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私的コラム&雑記(&メモ)

MicrosoftがWindows 11を発表

2021-06-26 | 興味深かった話題

Windows 11発表。年内提供予定でWindows 10からは無償アップグレード - PC Watch

※本稿は6月24日に公開した記事に加筆・修正を行ったものです

概要

 MicrosoftがWindows 10 21H2あるいはコードネーム"Sun Valley"として開発してきたWindowsが、2015年に発表されていた「Windows 10が最後のメジャーバージョン」という前言を撤回して「Windows 11」となることが発表されたのは各メディアが報じた通り。

  • 21H2 "Sun Valley"と呼ばれてきた新バージョンWindowsはWindows 11に
  • Windows 10から無償アップグレード可能
  • ハードウェア要件が変更
  • 6カ月毎の機能アップデートは1年毎に変更(参考

アップデート方式

 個人的に最も気に入らないのが年1回への機能アップデートの変更だ。
 MicrosoftはWindows 10のリリースでAgile型の開発とWindows-as-a-Serviceというコンセプトを導入したが、後退したように見える。

 ネットを見ていると6カ月毎から1年毎への変更は好意的な感想が多いが、それは、そもそも現行のMicrosoftのやり方が悪いからであって6カ月毎の変更が悪いわけではない。
 例えばGoogle Chromeは現在約6週間毎でアップデートされており、さらに約4週刊毎に加速する計画を発表しているし、Linux Kernelは2~3カ月(約10週間)で新バージョンをリリースし続けているし、Ubuntuは6カ月毎のリリースを2004年10月から続けているが、これらのプロジェクトが開発サイクルで批難の対象となったことは無い。Chrome・Linux Kernel・Ubuntu・Windowsはそれぞれ異なる背景や機能やプロジェクト規模を持つから、一概にN週間が適切と言うつもりは無いが、1年間という期間が妥当でない/後退であることは間違い無い。

 そもそもAgile型の開発は一言で言えば「カイゼン」である。
 例えば20世紀に主流だったWaterfall型に代表される古典的な開発方式での教訓(製品開発に長期間を要し、完成した製品がユーザーの希望から大きく乖離している)を踏まえ、実装→テスト→リリース→フィードバック(計画、要求分析)のサイクルを短く(例:1~4週間)とり、それを反復することで開発の失敗を防ぐことを目的としている。より厳密に言えば開発した一部の新機能が失敗することはあるのかもしれないが、数週間の短期間で失敗を検出して軌道修正することができ、プロジェクト全体としての失敗を防止できる。

 MicrosoftはAgile型開発に移行しInsider Previewをほぼ毎週リリースしている(ということになっている)が、どうもWaterfall型開発的な考え方から抜け出せていない感じがする。というのも、Microsoftは2019年末頃から極秘裏に内部でWindows 11を開発し続けており(※)、6月24日現在で最新のInsider PreviewはWindows 11のプレビュー版ではないことが明らかになったからだ。Windows Vista/8/8.1の時もそうだったが、Microsoftが「改良」と考え年単位を費やして開発し満を持してリリースした機能やUIがユーザーから批難の大合唱で迎えられたことは一度や二度ではない。

※2019年12月に、後に"Sun Valley"・Windows 11と呼ばれる開発ブランチ(build 19536~)がWindows 10(Windows 10 19H2 build 18363~20H1 build 19043)から分岐して独立して開発されてきたことが確認されている

ハードウェア要件

 各種記事を読んでみて思ったのは単にWindows 11の見た目の違いだけでなく、ハードウェア要件の変更によるものではないかと思う。
 64-bit CPU・メモリー4 GB以上・ストレージ64GB以上といった、5年前のPCでも満たしているような内容はともかく、DirectX 12対応GPUとTPM2.0という点が意外に大きい。

 まずDirectXだが、Windows 10をインストールするとDirectX 12がインストールされるが、Windows 10の要件そのものはDirectX 9.0で、この要件は2006年登場のWindows Vistaから変更されていなかった。

3.4.2 Graphics
Devices that run Windows 10 for desktop editions must include a GPU that supports DirectX 9 or later.

 Haswell/Apollo Lake以前の世代のiGPUはDirectX 10までの対応のためWindows 11非対応となる。Haswellは2013年の登場だから、現役のCore系CPU搭載PCの多くはそれ以降のものだろうが、Apollo Lakeは2016年の登場だからそれ以前(~2015年)のBay Trail Pentium J2xx0/Pentium N35xx/Celeron J1xx0/Celeron N28xxシリーズ搭載機もWindows 11非対応となる。

 これまでの半期毎のWindows 10のアップグレードでも対応機種は微妙に変化しており、非対応機種のサポートが順次打ち切られてはいたが、今回のアップグレードでは相当数がサポート対象外となるのではないかと思う。

 次にTPMだが、TPMの概要は他誌Wikipediaを御覧頂くとして、上述のCPU/iGPUの対応/非対応とは違いTPM2.0搭載/非搭載というのが明確でないのが悩ましい。TPMは外付の小型のチップとファームウェアで提供されBIOS/UEFIでON/OFFされるため、CPUなどを見ただけでは対応状況が判別できない。ただし、TPM2.0規格が発表されたのが2014年のことなので2015年頃のPCの対応状況は怪しいとして、2014年以前のPCは全て非対応と考えた方が良さそうだ。

 以上を纏めると、2015年以降のPCの多くはWindows 11対応と思われる(ただし確認は必要)が、2014年以前のPCは全て切り捨てられるということになりそうだ。

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