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ALH84001

私的コラム&雑記(&メモ)

GPD WIN Max (2) パーツ編

2020-06-06 | ガジェット / PC DIY

 GPDの公式Twitterによると初期ロットの製造が始まったらしい。

The first batch of unit are standing by, soon you will see true reviews - GPD Game Console on Twitter

基板の写真(写真1写真2写真3)が掲載されているため、検証してみたい。ただし、基板の写真は高解像度で鮮明ではあるものの、部品上のシルク印刷が不鮮明なこともあり電子部品の正確な確認はできないが、恐らく以下のような構成と思われる。また、今回は第1ロットということもあり、将来変更される可能性はある。

GPD WIN Max

 型番不明のRealtek製コントローラーやITE製コントローラーはモデルが不明で用途も不明だが、基板上の位置や搭載され方(例:Realtek製コントローラーは周囲がシールドされている)や欠損している構成部品から推測している。
 下記のほかにも、USB Type-C/Thunderbolt周辺にはパワー系ICやHDMI Transmitterがあるはずだが、冷却ファンに隠れて詳細は分からない。冷却ファンが思いのほか大きいためM.2 SSDを換装するには恐らく丸ごと外さなければならないだろう。

Make SKU Desc
米Intel Core i5 1035G7 CPU + Integrated GPU
メーカー不明 型番不明 64 Gb (8 GB) LPDDR4X x2
米Intel AX200D2WL IEEE 802.11ac / Wi-Fi 6 無線LANコントローラー
台Realtek RTL8111 PCIe x1 1Gb Ethernetコントローラー
台Realtek 型番不明 オーディオコーデック (?)
台ITE 型番不明(IT5571 ?) Keyboard or Touch screenコントローラー (?)
台Genesys Logic GL3232 USB3.1 Gen 1 SDカードコントローラー

BIWIN (?) NS200 512GB M.2 NVMe SSD

 「NS200 512 GB」という型番・容量は読めるのだがメーカーは読むことができない。型番と容量から検索すると中BIWINなどの名前が出てくるが特定できない。480 GBの容量違いで中Lexar NS200というSSDもあるようだが2.5インチSATA接続のため違う(NVMeとSATAではプロトコルが全く異なり共通のコントローラーが無いため同一型番というのは考え難い)。恐らく他社にOEMされている中国製の実質ノーブランドSSDだと思うが、構成部品は先進国の有名ブランド製なので問題は無かろう。
 GPDによるとM.2 SSDはNVMeまたはSATA接続の片面実装品に対応するようだが、厚みのせいもあろうが、M.2スロットの下にLPDDR4Xメモリーが設置されているため発熱の問題もあろうかと思われる。

Make SKU Desc
台Silicon Motion SM2263EM PCIe Gen 3 x4 NVMe SSDコントローラー
台Nanya NT5CB(C)512M16ER-EK 256 MB DDR3 SDRAM(SSDキャッシュ)
メーカー不明 型番不明 1024 Gb (128 GB) NAND Flash x 4

GPD WIN Max (1) 動機編

2020-06-02 | ガジェット / PC DIY

 私事で恐縮だが、IndieGoGoクラウドファウンディングでキャンペーン中のGPD WIN Maxに出資したため、このデバイスについて、また私の考える運用思想について書き記しておこうと思う。

現在の環境

 まず私の現在の環境について述べておくと、私の現在の普段使いのメインPCは2012年製の"Sandy Bridge"世代Intel Core i5搭載ラップトップPCのLenovo ThinkPad X220をベースに、独自にメモリーを16GBに増量・SSDに換装・Wi-Fiを802.11nに対応させたりと近代化アップグレードして使用している。

 ThinkPad X220に搭載されているのは低消費電力Mプロセッサー(TDP 28W)で、超低消費電力のUプロセッサー(TDP 15W)と比較すると消費電力はともかく性能は高い。先日まで勤め先で使用していたラップトップに搭載されていたCore i5-6200U相手にも見劣りしないほどである。
 それでも、これまでもメインPCを買い替えることは考えたのだが先延ばしになっていた。重い処理は1Lサイズ小型デスクトップPC Lenovo ThinkCentre Tinyにリモートでログインして実行しているのでラップトップ機を高性能化する必要が薄かったし、さらに、これまで引越が多く荷物を増やしたくなかったせいだ。

GPD WIN Maxと新しい運用方法

 今回GPD WIN Maxの入手を決めたのは運用方法の見直しのためだ。
 私はエンジニアのためビジネス旅行する機会は少なく外出先でラップトップPCで仕事をしなければならない機会は稀で、プライベートの旅行ではAndroidタブレット端末で事足りてしまうので、ラップトップPCを持ち運ぶ必要すらない。
 上述の通り、私のメインPCは13インチラップトップThinkPad X220だが、実際の運用は自宅のテーブルの上に据え置きされており、自宅内で持ち運ぶことすら稀で、自宅外への持ち運びとなると2年に1度の一時帰国ぐらいのものだ。もちろん、ThinkPad X220を入手した2012年当時は重くてもPCを持ち運ぶ必要があったから入手したのであるが、約8年間もの歳月が経過しiPadのような高性能タブレットが普及し小型PCの性能が飽和している現在では状況は変わっている。

 こうなると13インチの小型だが狭いディスプレイの利点はあまり無い。
 ほとんど持ち運ばず据え置きで使うのであれば、17インチラップトップでも良いのではないか?とも考えられるが、よくよく考えてみると、自宅や一時帰国先の実家には24インチディスプレイやキーボードもあるので、USB Type-C HDMI/DP Alt Modeドックなどを介して大型ディスプレイやフルサイズキーボードに接続して簡易デスクトップPC化する方が快適だ。

小型ラップトップとしてのGPD WIN Max

 GPD WIN MaxはゲーミングPCとして宣伝されているが、2000年代前半に大学生だった私にはSony VAIO Type-UやFujitsu LOOXの再来に見える。

 特にVAIO Type-Uは外観からして酷似している。
 以下はGPD WIN Maxを2002年に登場したVAIO type-Uのスペックと比較したものだが、スペックが似通っており、一方でバッテリー寿命が延びるなど大幅に改善されていることが見て取れる。

model GPD WIN Max
Product page
Sony VAIO type U
Product page
2020 2002
display
input / output
display 8-inch H-IPS
1280 x 800
Multi-touch LCD
Corning Gorilla Glass 5
6.4-inch
1024 x 768
LCD
i/o interface HDMI 2.0 x1
Thunderbolt 3
IEEE1394 S400
storage internal M.2 2280 SSD
512 GB
NVMe
UltraATA HDD
20 GB
external MicroSD MemoryStick
battery capacity 15,000 mAh 4,900 mAh
battery life 6 - 14 hours 2 - 4 hours
  dimensions 207 x 145 x 26 mm 184.5 x 139 x 30.6 mm
weight 790 g 820 g

 2002年当時はドックなどの接続も優れたものが無く、PCとしての性能も低かったため、VAIO type-UやLOOXは超小型・軽量な代わりに遅いPCとして妥協して使うほかなかったが、GPD WIN Maxであれば、上述のようなドックで接続することで高性能な超小型デスクトップPCとして使うことができる。
 私個人はLOOX Sユーザーだったが、大学ではLOOX S・自宅では自作デスクトップPCで、データの移動が億劫だったことを覚えている。もし、GPD WIN Maxを簡易デスクトップPCとして使うのであればそもそもデータを移動させる必要性が無くなる。

ゲーミングPCとしてのGPD WIN Max

 筆者はゲーマーではないが、スペックには目を見張るものがある。GPD WIN Maxは、いわばNintendo Switch2個分の筐体に4倍の性能あるいは初代XBox Oneに近い性能を詰め込んだものだ。

    Laptop PC Gen 8 Game Console Gen 9 Portable Console
model GPD WIN Max Sony PlayStation 4 Microsoft Xbox One Nintendo Switch
2020 2013 2013 2018
display
input / output
display 8-inch H-IPS
1280 x 800
189 ppi
N/A N/A 6.2-inch
1280 x 720p
237 ppi
graphic processor internal Intel Gen 11 Iris Plus 940
64 EU (512 MADs)
300 MHz (base)
1050 MHz (turbo)

1075 GFLOPS
AMD GCN2
18 CUs (1152 MADs)
800 MHz


1840 GFLOPS
AMD GCN2
12 CUs (768 MADs)
853 MHz


1320 GFLOPS
NVIDIA Maxwell GM20B
256 cores (256 MADs)
768 MHz (docked)
465 MHz (handheld)

393 GFLOPS (docked)
236 GFLOPS (handheld)
memory system
memory
LPDDR4-3733
16 GB
128-bit width
60.0 GB/sec
GDDR5,
8 GB
256 bit-width
176.0 GB/sec
DDR3-2133
8 GB
256 bit-width
68 GB/sec

eSRAM
32 MB
1024-bit width
204 GB/s
LPDDR4
4 GB
64-bit width
25.6 GB/sec
battery capacity 15,000 mAh N/A N/A 4310 mAh
battery life 6 - 14 hours     Original model: 2.5 - 6.5 hours
HAC-001(-01): 4.5 - 9 hours
  dimensions 207 x 145 x 26 mm N/A N/A 163 x 102 x 14 mm
weight 790 g     398 g

Raspberry Pi 4

2019-06-27 | ガジェット / PC DIY

 先日、Raspberry Pi 4(RPi 4)が発表されたが、そのスペックは驚きに値するものだった。ここではそのスペックシートを見ながら説明しよう。

価格

 Raspberry Piは元々は教育向けを謳っており、これまでの価格は学生でも入手容易な$35~だったがRPi 4でも従来通り$35〜の価格が維持されている。RPi 4では従来通りの1 GBモデルに加え、2 GBモデルおよび4 GBモデルが追加されている。
 RPi 4ではRPi 3から性能面で大きな飛躍を果たしたが、興味深いのはRPi 4の性能・価格は巷に溢れる中華プロセッサー搭載ホビー用ボードをも圧倒してしまっていることだ。これまではRPiよりもスペック的に優れた中華プロセッサー搭載ボードが数多く出回っており、小型PCとして使うならばそちらの方が優れていたことは多かった。私見だがArduinoと同様にRPiは目的を持って使うボードであって性能で語られるべきものとは言い難かった(例:Google AIY、Microsoft Windows IoTなど)。
 以下は具体的な例である。搭載プロセッサーによるワークロードの得手不得手・ユーザーの利用ケースなどは様々なため単純に比較はできないが、インパクトの大きさは御理解頂けるだろう。

 SoC (CPU)RAMPrice
Raspberry Pi 4 Broadcom BCM2711
Cortex-A72 x4
2 GB $45
4 GB $55
NanoPi M4 Rockchip RK3399
Cortex-A72 x2, Cortex-A53 x4
2 GB $75
4 GB $105
Odroid N2 Amlogic S922X
Cortex-A73 x4, Cortex-A53 x2
2 GB $63
4 GB $79

SoC

 BroadcomのArm SoCのCPUはArm設計のごく一般的なコアを搭載しており特筆すべき点は特にない。注目すべきはBroadcom内製のGPU=VideoCoreだろう。RPi 1-3ではVideoCore IV(VC4)が搭載されていたがRPi 4ではVideoCore VI(VC6)にアップグレードされた。

 VideoCoreが注目に値する理由はBroadcom SoCのバックグラウンドにある。Broadcom SoCの出所はスマートフォン用SoCではなくセットトップボックス用SoCである。セットトップボックスとは例えばCATV会社が加入者宅に設置するビデオ視聴ボックスなどがそれで、最近ではAmazon FireTVなどもこれにあたる。そのためVideoCoreのグラフィックスパフォーマンスは御世辞にも良好とは言い難いが、YouTubeやPrimeVideoなどに用いられる動画フォーマットをスムーズに再生することが可能になっている。RPi 4のVC6ではVC4で未サポートとなっていた1080pおよび4K・10-bitカラーのH.265/HEVC動画が再生可能となった。

I/O

 CPUコアの刷新やGigabit Ethernetの対応が話題となりがちだが、ボードをよく観察してみると見た目とは裏腹にRPi 3からの変更が非常に大きいことが分かる。
 RPi 1-3ではSoCからUSB2.0が伸びており、これをSMSC製LAN9514/LAN9515チップセットでEthernetとUSBハブに分配していた。そのため、見た目はEthernet(RPi 3の場合は1000BASE-T)とUSB2.0 x4にも関わらず、実際の帯域は合計で480 Mbpsに過ぎなかった。RPi 4ではこれが大きく変更され、EthernetはBCM2711内蔵・USB3.0・USB2.0はPCIe x1接続・USB2.0はSoCに直接接続する接続形式となり、各インターフェースの規格上の帯域を活かせる構成となった(2019/07/07 青字部分を修正しました)。

 RPi 4RPi 3
Eth

Broadcom BCM2711 integrated
Broadcom BCM5421 PHY
1000BASE-T

Totally
1 Gbps
+ 4 Gbps
+ 960 Mbps
SMSC LAN9515 USB2.0
1000BASE-T (Up-to 300 Mbps)
Totally
480 Mbps
USB3.0 VIALabs VL805 PCIe x1
USB3.0 x2 (5 Gbps x2)
USB2.0 x2 (480 Mbps x2)
N/A
USB2.0 Broadcom BCM2711 Integrated
USB2.0 x2 (480 Mbps x2)

SMSC LAN9515 USB Hub
USB2.0 x4 (totally 480 Mbps)

OS

 RPiのOSとして知られるのはDebian GNU/LinuxをRaspberry Pi向けにカスタマイズしたRaspbianであるが、その内容はあまり知られていない。私見であるがRPi 4 4 GBモデルであればRaspbianを使う必要性を疑うべきだと思う。

 RPi 4はRPi 1より少なくとも8倍ほどは高速であるが、この間にアーキテクチャーも大きく変更されている。ところがRaspbianはRPi 1に最適化されておりRPi 4への最適化は中途半端である。RPi 1に搭載のARM1176はARMv6-A + VFPv2に基づいており、Raspbianはそれに合わせてビルドされている。普通のDebianでarmhfはARMv7-A + VFPv3なので、Raspbianはarmhfを名乗りつつもDebianのarmhfとは互換性が無い(aptリポジトリ―がDebianと別れているのもこのため)。
 他方、Armアーキテクチャーは32-bitと64-bitでハードウェア的に大きく変更されており、同じプロセッサーとソフトウェアの組み合わせでも32-bitと64-bitではパフォーマンスで15~30%の違いがあるとArmは主張している(それを裏付ける調査結果もある)。このためRPi 3 / RPi 4を活かすためにはarm64を使うことが好ましい。
 もっとも、32-bitバイナリーと64-bitバイナリーとでは後者の方がサイズが50%ほども大きくなるため、RPi 3のようなメモリー容量に制限のある組込機器では意図的に32-bitに制限する選択肢もあるが、RPi 4 2GB/4GBではメリットよりデメリットの方が大きいだろう。

 Debian armelDebian armhfDebian arm64Raspbian
Arch ARMv4 ARMv7-A ARMv8-A
AArch64
ARMv6-A
FPU N/A VFPv3 VFPv4 VFPv2

残念ながら、Raspbianではarm64版は提供されておらず、カーネルのみRPi 1用(ARMv6-A + VFPv2)・RPi 2/3用(ARMv7-A + VFPv3)・RPi 4用(ARMv7-A + VFPv3 + LPAE)から選択可能となっている。いずれの場合もUser SpaceはARMv6-A + VFPv2用である。

 RPi用arm64対応ディストリビューションとなると有名どころではUbuntuが提供しているが、後述のBSPのサポートがRaspbianに比べて不完全でボード本来の性能を活かすことができない。

BSP

 組込開発ではPCと異なりデバイス固有のドライバーが必要となるが、それが必ずしもLinux Mainlineにマージされているとは限らないし、場合によってはプロプライエタリ(つまり、将来的にも取り込まれる見込みがない)である。そこで、当該のデバイスドライバーが対応している中で比較的新しいカーネル・ファームウェア・ドライバーを持って来てビルドする。この際、Kernel SpaceとUser Spaceを結ぶのがC libraryで、基本的にUser SpaceはUbuntuでもRed Hatでも何でもいいが、User Space側に含まれるC libraryを使ってKernel Space側をビルドすることで辻褄を合わせる。

 組込プロセッサーの開発キット(ボード)に付属するソフトウェアのパッケージはBSP = Board Support Packageと呼ばれ、UbuntuやCentOSなどをベースとしたLinuxが含まれることが多いが、キモはこのカーネル・ファームウェア・ドライバーのセットである。その観点では、RaspbianはGitHubのlinuxfirmwareリポジトリ―にそれらが含まれておりBSPの変種と見做すこともできる。

 これらのドライバー・ファームウェアはRaspberry Piには含まれているが、RPi用Ubuntuにはほぼ含まれていない。SoCの項でVideoCoreについて触れたが、RPi用Ubuntuではドライバーとファームウェアが欠損しているため、その性能が活かせない状態である。


OnePlus 7 - 分析/発注編

2019-06-23 | ガジェット / PC DIY

 OnePlus 7(以下、OnePlus製品名はOP {番号}と略す。企業名はOnePlusと記す)を入手予定なので、レビューというよりは専ら記録用に書き記しておこうと思う。

OnePlus 7とはどういうスマートフォンか?

 OnePlusに関して言えば、同社は年2回の頻度で端末をリリースしておりQualcomm製のトップエンド800シリーズのプロセッサーを採用している。一方、Qualcommは年1回の頻度ハイエンドを入れ替えるのでOnePlus製端末では連続する2モデルで必然的に同じプロセッサーが採用されている(例:OP 6と6T)。OP 7/7 ProはQualcomm Snapdragon 855(SDM855。以降SnapdragonはすべてSDM表記)を採用した端末で、恐らく11月頃に登場する次世代端末も同じプロセッサーを採用すると思われる。

Snapdragon 855

 SDM835以降のQualcomm製プロセッサーは非常に紛らわしいネーミングルールを採用しているが、OP 6/6Tに採用されているのがArm Cortex-A75 x4コア+A55 x4コアであるのに対し、OP 7/7 ProではA76 x4コア+A55 4コアとなっており、CPUだけを見た場合、SDM845とSDM855の差がそのままOnePlus 6/6TとOP 7/7 Proとの差異となる。

 このA76であるが、前世代A75と比べ10%以上高速化しておりArmの車載向け(Cortex-A76AE)やサーバー向け(Neoverse-N1)にも採用されている高性能プロセッサーである。
 懸念材料は消費電力≒発熱であろう。というのも、以前ArmはA72コアの後継としてA73コアをリリースした際、ピークパフォーマンスを下げて省電力/低発熱にした結果、ピークパフォーマンスを維持できる時間が長くなりトータルでのパフォーマンスが上がったと説明していたが、A75からA76の進化はその真逆のことをしているからである。高い消費電力は発熱は車載やサーバーでは比較的問題となりにくいが、モバイルでは問題となりうる。しかし、AnandTechに掲載されたQualcommのデータを信じる限りでは消費電力あたりの性能は高そうだ。これは恐らく、製造元TSMCのN7プロセスの優秀さや、Qualcommが行ったA76 4コアを超高速な1プライムコア+高速な3コアとしたカスタマイズなど、様々な要因に起因すると思うが、Huawei/HiSilicon Kirin 980と似たベンチマーク結果を見せていることから鑑みるとArmのA76の設計やTSMC N7プロセスの優秀さが原因と見るのが妥当そうだ。

 ちなみに、先日も書いた通り、A76よりも次世代A77は明らかに高速となることが分かっており、それを搭載するであろうQualcommの次世代SDM865(仮称)は現行SDM855を凌駕することだろう。ただし、上述のQualcommとOnePlusの製品リリースサイクルから鑑みるとSDM865搭載端末が出回るのは1年ほど先のことになる。もし、OP 5/5T/6/6Tなどを既に持っている場合は来年の端末に期待することを御勧めする。

 SDM855に含まれる機能の多くは、Hexagon Tensor Accelerator(HTA)を除きSDM845の進化版・高速化版で性能は向上しているが機能は同一である。HTAはHexagon DSPに追加されたテンソル演算装置で、最近流行りのディープラーニングを使ったアプリケーションを高速化できるとされるが、現在は黎明期といった感じで今後のアプリケーションに期待したい。

カメラ

 OP 7/7 ProのウリのひとつはSony製4800万画素カメラExmor IMX586で、画素数だけなら一般的なデジタル一眼レフカメラに匹敵し、前世代OP 6Tの1600万画素の3倍に達する。一般に画素が増えると1画素あたりの素子小さくなりノイズ耐性が悪化するが、4800万画素ともなると周辺の画素で補うことで1200万画素として使うことも可能で補完は容易であろう。
 このカメラが採用されている背景には、もちろん2018年後半にSony(ほかSamsungやOmniVisionが)4800万画素センサーを供給開始したからというのもあるが、SDM845/855では3200万画素以上を扱えるようになったことも理由であろう。ちなみに、SDM845/855が対応可能な画素数は情報源によってバラバラで判然としない。間違いないのは、デュアルカメラだと2000万画素 x 2・シングルカメラだと4800万画素(Qualcomm公式では19200万画素という数字もあるが…)に対応しており、OP 7/7 Proとも4800万画素 x2のデュアルカメラという構成はプロセッサーの性能の都合上選択できなかっただろうと思われる。

 そのOP 7のカメラであるが、サブカメラとして500万画素の深度センサーを搭載しており、OP 6TやOP 7 Proとの大きな違いとなっている。OP 6Tはスペックが似た1600万画素のカメラ二基を同時に使って合成することでボケを作り出すのに使用できる。OP 7 Proはトリプルカメラで、OnePlus 7と同じ4800万画素のメインカメラに加え1600万画素センサーに13mm広角レンズ・800万画素に78mm中望遠レンズという組み合わせを切り替えて使うことで広角から望遠までの画角に対応できる。これに対し、OP 7のサブカメラは深度センサーで随分と毛色が異なる。

 この場合の深度センサーというのは、イマイチ判然としない(ToF = Time-of-Flightカメラなのか?)。深度センサーというとMicrosoftがKinectでのユーザーの距離認識に使用しているがスマートフォンで同じ使い方はできないし、スマートフォンではAppleがiPhone Xのセルフィ―側に搭載してFaceIDを実装しているがOP 7はメイン側なので認証には使えない。
 OP 7同じ使い方をしているのはHuawei Honor 20/20 Pro/20 View/P30などがあるが、複数あるカメラの1つにToFカメラを搭載している(参考:XDAでのToFカメラについての記事)。ToFカメラをスマートフォン向けにプッシュしているソニーのPR動画を見る限りではAR・VRでの使用を想定しているように見える。

Android

 OnePlus製端末に搭載されているAndroidは、中国向けのHydrogen OSと世界向けのOxygen OSの2系統が存在するが、いずれもAndroid 9.0 Pieベースとなっている。

 筆者はセキュリティー上の懸念から中国製ファームウェアは使用しないので、Lineage OSをはじめとするカスタムAndroidを使用しているが、2019年6月中旬の現時点でOP 7/7 Pro用のカスタムAndroidは存在しない。もっとも、Lineage OSではOnePlus製スマートフォン対応が活発で、OP OneからOP 6までサポートされており今後に期待したいところである。

音楽再生

 最近のスマートフォンで困るのが、3.5mmヘッドフォンジャックが廃止されていることである。OP 7もその例に漏れない。
 実はQualcommはSnapdragon 820の頃からオーディオに力を入れており、Bluetoothでは買収した旧CSRのApt-Xの統合や、SN比100dBを超えるDAC Aqusticを展開するなどしているのだが、3.5mmヘッドフォンジャックが廃止されるということはAqsticは利用できないことになる。

 そこで、一般にはUSB Type-C接続の3.5mmヘッドフォンジャックを変換するアダプターを接続してヘッドフォンを利用するわけであるが、この「変換アダプター」の実態はケーブル内に小型DACを内蔵したUSBオーディオ装置で、御世辞にも高性能・高品質とは言えない。ちなみに、この種のアダプターはOP 7には付属しないそうである。

 そこで、USB Type-C対応のモバイルDACの使用を検討する必要があるが、あまり良い機種が見当たらない。スマートフォンと同等の大きさで高性能を謳うバッテリーを搭載したものが多数見つけられるが、個人的には宅内での利用はともかく外出先で使うのに適しているとは思えない。宅内であればDAC経由でホームシアターなどに接続して視聴すればよかろうが、外出先(例:電車の中・オフィスや学校など)でそれほどの高音質は無意味だし、重さや大きさが邪魔になるだけであろう。個人的には、必要なのはUSB Type-C-3.5mm変換アダプターより一回り大きい程度の、USB電源駆動型の小型軽量USB DACである。

 小型・安価で有名なのがHiFimeDIYのTYPE C USB DACで、定評あるES9018K2Mを搭載して$69という優れモノであるが、相変わらず見た目は悲惨である。あと、スペック的に素晴らしいのはCyberDrive Clarity AuraでXMOSのDSPとCirrus CS4398 DACの組み合わせで$69という代物だが、音質の評価は賛否両論という感じである(どうやら消費電力が大きいようで、供給電力が不足すると音がプツプツ途切れるようだ)。
 ほかに日本で入手可能なものとしてはZuperDAC-SCovia Zeal Edgeなどがあるようだが、私の住む欧州での入手性は良くなさそうだ。

カラーバリエーション / ケース

 そもそもOP 7の提供地域は限られているが、英国ではMirror GreyのみでRedは中国・インドのみの提供だそうだ。筆者の場合は中国版のハードウェアに国際版のOSに書き換えたバージョンを英国の会社より入手するためRedである。筆者の場合は後述の通りケースに入れて使用するので、裸の状態でのスマートフォンの色に大きな意味はないが、ケースの隙間からはみ出す色としては赤の方が映えると思ったからである。

 OP 7の物理形状は1箇所を除いてOP 6Tと同じため、多くのアクセサリー(例:ケース、液晶保護フィルムなど)を共用できる。問題はケースで、カメラ部分の出っ張りがOP 7とOP 6Tで微妙に異なりフラッシュの位置が微妙に異なる(類似のケースの例:OP 7OP 6T)。6月上旬に発売されたばかりのOP 7と違い昨年11月登場のOP 6Tはアクセサリーが揃っているが、使えるものと使えないものがあるので注意が必要そうである。