景表法(通称。景品表示法とも。正式には不当景品類及び不当表示防止法)による、課徴金制度が導入されてからしばらくたちまして。
ちょこちょこと小さいニュースで課徴金を取られている会社が出てきているようです。
大きなところではマクドナルドのローストビーフバーガーの件でしょうか。
リンク先の消費者庁の発表によれば「あたかも、対象料理に使用されている「ローストビーフ」と称する料理には、ブロック肉(牛の部分肉を分割したもの)を使用しているかのように示す表示をしていた。」にも関わらず「成形肉(牛赤身のブロック肉を切断加工したものを加熱して結着させて、形状を整えたもの)を使用していた。」とのことでした。
成形肉については度々問題になっていますね。
最初は2005年くらいでしたかね。フォルクスでステーキと言いながら成型肉を出していたという。
まぁ、当時外食産業で「ステーキ」についての明確な定義もなく、安くステーキを提供するにはどうしたら、と、肉をつなぎ合わせてステーキっぽくして出した結果、それをわざわざ書かなきゃいけないとは思わなかった、というのが当時のお話だったと思います。
一瞬問題になった時は他の企業も頑張って気にするっぽいんですが、ある程度経つと忘れられて別の会社が問題を起こす、ということがしばしばあるような気がします。
全く同じ間違いは流石にないと思うんですけど、マクドのイメージCMみたいなものとか、商品設計などなど、色々なアプローチで問題が起こります。
閑話休題。
景表法で問題になった企業は課徴金を課されます。
それを見て「国に納めるんじゃなく、被害者である消費者に返せよ!」と怒っている人をみました。
じつは、消費者に返金をすることで、課徴金を減額する制度があります。(さらに言えば返金額が課徴金を越えたら課徴金を取られなかったはず)
罰金を作って抑止すればいい、ということではなく、消費者を救済しようという考えが盛り込まれているんだと思います。
が、実際は返金しないで課徴金をずばっと払って終わりにしているんじゃないかなって思います。
消費者への返金を行うにしろ課徴金を払うにしろ、お金が出ていくことに変わりがないなら、消費者の心理への働きかけとして返金を行った方がいいのでは?という気がします。
だが、実際そういった企業は多分今後も殆どでないでしょう、なぜか。
まず、返金作業そのものが面倒くさい。
課徴金を減額してもらうにあたっては、制度に沿って返金手続きを進めなければならないので、計画・報告など面倒が考えられる。
返金をするにあたり、対応が遅ければ却って消費者の不興を買う恐れがあるため、それ相応の人員を確保する必要がある。
個人情報等を扱うことになるため、それなりの行動が必要になる。(来たばかりのバイトにやってくれ、では済まされない可能性が高い)
返金するのにクオカードなどを使う可能性もあるが、振り込みなどにするのであればもっと手間がかかる。
多数の問い合わせなどが発生するので対応窓口を準備しなければならないし、窓口で多くの苦情を受けて対応要員のストレスが半端ない可能性が高い。
対応の些末な内容にでも問題があれば更に消費者の反感を買う恐れもある。
(クレーマーみたいな人に対して、うっかり末端の人間が迂闊なことを発言したらSNSで炎上などなど・・・)
と、ちょっと素人が考えただけで壮絶な面倒さ&イメージ回復に失敗・むしろ追加で問題が発生する可能性まで秘めている。
次に、課徴金を課された企業が消費者のイメージをそもそも気にしないパターンが割と多く存在する、ということです。
大きな企業の場合は報道が大きいですが、小さな企業の場合はそもそも報道自体が殆どされていません。
また、訳のわからないそもそも根拠が無いような健康食品を聞いたことのないような名前の企業が売って、その際に問題があって課徴金が課された場合に、そもそもその企業が失うものは相当少ないでしょう。
信頼と信用で成り立っている大手の食品会社とは違い、そういう悪徳な企業も存在しうると思います。
昔はTVCMや街頭ポスターなどの、やり始めるのも差し替えるのもお金がかかる広告媒体が多かったですが、今はウェブで簡単に差し替えられる広告も多いですし、ウェブ上の広告の取締は相当難しいでしょう。
現代はウェブで過激なウソ広告をして売り逃げる企業が多いのではないかなと思います。
そういった企業が、課徴金を課せられた途端に自社のイメージを気にして返金対応するか?と言えば、しないと思います。
見つかったら運が悪かった程度に思って、さっとお金を払って対応を終わらせる企業が一定数存在するように思います。
最後に、課徴金を命じられた際に不服がある、というケースが一定数あるのでは、と思います。
課徴金を言い渡された場合に、不服を申し立てることが出来ます。
裁判で一審有罪になったからと言って諦めず、控訴する、みたいなものですね。
因みに不服申し立てによって、課徴金の取り消しが発生した企業が実際あったようです。(因みに景表法は食品業界だけの話ではないので、食品業界の現状はわかりません・・・)
不服申し立てが認められず、課徴金の取り消しが発生しない場合でも、企業として「自分たちはきちんとやったはず」という状態であれば、消費者に対して返金を行うというのは難しいと思います。
悪いと思っていないのか、と思われる人がいるかもしれませんが、科学的な内容というのは、簡単に白黒つけられる状態でも無い、ということが多いです。
例えば、小さな試験管の中では同じ現象を繰り返し安定的に発生させることは可能かもしれませんが、実際の暮らしの中で使われる商品の効果を確かめるにあたって、実験の条件が適切であったか?みたいな議論になると、判断が難しい状況は沢山出てくると思います。
例えば、先のステーキの例でいえば、「定義がないものについて、消費者がどういうイメージを持っているのかを誰が決めるのか」というのもありますね。
昔から行われていることについても、どこまで古ければ慣例として認められるのか、などもあるかもしれません。
消費者へのイメージを気にする程度の大きな企業であれば、日頃から消費者に誤認させないような根拠の収集や調査を行っている企業も多く、指導されたときにすんなり「違法だったと思います」と言うような内容ならそもそも出さないことが殆どではないでしょうか。
そういう意味ではマクド何やっているんだと思いました。
まぁ、本当に消費者の救済を掲げるのであれば、課徴金は返金が上手く動かなかった場合に課す、補助的な制度にするという考えもあったのかもしれませんが。
理想論は兎も角として、結局ある程度の実効性がないと難しいというのは、どの法律でも言えるのかなと思います。
これからしばらくはネットでやりたい放題やっていた小さな企業がターゲットになっていくような気がしますが。
それらが一通り落ち着いたあと、危なくなるのは、最近健康食品に手を出し始めた製薬会社かなと思ったりします。
というのも、食品会社は昔散々エビデンスがあっても効能効果が言えない、という状況を味わってきて、そこからの様々な健康食品制度の発展を見てきているので、ある意味、ある程度のノウハウ、みたいなものが蓄積されていると思うんですよ。
一方製薬メーカーは、健康食品に対応するための成分を探したり、該当成分に関する論文などの収集能力は食品メーカーより高い可能性はあります。
しかし、そこから先の、広告手法などについては、食品業界の企業よりも認識が足りない可能性もありますし、健康食品関係の業界団体などとのかかわりもそこまで深くなくて、敢えて誰もやらないところを踏み抜いてしまいそうで怖いですよね。
既に「製薬メーカーだから」「製薬メーカーが手がける」みたいな、自社の地位を推していく宣伝手法がオッケーなのかしらと個人的には思うんですけど…
実際には健康食品を作っているのは健康食品のOEMを手掛ける企業が殆どでしょうし、多くの健康食品でない企業が手がける健康食品には、健康食品専門のコンサル企業がついていることが多いのでしょうから、大手でそんなヘマをやらかす会社はそうそうないはず、とも思うんですけどね。
(因みに製薬メーカーは、薬事法の改正によって、業許可関係が厳しくなったので、ある程度資金力がない企業は軒並みつぶれたりしていた時期があったはずで、あまり細々した会社は生き残れなかったはず)
ちょこちょこと小さいニュースで課徴金を取られている会社が出てきているようです。
大きなところではマクドナルドのローストビーフバーガーの件でしょうか。
リンク先の消費者庁の発表によれば「あたかも、対象料理に使用されている「ローストビーフ」と称する料理には、ブロック肉(牛の部分肉を分割したもの)を使用しているかのように示す表示をしていた。」にも関わらず「成形肉(牛赤身のブロック肉を切断加工したものを加熱して結着させて、形状を整えたもの)を使用していた。」とのことでした。
成形肉については度々問題になっていますね。
最初は2005年くらいでしたかね。フォルクスでステーキと言いながら成型肉を出していたという。
まぁ、当時外食産業で「ステーキ」についての明確な定義もなく、安くステーキを提供するにはどうしたら、と、肉をつなぎ合わせてステーキっぽくして出した結果、それをわざわざ書かなきゃいけないとは思わなかった、というのが当時のお話だったと思います。
一瞬問題になった時は他の企業も頑張って気にするっぽいんですが、ある程度経つと忘れられて別の会社が問題を起こす、ということがしばしばあるような気がします。
全く同じ間違いは流石にないと思うんですけど、マクドのイメージCMみたいなものとか、商品設計などなど、色々なアプローチで問題が起こります。
閑話休題。
景表法で問題になった企業は課徴金を課されます。
それを見て「国に納めるんじゃなく、被害者である消費者に返せよ!」と怒っている人をみました。
じつは、消費者に返金をすることで、課徴金を減額する制度があります。(さらに言えば返金額が課徴金を越えたら課徴金を取られなかったはず)
罰金を作って抑止すればいい、ということではなく、消費者を救済しようという考えが盛り込まれているんだと思います。
が、実際は返金しないで課徴金をずばっと払って終わりにしているんじゃないかなって思います。
消費者への返金を行うにしろ課徴金を払うにしろ、お金が出ていくことに変わりがないなら、消費者の心理への働きかけとして返金を行った方がいいのでは?という気がします。
だが、実際そういった企業は多分今後も殆どでないでしょう、なぜか。
まず、返金作業そのものが面倒くさい。
課徴金を減額してもらうにあたっては、制度に沿って返金手続きを進めなければならないので、計画・報告など面倒が考えられる。
返金をするにあたり、対応が遅ければ却って消費者の不興を買う恐れがあるため、それ相応の人員を確保する必要がある。
個人情報等を扱うことになるため、それなりの行動が必要になる。(来たばかりのバイトにやってくれ、では済まされない可能性が高い)
返金するのにクオカードなどを使う可能性もあるが、振り込みなどにするのであればもっと手間がかかる。
多数の問い合わせなどが発生するので対応窓口を準備しなければならないし、窓口で多くの苦情を受けて対応要員のストレスが半端ない可能性が高い。
対応の些末な内容にでも問題があれば更に消費者の反感を買う恐れもある。
(クレーマーみたいな人に対して、うっかり末端の人間が迂闊なことを発言したらSNSで炎上などなど・・・)
と、ちょっと素人が考えただけで壮絶な面倒さ&イメージ回復に失敗・むしろ追加で問題が発生する可能性まで秘めている。
次に、課徴金を課された企業が消費者のイメージをそもそも気にしないパターンが割と多く存在する、ということです。
大きな企業の場合は報道が大きいですが、小さな企業の場合はそもそも報道自体が殆どされていません。
また、訳のわからないそもそも根拠が無いような健康食品を聞いたことのないような名前の企業が売って、その際に問題があって課徴金が課された場合に、そもそもその企業が失うものは相当少ないでしょう。
信頼と信用で成り立っている大手の食品会社とは違い、そういう悪徳な企業も存在しうると思います。
昔はTVCMや街頭ポスターなどの、やり始めるのも差し替えるのもお金がかかる広告媒体が多かったですが、今はウェブで簡単に差し替えられる広告も多いですし、ウェブ上の広告の取締は相当難しいでしょう。
現代はウェブで過激なウソ広告をして売り逃げる企業が多いのではないかなと思います。
そういった企業が、課徴金を課せられた途端に自社のイメージを気にして返金対応するか?と言えば、しないと思います。
見つかったら運が悪かった程度に思って、さっとお金を払って対応を終わらせる企業が一定数存在するように思います。
最後に、課徴金を命じられた際に不服がある、というケースが一定数あるのでは、と思います。
課徴金を言い渡された場合に、不服を申し立てることが出来ます。
裁判で一審有罪になったからと言って諦めず、控訴する、みたいなものですね。
因みに不服申し立てによって、課徴金の取り消しが発生した企業が実際あったようです。(因みに景表法は食品業界だけの話ではないので、食品業界の現状はわかりません・・・)
不服申し立てが認められず、課徴金の取り消しが発生しない場合でも、企業として「自分たちはきちんとやったはず」という状態であれば、消費者に対して返金を行うというのは難しいと思います。
悪いと思っていないのか、と思われる人がいるかもしれませんが、科学的な内容というのは、簡単に白黒つけられる状態でも無い、ということが多いです。
例えば、小さな試験管の中では同じ現象を繰り返し安定的に発生させることは可能かもしれませんが、実際の暮らしの中で使われる商品の効果を確かめるにあたって、実験の条件が適切であったか?みたいな議論になると、判断が難しい状況は沢山出てくると思います。
例えば、先のステーキの例でいえば、「定義がないものについて、消費者がどういうイメージを持っているのかを誰が決めるのか」というのもありますね。
昔から行われていることについても、どこまで古ければ慣例として認められるのか、などもあるかもしれません。
消費者へのイメージを気にする程度の大きな企業であれば、日頃から消費者に誤認させないような根拠の収集や調査を行っている企業も多く、指導されたときにすんなり「違法だったと思います」と言うような内容ならそもそも出さないことが殆どではないでしょうか。
そういう意味ではマクド何やっているんだと思いました。
まぁ、本当に消費者の救済を掲げるのであれば、課徴金は返金が上手く動かなかった場合に課す、補助的な制度にするという考えもあったのかもしれませんが。
理想論は兎も角として、結局ある程度の実効性がないと難しいというのは、どの法律でも言えるのかなと思います。
これからしばらくはネットでやりたい放題やっていた小さな企業がターゲットになっていくような気がしますが。
それらが一通り落ち着いたあと、危なくなるのは、最近健康食品に手を出し始めた製薬会社かなと思ったりします。
というのも、食品会社は昔散々エビデンスがあっても効能効果が言えない、という状況を味わってきて、そこからの様々な健康食品制度の発展を見てきているので、ある意味、ある程度のノウハウ、みたいなものが蓄積されていると思うんですよ。
一方製薬メーカーは、健康食品に対応するための成分を探したり、該当成分に関する論文などの収集能力は食品メーカーより高い可能性はあります。
しかし、そこから先の、広告手法などについては、食品業界の企業よりも認識が足りない可能性もありますし、健康食品関係の業界団体などとのかかわりもそこまで深くなくて、敢えて誰もやらないところを踏み抜いてしまいそうで怖いですよね。
既に「製薬メーカーだから」「製薬メーカーが手がける」みたいな、自社の地位を推していく宣伝手法がオッケーなのかしらと個人的には思うんですけど…
実際には健康食品を作っているのは健康食品のOEMを手掛ける企業が殆どでしょうし、多くの健康食品でない企業が手がける健康食品には、健康食品専門のコンサル企業がついていることが多いのでしょうから、大手でそんなヘマをやらかす会社はそうそうないはず、とも思うんですけどね。
(因みに製薬メーカーは、薬事法の改正によって、業許可関係が厳しくなったので、ある程度資金力がない企業は軒並みつぶれたりしていた時期があったはずで、あまり細々した会社は生き残れなかったはず)