子供なら夢を壊さないように自分たちが悪者をやっつけたんだよ、とかいえるけれど。それはさすがに馬鹿にしていることになるだろうし。
「たんなるレーザーじゃないかな?僕もわからないけれど」
「そうよね」
はるかはアトラクションのお姉さんに貰ったメダルをはずしながら、やれやれと苦笑いした。興味津々のレイが立候補しないなーと内心笑っていたが、まさか変わりに自分の手を持って勝手に上げさせるとは思わなかった。というか、やりたいならやればよかったのに。
「こういうのなら、楽しいだろ?」
楽しいを素直に認めないレイは、別に。なんていいながらぷいっと目を逸らした。