十勝の活性化を考える会

     
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「アイヌ民族の復権」の本

2020-02-08 05:00:00 | 投稿

 

先日、貝澤耕一など共著「アイヌ民族の復権」〜先住民族と築く新たな社会〜の本に、以下のような興味深いことが書かれていた。

 【二風谷ダム判決】

  『二風谷ダム裁判の判決は、1997年3月27日に下った。その前日の1997年3月26日の夜、私は弁護団の先生と最後の打合せを行なった。私も、弁護団も「棄却と言えば良いが、却下だろう」と覚悟していた。

時代も時代、私たちの訴えは退けられるだろうとの結論になり、判決後の記者会見の時に発表する敗訴の声明文を作り、その夜の仕事を終えて別れた。ホテルの部屋へ入り寝ようとした時、電話のベルが鳴った。ホテルは誰にも知らせていないので、不思議に思いながら受話器を取ると、何処で私の宿泊場所を知ったのか、マスコミからの電話であった。

ぶしつけな質問に、私は「おそらく負けるでしょうが、裁判所にも人の心があることを信じたいし、そのように願う」と力なく答え、眠れない夜を過ごしたのである。

 裁判当日の27日、傍聴券まで用意されていたようだが、希望者は全員が傍聴出来た様子である。

裁判長裁判官、一宮和夫氏は「主文 原告らの請求はいずれも棄却する」と読み上げた。「えっ、何が認められた」と:傍聴席はざわめき始める。裁判長は、判決理由の骨子・判決理由の要旨を読み続ける。

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国は、先住民族独自の文化に最大限の配慮をなさなければならないのに、二風谷ダム建設により得られる洪水調節等の公共の利益がこれによって失われるアイヌ民族の文化領有権などの価値に優先するかどうかを判断するために必要な調査等を怠り、本来最も重視すべき諸価値を不当に軽視ないし無視して・・・・・・・・・・・・・・・・・・

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判決の中で、アイヌ民族が先住民族と認められ、さらにアイヌ民族の領有権も認められたのである。傍聴席は裁判長の制止も届かず騒然となっていた。

裁判長は判決理由の要旨の最後を 「原告らの本訴請求をいずれも棄却するとともに本件収容判決が違法である宣言することとする」と締めくくった。傍聴席で拍手する人や、目頭を押さえる人が目立ち、私も「やった」と思うとともに、こみ上げてくるものを抑えることが出来なかった。

 二風谷ダム裁判の判決では、アイヌ民族は先住民族であること、加えてさらに重要であるアイヌ民族の文化領有権が認められた。アイヌ民族は自らの文化を領有する権利があるにも関わらず、それを妨げた二風谷ダムは、違法であるという判決が出た。

地域のアイヌ文化を、その重要性を確かめる調査も行わず、地域の住民の意思を無視してダムを作ったことは違法であるということだ。たとえ公共事業であってもその地域の文化を無視して、勝手に作ってはならないという判決である。札幌地方裁判所の判決は、被告が控訴しないと決定した時点で決定した。

 しかし、判決の中でダムは既に完成しており、解体するには、公的損失が大きいので存続を認める、と述べた。 (事情判決)

 「違法なダム」が今も二風谷地区にあり、二風谷ダムの環境の変化は、ダム内の土砂堆積(3分の2は埋まっているとも言われている)を見て分かるように人間の生活、動植物、アイヌ文化への影響は計り知れない。しかも、二風谷ダムの完成後の社会環境調査を行なおうとしないのである。つくる前ではなく、完成後の社会環境調査も重要で対策も必要なのである。

 二風谷ダム裁判で認められた文化領有権は、アイヌ民族に限らず、日本のどこにも適合する判例である。つまり、たとえ日本政府であろうが、地域の文化を勝手に壊してはならないということである。

地域の人たちが地域文化の継承が必要だと考えると、それを尊重しなければいけないという判決である。 (後略)』

 「十勝の活性化を考える会」会員

 

注) 事情判決

事情判決とは、行政処分裁決が違法だった時、裁判所はこれを取り消すのが原則だが、「取り消すと著しく公益を害する(公共の福祉に適合しない)事情がある場合」には請求を棄却できるという行政事件訴訟法上の制度のことである。

 取消訴訟について認められ、たとえば都市計画による土地収用が違法なものである場合など、それ自体を無効としてしまうと公益に多大なる損害を加えてしまう場合、行政事件訴訟法第31条には、「特別の事情による請求の棄却」として原告の請求を認容しないことができる旨の定めがある。事情判決である場合は、処分または裁決が違法である旨宣言をしなければならない。なお、この判決は中間判決で行うこともできる(同31条第2項)。訴訟費用は被告(行政主体)の負担となる。

尚、事情判決が行われた場合、原告・被告ともに上訴は可能である。原告は、違法であるにもかかわらず棄却されたのであるから上訴するに充分な理由がある。一方、被告(行政主体)においても、判決には既判力があるため、違法であると宣言された状態を是正しなければ国家賠償などといった後の争訟の判決に影響があるという理由からである。

原状回復ができないまでに事業が進んでしまったら訴えはどうなるか。学説は2つある。

  • 訴え却下説 - 訴えの利益がなくなったとして訴えを却下する。
  • 事情判決説 - 法的利益は失われないとして事情判決を行う。

最高裁判所は事情判決説に立つとされる。

なお、行政不服審査法第40条第6項にも似たような規定(事情裁決)がある。

[選挙訴訟への適用]

公職選挙法219条は、行政事件訴訟法31条の規定は準用しないとしており、選挙訴訟においては事情判決を行うことは禁止されている。

 もっとも、公職選挙法上の一票の格差についての違憲訴訟の場合は違憲とすると、全選挙区での選挙が無効とする論理が導き出される可能性があり、特に国政選挙の場合は国会議員がいなくなることで一票の格差を是正する法改正ができないまま選挙ができないという形で国会機能が停止してしまいかねないと言う特殊事情がある。そのため、事情判決の規定の適用ではなく事情判決の法理を用いるという形で「違憲であるが、選挙自体は有効」と判断することがある(最高裁判所昭和51年4月14日大法廷判決、他)。

(出典:『ウィキペディア(Wikipedia)』)

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