先日、“本別イチャルパ”を見学するため、本別町上本別生活館に行ってきた。主催は、本別イチャルパ実行委員会。帯広カムイトウウポポの会のほか、阿寒アイヌ協会、平取アイヌ協会など多くの参加者があり、20年ぶりで復活されたそうだ。
イチャルパは、アイヌ民族の生活に根ざした重要な儀式だが、地元では具体的な作法などを知る人が少なく長らく途絶えてきた。今回は本別出身者がいる阿寒アイヌ協会などの協力を得て実現した。本別アイヌ協会では、次世代に継承する「本別イチャルパ」として残していきたい考えだ。
イチャルパは、アイヌの儀式として火の神へ祈りをささげる「カムイノミ」と並んで、祭具などを使って先祖の霊を弔うものである。本別では2001年に開催されたが、イチャルパに関する文献や資料は残されておらず、祭具の作り方や作法などを知る人もほとんどいないのが現状であった。
現在、本別アイヌ協会の会員は20名、本別町在住者は13名だという。本別町においても北大教授だった知里真志保氏がいうアイヌ系日本人は多数いるが、本会でも若い人の会員が少ないらしい。小川哲也実行委員長は、子供たちの姓名を苗字ではなく名前で呼んでいたが、そのくらいアイヌ民族は人と人とのつながりが強いということだろう。なお、実行委員長のご挨拶は、以下のとおりであった。
『 本日は、アイヌ民族儀式「イチャルパ」にご参加を賜りまして、誠にありがとうございます。この儀式は九神の自然神を奉じ、アイヌ民族の伝統儀式「カムイノミ」(神への祈り)及び「イチャルパ」(先祖供養)を執り行うものです。カムイノミは、狩猟及び量の安全と日々の生活の安泰を祈るために行なうものです。古来、歴代のエカシ(長老)たちによって、若者たちへと伝承されてきたものですが、現在はこうした風習は途絶えたために、儀式を行なうことは難しくなりました。
本儀式は、アイヌ文化の伝承と啓発のために、阿寒アイヌ協会、阿寒アイヌ民族文化保存会で行われている儀式を参考に取り組むものです。いずれ自分たちで執り行なう趣旨のもとに、主要な役を地元の者が行なうこととし、学習しながら進めてまいりますので、ご理解とご協力をお願いいたします。
イチャルパは本来、各家庭の幣場(ぬさば)で行われてきましたが、現在ではそのような家庭はほとんどありません。古式舞踊・奉納舞踊と併せて文化の伝承として取り組んでまいります。本日は、私たちアイヌ民族が、ペウレウタㇻ(若者達)、そしてカチウタㇻ(子供達)へと語り継ぎ、発展していかなければならないアイヌ民族の文化の一端に接していただき、私たちの持つ自然観の一部でも感じ取っていただき、ご理解を賜れば幸いです。ご参加いただきましたウタリ(同胞)と共に、民族儀式を執り行えることを心から感謝いたします。イヤイライケレ(ありがとうございました)』
「十勝の活性化を考える会」会員