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消費生活アドバイザーが食品表示をわかりにくく解説するブログ

消費生活アドバイザーが、食品表示を、妄想や推測、人から聞いた噂などを交えて、わかりにくく解説していきます。

景品表示法のさじ加減が難しい

2017-03-07 19:43:35 | 表示に関する話題
景品表示法がクローズアップされたのは、有名ホテルでのメニューの表示が問題になったのが原因だったかと記憶しています。
そのはるか前にも、某外食チェーン店で、成型肉を「ステーキ」として顧客に提供して問題になっていたと思うのですが。
あまり大きく報道されなかったせいか、同じ轍を踏んだ業者が沢山いたようです。
見せしめ良くない!という意見もなくもない現代ですが、見せしめにすることによって違法行為に気付く中小企業もいるかもしれませんので、見せしめ行為にも一種の効能があるのかなぁ、などと思います。
成型肉の他に、バナメイエビなのに芝エビと述べたり、ロブスターを使っているのにイセエビと書いたり、などなど、消費者もビックリの行為が行われていました。
とはいえ、まぁ、昔々は、供給できなくなったら代替品、というのは平然と行われていた行為で、例えば片栗粉、なんて、元々はカタクリという植物からとっていたでん粉でしたが、とれないくなって馬鈴薯でん粉に中身を変えたけど、用途は変わらないからずっと片栗粉という名前で売っていますね。
ただ、昔と違って、必需品で行われる代替行為ではなく、儲けの為に行われる代替行為が増えてきましたので、業界ではそれが通説だとしても、やっぱり駄目でしょう、ってことでしょう。

景品表示法の難しいところは、食品表示法のように「○○を表示しなさい」といった義務表示を定めたものではない、ということです。
義務表示や表示方法が定められているならば、その通りにしておけば良いのです。
しかし、景品表示法は、商品、陳列や宣伝全てを総合的に判断して消費者が誤認しないかどうか、という、事業者にとってはあやふやこの上ないものなのです。
かつ、「ちょっとでも良く言ったらだめ」という訳ではなく「パッフィングの範囲を超えて」という「常識的に考えろ」という常識とは何かという哲学的な問題をはらんでいます。

消費者にとってみれば
「事業者が沢山情報を持っていて、全部教えてくれるわけじゃないんだから、お前ら自分で判断しろ」
っていう話なんですが。
情報を持っているからといって、まともな判断ができるかどうかというと、それはまた別の問題なんですよね…。
自分のところの事業にばかり目をやってしまって、いかに周りの見えていない人達が広告文句を作っているか…という…。

かといって、偉そうに説明してくれる人が消費者感覚を持っているかというと、それもまたわからない部分がありまして…。
例えば、消費者庁が「メニュー・料理等の食品表示に係る景品表示法上の考え方について(案)」に関する意見募集の開始についてというのを出していたんですけど。
私はこの中で「えっ…」と思ったのが下記のQ&Aです。
引用開始------
Q-19トビウオの卵を使用した料理なのですが、「レッドキャビア」と表示しても問題ありませんか。
A 表示の仕方によっては問題となります。
------引用ここまで
いやいや、ドビウオの卵にレッドキャビアは駄目でしょう、と私は思いました。
現に昔私の母親はキャビア風のトビウオの卵を騙されて買ってしまったことがあります。
表示の仕方によっては、と言わず、トビウオの卵にキャビアと書いたらアウトでしょ、と思ったら、案でなくなったものには「レッドキャビア」の記載は消えていました。
最初に考えた人は表示の仕方によっては問題ないと考えていた訳ですが、ご意見募集によって消えたということは、消費者感覚ではなかった、ということなのでしょう。

他にも、フレッシュオレンジジュースというと、しぼりたてを連想するけれど、安居酒屋で100円程度のオレンジジュースに「フレッシュオレンジジュース」と付けたからといって、絞りたてが出てくるとシチュエーションから消費者が誤認するとは考えにくい、といったご意見を伺ったこともありますが、「安くても良い物が出てきて然るべき」といった方もいらっしゃるので、どうだろう、と思った記憶があります。
ていうか、フレッシュなジュースが出せない場末の居酒屋ならそもそもメニューにフレッシュオレンジジュースと付けなければ良いだけだろうに…と思います。

現状としては、あからさまにダメだろうという偽装レベルのものが摘発されていくことでしょう。
○○産とかいているけれど、実際は××産だった、とか、ブランド肉使用と記載していたけれど、実際は使用していなかった、などなど。
ただ、そういった「明らかな偽装」ではない、誇大広告、については、なかなかさじ加減が難しい気がします。
受け手の消費者も多種多様ですし、全体的にみてこう判断しました、と言われたときに「その発想はなかった」と事業者側がなる可能性もあり。
まぁ、良いと誤認させた時点で、故意・過失を問わず事業者が悪となるので、消費者サイドの方はご安心なさってください。
そして、事業者サイドのかたは…頑張ってください!(丸投げ)

アレルギー表示の話をしようと思う。

2017-03-04 12:13:09 | 表示に関する話題
アレルギーが表示されるようになってから、十数年経ったでしょうか。
今日はアレルギー表示の話をしようと思います。

さっそくやる気をそぐかのように、過去を振り返ります。
最初は計24品目からのスタートでした。
当時は義務表示が5品目、乳、小麦、そば、卵、落花生。
推奨表示が19品目、あわび、イカ、いくら、エビ、オレンジ、カニ、キウイフルーツ、牛肉、くるみ、さけ、さば、大豆、鶏肉、豚肉、まつたけ、もも、やまいも、りんご、ゼラチン。
やがてバナナが推奨表示に追加され。
続いてエビ、カニが義務表示化され。
続いてゴマ、カシューナッツが推奨表示に追加され。
現在は計27品目が対応です。
義務表示が7品目、乳、小麦、そば、卵、落花生、エビ、カニ、
推奨表示が20品目、あわび、イカ、いくら、オレンジ、キウイフルーツ、牛肉、くるみ、さけ、さば、大豆、鶏肉、豚肉、まつたけ、もも、やまいも、りんご、ゼラチン、バナナ、ごま、カシューナッツ
例外として、「魚介類」という表示があります。
これは、魚醤とか、魚介エキスなど、選ばれし原材料のみに表示が許されています。
やたらめったら網でとった結果分別できてないものに対して許されている表示ですね。

果たして、このアレルギー表示制度を適切に理解している人がどれほどいるのだろうか、というのが、私の疑問です。

とあるアレルギー小児科を専門とするウェブサイトに実際にあった記述として、厚生労働省が義務付けている表示として、ナッツ類、アーモンド、ハシバミ、その他もろもろ…の記載を見かけました。
これを読んだ消費者が、「ああ、私アーモンドにアレルギーあるけど、表示がない食べ物は安心して食べられるのね!」ってなったらどうするんだよ!と私は思いました。
書き方が悪いだけなのか、それとも本気でナッツ類全般が表示対象になっていると思い込んでいるのか。
後者なら猶更怖いです。食餌指導とかどうしているのかと。
これを見て質問してきた人に対して、私は「表示のことは法律を信用してください。法律を見ると、アーモンドは記載がありません。」と答えたものですが。
私はその時に思いました。
「なんで法律に書いてあることと違うことが書いてあるのに、信用してしまうのか」
ですが、それは私が法律の話をよく聞いたり調べたりしているから「日本ではナッツ類という分類はしていなくて、ナッツ関係は一部しか管理されていない」というのを半ば常識だと思い込んでいた部分がありました。
よく考えれば、法律の話など普段興味のない人間が、ものを調べようと思えば、適当に検索ワードを入れて、専門家っぽい人が法律の名前とかを持ち出して解説していると、ホイホイ信じちゃうんですよね。
一般人にとっては、医者は専門家ですので、専門家がネットで堂々と事実と異なることを書くわけがない、と信用してしまうんですね。
第一法律のどこにかいてあるのか、普段法律を読まない人にとっては非常にわかりにくいので、簡潔にまとめたサイトを信じたくなる気持ちもわかります。

だが、インターネットで拾った情報は、一歩引いて検証してほしい。

ドメインはどこなのか。
記事が記載された日時はいつなのか。
無料の情報には訳があります。
以前キュレーターサイトが問題になりましたが。
悪気があるサイトはもちろんのこと、悪意のないサイトにも、嘘、大げさ、紛らわしい、そんなことが混ざっています。
勿論当ブログもそうです。
ここで読んだことは話半分に捉えて、きちんと「管轄の省庁の」「最新の記事」を確認しましょう。
彼らはお高い給料を貰って、仕事として自分の専門の情報を提供していますので、ある程度信じても大丈夫です。(たまにびっくりするような間違いが後から訂正されたりしてましたけど)

というわけで、アレルギーの専門医ですらアレルギー表示を把握していないかもしれないことが発覚して私は驚きを禁じ得なかった訳ですが、だがしかし、それも致し方ない、と思います。

命にかかわるんだぞ、ふざけんな、というお気持ちは良くわかりますが、正直、アレルギー表示はめちゃくちゃ難しいです。
何がどう難しいのか。
添加物表示と比べてみましょう。
添加物は添加物製造業者から仕入れたものを、計量して使います。
つまり、作った人が、何をどれだけ入れたか、非常に把握しやすくなっています。
しかし、アレルギー表示はどうでしょう。
皆大好き天然由来の成分ですので、コントロールが大変難しいのです。
症状も個人差が大きく、アレルギーの専門家ではない食品メーカーにとっては荷が重すぎるとしか言いようがありません。
アレルギー自体、たんぱく質の仕業なんじゃ!と言われていますが、例えば卵などは白身のみならOK、卵黄のみならOK、という人もいて、一概にどうです!と線引きすることは専門家にも無理だと思われます。
法律を作っている人たち自体が、今後も情報を収集して、適宜法規を整備していく、と宣言している始末です。
その、よくわかっていないことを何とかして表示しなければならない。
簡単なことでないことがお分かり頂けるだろうか。

アレルギーの表示義務化は、加工食品の原材料が複雑化して、原材料を良く吟味してもアレルギーの発作が避けられないことが増えたために考えられたのでしょうか。
健康被害を防ぐための、非常に重要な表示事項となっています。
義務化が始まった頃、アレルギー持ちの方達にとっては、非常に朗報だったのだと思います。
一方その頃事業者たちは絶望に包まれていました。

なぜ、絶望に包まれたのか。
当時食品会社に勤めていた私がまず聞いた話は以下の三つでした。
・アレルギー表示が義務化されるらしい
・製造ラインを洗浄などして、コンタミネーション(入れてないはずのアレルギー食品が混ざること)を防がないといけないらしい
・含まれるかもしれない、という可能性表示は駄目らしい
3番目が絶望のポイントです。
「含まれるかもしれない」という表示を許すと、事業者は全部の品目を「含まれるかもしれない」と書いてしまう。
そのことで消費者の選択の幅を狭めてしまう可能性がある。
との理由でしたが。
事業者たちがなぜそんなに困ったのか。
それは
「製造ラインを洗浄してコンタミネーションがないようにしろと言われても限界がある」
「原料の魚の食べた餌にアレルギー表示対象のものが含まれる可能性があるが、意図して入れている訳ではないし、必ず入っているとは限らない」
まさに、「含まれる可能性がある」可能性があったためです。
結局、当局も可能性表示は認めないとしながらも「コンタミネーションについては適切に情報提供することが望ましい」みたいなふわっとした結論に落ち着いています。
消費者庁Q&A(G-3)より引用---
【注意喚起例】
○同一製造ライン使用によるコンタミネーション
・「本品製造工場では○○(特定原材料等の名称)を含む製品を生産しています。」
・「○○(特定原材料等の名称)を使用した設備で製造しています。」等
○原材料の採取方法によるコンタミネーション
・「本製品で使用しているしらすは、かに(特定原材料等の名称)が混ざる漁法で採取しています。」
○えび、かにを捕食していることによるコンタミネーション
・「本製品(かまぼこ)で使用しているイトヨリダイは、えび(特定原材料等の名称)を食べています。」
---引用ここまで
これ、可能性表示以外のなにものでもないよね、というツッコミは入れたらダメなんですよね、きっと。

ちなみに、この可能性表示、もとい、コンタミネーションの注意喚起表示について。
一時期、かまぼこにこんな表示があるよ!とイトヨリダイはえびを食べています、みたいな記載がSNSを駆け巡ったことがあります。
困惑する人も多かったようですが、かまぼこ業者たちにしてみたら割と一般的だと思うので、製造元も「なぜ今話題になったのか」と困惑した模様。
法律を知っている人にとっては凄く当り前の記載も、関係ない人にとってみれば「なんだこれ?」となってしまいます。
関係ない人、でなく、これがお子さんが重篤なエビアレルギーを発症したばかりのお母さんが理解して購入の判断材料にできるのか?と考えると…。
難しいと思います。
事業者も色々苦労していますが、消費者もきちんと理解していなければ適切な商品選択が出来ない、ということになりかねません。

さて、原料由来は仕方がないとして、製造ラインについてはきちんと洗浄しろよ!と思う人もいるかもしれません。
しかし、工場見学などに行かれたことのある方はお分かりになるかもしれませんが、工場の製造ラインは非常に複雑なものもあります。
そのすべてを洗浄し、適切に洗浄されているかを管理して、となると、ぶっちゃけ非常にお金がかかると思います。
一応大手はお金をかけてある程度やっていると思いますが。
それすらも最新の知見がでればひっくり返される可能性もあるのです。

コンタミネーションの話だけではありません。
本筋の、表示義務のあるものについても、「どこまでが表示範囲」か、というのは、実際に詳しく理解している人は少ないのではないかと思います。
例えば「乳」
私が知っている食品会社勤務の人は、乳等省令というものがあったのを知っています。
そのため、そこで対象になっているようなものが「乳」アレルギーの対象なのだろう、とぼんやり思っていたそうです。
実際、アレルギー表示が始まった頃、表示の方法として、その省令を引き合いに出して来たりしたので、ますますそのように思い込んだようです。
しかし、現実としては
乳等省令:生めん羊乳を含む
アレルギー乳:牛以外の乳は対象外(山羊乳、めん羊乳等)
めん羊の乳は、乳等省令では「乳」扱いですが、アレルギーとしては乳扱いではない、という。
鶏・豚・牛も、一部内臓は表示対象外だったりします。
みかんとオレンジは似ているけれど、温州ミカンはアレルギーオレンジの範囲には含まれません。
アレルギーとの付き合いが長い人にとっては常識なのかもしれませんが、発症したばかりの人は適用範囲に気をつけてください。
あと、事業者の人は、入れていないものを含まれていると書いたら駄目なので、やっぱり適用範囲に気をつけてください。

さて、含まれる、含まれる、と言っていますが、実際どれだけ含まれていたら表示しなければならないのか。
消費者庁のQ&A(B-1)答えの一部を抜粋です。
「食品中に含まれる特定原材料等の総タンパク量が、数μg/ml濃度レベル又は数μg/g含有レベルに満たない場合(C-3参照)、知見が不足している香料など(C-8~11参照)は表示が免除されています。」
これを初めて見たときに「数…」(絶句)となったのは言うまでもありません。
その後、職場の人達と熱い議論が始まりました。
「数マイクロってどれ位なんだ」「数日って言うと2、3日のイメージだから、2、3マイクロじゃない?」「二桁なら数十、とか十数、とかなるから、少なくとも一桁だろうね」「数マイクロって言ったら7位のイメージ」などなど、憶測が憶測を呼びました。
後々、どこかの講習会か何かで「よくお問い合わせを頂きますが、概ね10マイクロを想定しています」と聞いた時には「最初から10って書いとけよ!」と思ったものですが。
結局今日現在、最新のQ&Aでも具体的な数字を書かないのは、何か陰謀めいたものすら感じますが、実際食品表示法を作ったとき忙しすぎて細かいところを何とかする余裕などなかったのでしょう。
因みに「数マイクロ」という文章を設定したのか校閲したのか、当局側の方の反省の言葉を聞いたことがあるのですが、「数マイクロと言えば、大体10マイクロ以下だと思うだろうと考えていた。後から1マイクロ程度と考える人や、20~30マイクロと思ったという人もいて、適切に伝えるための表現は難しいと感じた。」などと述べていました。
因みにこの値についても、いつか新しい知見が出たら塗り替えられることでしょう、ていうか、塗りかえることを前提に「数」って言っているんじゃなかろうかと若干疑ってしまいますので、関係者のかた見ていたら是非なおしてください。

新しい法律、食品表示法ができ、新たなアレルギーの表示が考えられました。
しかし、5年間は猶予期間であり、昔の表示方法と、新しい表示方法の両方が世の中に流通することとなります。
旧表示と新表示、どう違うでしょう。
区別がつくように、ということで、
旧表示で最後にまとめてアレルギーを書くときは「原材料の一部に○○、○○を含む」などの表示でしたが(いくつか表示方法が混在していたようです)
新表示では最後にまとめてアレルギーを書くときは「一部に○○・○○を含む」に統一する、という話です。
これでアレルギーの人も判別がつくはず!と言われていますが、果たしてそうでしょうか。
そもそもその違いをどれだけアナウンスしているのでしょうか。
事業者も、大きな企業であれば専門の人が長々としたあの法律を紐解いてきちんと対応できるのでしょうが、小さい企業は今でもいっぱいいっぱいなのではないでしょうか。

ちなみに、新しい「食品表示法」は消費者庁の表示一元化のサイトにまとめられていますが、これを全部印刷すると枕くらいになると言われています。
http://www.caa.go.jp/foods/index18.html
我こそは!と思う方は印刷にチャレンジしてみてもいいんじゃないでしょうか。
今回の記事で引用したQ&Aの引用元は「食品表示基準Q&Aについて(平成27年3月30日消食表第140号)別添 アレルゲンを含む食品に関する表示」です。
これだけでも相当読みごたえがありますが、事業者の苦悩や、思った以上に複雑なアレルギー表示の世界を垣間見る事ができますので、オススメです!
誰かがささっとまとめたものを読むのは楽ちんですが、やっぱりその人のフィルタがかかるので、ぜひとも原文にあたってみることをお勧めします。
読みづらくてびっくりしますが、慣れてくると憶測するのが楽しくなってきますよ。

栄養成分表示なるもの

2017-02-28 20:41:07 | 表示に関する話題
食品表示法が出来て、一般消費者に販売される食品には栄養成分表示が義務付けられました。
食品事業者勤務でない知人に話したら、「やったー、楽しそう!」と言われました。
消費者団体などのキリッとした消費者と、私の身近にいる消費者の温度差は割と大きいのですが、私だけでしょうか。

さて、栄養成分表示についても、なんやかんや変遷があります。

まず、事業者が適当にしていた時代があります。
栄養がたっぷり、みたいに書いていても、具体的にどれだけ入っているかは書いていない、とかそういった頃です。
近代の表示を知っている人にはウソみたいに聞こえますが、事実です。
某麦茶メーカーのCMで「ミネラ~ルむ、ぎ、茶♪」という歌がありましたが。
当時「麦茶にはミネラルが多く含まれるから」という理由で多分あんな宣伝を打ってたんだと思います。
実際にミネラルを測定していたのか?と言われると…多分やってなかったんじゃないかな、昔は。
CMの主演?をしていた松島トモ子さんがライオンとひょうに襲われたのが1986年なので、私も流石にそんな前の事はどうだったか覚えてないです。
まぁ他にもレモン果汁を少々入れてビタミンたっぷりとか、そういった宣伝手法は取られていました。

それではイカンということになったのかどうなのかわかりませんが、栄養成分を強調するときの基準などが決められました。
含む、とか、多い、とか、低い(減塩など)とか、ゼロ(カロリー、糖質など)、とか。
そして、強調している成分とともに、主要な栄養成分の量を表示しなさい、と定めました。
その際に、表示を行うのであれば、その値について、誤差20%程度に納めなさい、という決まりができました。(項目によって許容範囲のパーセンテージは違います)
誤差範囲に収まらない場合は、○~○といった範囲表示でもOKとされています。
成分を強調していなくても、任意で表示することは可能ですが、その場合も「任意だから誤差範囲を超えてよい」ということはなく、この決まりに従って表示をおこなうこと、となっています。
この法律は最新の食品表示法ができる一つ前の法律なので、食品表示法に対応しきれていない人々はこの決まりに従うことになっています。

この決まりには問題点がありました。
誤差範囲についてですが、余りにも値が小さい時は、20%の誤差、が非常に小さい値になってしまいます。
つまり、当局が設定している誤差範囲の合理性が低いのです。
よく見かけるのが、ナトリウム0~○○㎎、というものですが、ナトリウムの値が低い中で変動するものを、誤差範囲を越えないようにわざわざ範囲表示にしている訳です。
範囲表示も、範囲に収まっていれば良いという訳ではなく、不当に幅広にしたらだめ、という決まりもあり、一層困難です。
この決まりが出来たばかりの頃は、範囲から外れているとわかれば違法ですので、事業者が表示をするには、計算し、またはサンプルをいくつか分析し、色々考慮して違法にならないよう細心の注意を払っていた訳です。
お金が無い事業者たちは、違法になっても嫌だし、コストはかかるし、ということで、表示には消極的なところが多かったです。

しかし、やがてまことしやかに「栄養成分表示が義務化されるらしい」という情報が流れます。
確かに義務化されるのですが、大体義務化の前に噂が流れます。
意見募集とかがあるんでしょうね。
そして、義務化されるなら、急に対応するのも難しいから、任意で表示をしちゃおうぜ、任意だったら誤差範囲から外れたってそうそう怒られないよ!どうせ誤差範囲も合理性ないし!義務化されたら条件も緩和されるんじゃない?みたいな発想(すみません、結構妄想です)だと思うんですけど、割と適当っぽい表示があちこちでなされ始めます。
そして、ここ十年くらいの間に、世の中の製品の多くに、特に栄養成分の強調をしていなくても、栄養成分の表示が行われるようになったのです。
違法かもしれない表示も多く見受けられますが、正直当局的にも、強調表示をしていないならいっか!みたいな雰囲気があるのかな、と思います。
特に厳しく取り締まられている様子はないです。
栄養成分が多少おかしくても、直ちに健康被害につながる訳でもないですし、普通の栄養成分表示によって何かを著しく優良に見せる、とかいうこともなく、義務化が控えていることもあって、黙認、というところでしょうか。

さて、新しく食品表示法ができましたが、そこで栄養表示の方法は二つ設定されました。表示の法律の概要について書いた時にも書きましたが。
・従来の保証型(誤差の許容範囲あり)
・推定値(合理的な根拠があれば誤差があっても仕方ない、推定値だという記載が必要)
栄養成分を強調表示したりする場合は、保証型でないとだめです。
普通に表示する場合には恐らく「推定値」となります。
表示の下に「推定値です」とか書いてあればそれは推定値ですので、誤差が何パーセントだろうと根拠さえあれば合法です。
従来の「任意だから取締られないだろう」という考えから、栄養成分を強調しようが何しようが雰囲気でやっていた企業もあるかもしれませんので、きちんと線引きをされたということは、ある意味、意義があることかもしれません。
推定値許すまじ、みたいな記事を見かけたことがありますが、過去の表示も「推定値」と書いていないだけで実態は推定した値で、同じものが表示され続けている場合が多いはずですから、いまさら感があります。
一応、合理的な根拠が求められるようになった分進歩したと思われます。


ここで、改めて考えてみたい課題が一つあります。
果たして栄養成分にいったいどれくらいの意味があるのか。

流石にビタミン何㎎、とか、鉄分何㎎とかいった表示にはある程度意味があるのかな、と思います。
と言っても、その鉄分の含まれ方による吸収率が違う、とか色々あるのでしょうが。
当局がひたすらに推してくる基本項目については、正直何か意味があるのかなーと思ってしまします。
主要項目とは、エネルギー、炭水化物、たんぱく質、脂質、食塩相当量、の5つです。

なぜ意味があるのかな、という事ですが。
これらの項目がどうやって導き出されているか、というのを知っているか知っていないかで大違いなので、どうやって導き出されているかを書いてみましょう。
栄養成分については、主に二つの考え方があります。
一つは、計算、主に文科省推しの日本食品標準成分表(現在は七訂)を利用して計算したものです。
もう一つは、分析ですが、分析方法は消費者庁の食品表示法で示されています。

どうして意味があるのかな、という発想になったかというと。
まず、分析の方から話をしたいと思う。
分析をするならば、その値は妥当性しかないように見える、一見。
そう、分析という言葉には一定の魔力があります。
実際表示の妥当性を調査するときも分析を行うので、分析で表示を決めるということの合理性は決して低くないのですが、それが消費者にとって意味があるのか、と言われると、私は疑問です。
なぜか。
分析法自体が、どうなんだ、と思うからです。
まず、たんぱく質の分析法を見てみましょう、まあいくつかあるんですけど。
メインの方法は、窒素の量を計って、そこからたんぱく質の量を推定します。
「推定します」というところが重要です。
多分相当ざっくりした値が出ているんだと思います。
私が思っているたんぱく質と違う!みたいな量が出ている可能性もあるのでは、とビクビクします。
ていうか、もはやたんぱく質、という項目自体適切なのか、という疑いすら出てきます。
脂質は油に溶ける分を計っている、水分は蒸発していった分だけ、となりますが、それって脂質・水分という名の何か別のものも交じってますよね…みたいな気持ちになります。
教育上仕方ないのかもしれませんが、この分類、実は相当ざっくりしていて意味がないんじゃないのかな!と思い始めます。
そして、炭水化物。
名前から私が想像するものは、炭素・水素・酸素で構成されるもの、です。
が、実際分析方法を読んでみると、何という事でしょう。100から他の分析成分(たんぱく質、脂質、水分、灰分)を引いたもの、それが炭水化物の正体です。
差し引き計算で残ったものは全て炭水化物と呼ばれているとかがっかりですよね。
私が思っている炭水化物とイメージが違います…。
因みに世の中のダイエッターの皆さんが親の仇のように嫌う「糖質」は、このように差し引かれただけの値である炭水化物から、分析された食物繊維の値を引いただけの、やっぱり差し引き計算で残ったものです。
糖質!糖質!と躍起になって見ているものが、実は他の成分から計算されたただの残渣みたいなものだって知ったら、ちょっと切ないですね。
こんな状態で、20%の誤差は許さないとか言われても、実際栄養なんて採った形態や人の状態で吸収率も変わってくるのにいったいどれだけの意味があるんだ…と思ってしまう訳です。
食塩相当量、つまりナトリウムの量を表示するのは、高血圧の方向けには良いと思いますけどね。

次は計算値について。
七訂が出たときに、ひじきの栄養成分が話題になったことをご存じでしょうか。
「昔は鉄なべで調理していたから鉄分が多かったが、最近は鉄なべで調理していないから、そんなに鉄分がないという結果になった」
嘘…だろ…。鉄分目当てでひじき食べてたのに…。自分で鉄なべ使えばひじき食べる必要なんてなかったんだ…!という衝撃が一般人の中に走りました。
そういうことです。
日本食品標準成分表は合理的な根拠です!と言っている割に、なんとなくサンプルを分析してみて推測した結果みたいなもんだと思います。
一般論であり、表示しているその食品が本当にそうか、と言われると、微妙。
ただ、いちいち分析していたら社会的コストが合わないので、仕方ないかな、という程度、

で、七訂を出すにあたって、追加された項目のうちに、「利用可能炭水化物(単糖当量)」というものがあります。
六訂にあたる日本食品標準成分表2010で追加された「アミノ酸組成によるたんぱく質」というものもあります。
この二つは、先に分析値の話で私が述べた「たんぱく質や炭水化物の分析値ってどうなの?」という疑問と真っ向対決してくれます。
つまり、
窒素の量からたんぱく質を推定するなんてナンセンスじゃない→過去は分析技術が低かったからね!今はアミノ酸組成を正確に測ることが出来て、アミノ酸組成によるタンパク質を計れるよ!
差し引きで炭水化物を出すなんてナンセンスじゃない→でん粉、単糖類、二糖類等を直接分析又は推計して、利用可能炭水化物を出したよ!
うん…やっぱり…あんまり現代の「たんぱく質」や「炭水化物」っていう項目は意義がないのかな、と切なくさせてくれます。

しかし、利用可能炭水化物やアミノ酸組成によるたんぱく質を、企業レベルで分析するのはコストが嵩んで仕方がないのかも。
現在の分析方法でもお金がかかって仕方ない訳ですから、より新しい技術の分析はお金がかかって仕方ないように思いますし。
無いよりは、技術水準が低い値でもあった方がまし、ということでしょうか。

ちなみに食品表示法に於いては「計算する場合最新のデータベースを利用」と書いてあります。
現在七訂が出ている日本食品標準成分表ですが、おおむね5年ごとに改訂されているため、5年後には再計算を強いられるのでしょうか。
この、どれ位意義があるのかわからない数字を5年ごとに計算しなおすコスト、プライスレスですね。
消費者の皆さんも、このコストは人件費として商品の価格にダイレクトアタックしますので、他人事ではありません。
社会に顕在化させにくいコストの怖いところは、説明がしづらいから、直接の値上げがしにくい→何らかの値上げに伴って便乗値上げを行うか、中身をコストダウンして補うかの二択、となり、見えにくい形での値上げになるところです。
暫く食べていなかった商品が、マイナーリニューアルを重ねられた結果、コストダウンでめちゃめちゃ不味くなってたとかたまにありますからね…。
そんな表示要らないから安い商品頼む、って思ったりしますが、その辺は海外とのハーモナイゼーションとか言い出されて抹殺される定めの意見なんですよね。

散々批判してみましたが、これからの高齢化社会、持病のある独居老人が増えてくると、「購入した食品の栄養成分を見て、食事コントロール」みたいなシーンも出てくるかもしれないので、長寿社会にはやはり必要な表示になってくるのかもしれませんね。
その頃には老眼で、「文字が小さくて見えないんじゃー、面倒くさいー」ってなっていそうな私ですが。
そのうち、スマホアプリで栄養成分表示を撮影するだけで、一日の摂取カロリーとか色々計算してくれるようなやつとか出てくるかもわかりませんし…。
事業者が一番出しにくい「ざっくりした値でもいいから!」を実現した推定値は、ある意味凄い存在かもしれません。

因みに最初の頃に述べたミネラル麦茶ですが。
この前の夏、ペットボトルを買ってみたところ、栄養成分表示がされていました。
時代の流れを感じて胸が熱くなりますね。

春になると出現する、薬機法違反商品たち。

2017-02-27 23:18:03 | 表示に関する話題
はい、もうすぐ春、もう春?でしょうか。
Spring has come.
これを「バネ持ってこい」と訳した人がいる、というのはいつからある都市伝説なのでしょうか。

春といえば、むずむずの季節ですね。
むずむずの季節、と言うだけで、誰もが花粉症を連想するでしょう。
そう、そういった連想を用いた薬機法に抵触するかも?表現がウォッチングできるいい時期です。
花見ならぬ、花粉症対策食品見(長いですね)。

薬機法とは、オフィシャルな略称「医薬品医療機器等法」、本名「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」旧「薬事法」、お薬を主に司る法律です。
薬機法は基本的に医薬品や再生医療・医療機器に関する法律を定めています。
何故食品に関わってくるか、というと、効能効果を標ぼうした場合、ただの食品が違法医薬品とみなされる可能性を秘めているからです。
健康食品などで、効果効能っぽいことを言っている商品がありますが、割と法律のギリギリゾーンをついている(つもりも含む)だったり、一部悪徳な事業者は指導されたら撤回しようと考えている会社もあるかもしれません。
小さな会社に至っては、社名を変えて逃げればいいじゃないとか思っていそうな気さえします。

正直私は健康食品に対し、あまりいいイメージを持っていません。
マルチに勧誘されたときに「がんが治る!」とか言われて、「何言ってんだこいつ」となったからです。
マルチの運営企業のお客様相談センターに、あなたのところのディストリビューターさんが、薬事法に違反するような事を言ってましたよ、どういう教育してるんですか、と聞くと「弊社ではそのような効能効果は標榜していません(=末端が勝手にやっていることです)」と仰るので、ブチギレそうになりました。
完全に私怨ですが、仕方がない、腹が立った商品やその類似品は買いたくなくなるのが人間の悲しい性質。
というわけで、当ブログは所謂健康食品の一部に対し、非常にあたりが強いですが、私怨ですので、あまり深く追求しないでください。

さて、閑話休題。
効果効能的な何かを標ぼうするためには、何等か申請したり届出したりが必要になります。
医薬品はそもそも、医薬品の製造業の許可を取らないといけない訳ですが、その後、医薬品を製造販売するに当たっては「承認申請」という手続きが必要です。
効果効能、成分、摂取量、毒性試験などなど、莫大なデータを厚生労働省に提出し、許可を得ることによって製造し、販売することが出来るようになります。
とはいっても、医薬品もピンからキリまでありますので、研究から生まれたてホヤホヤの新薬と、既に何社も同じ成分が出ている市販薬などでは、だいぶ扱いは違うと思いますが。
しかし、どのような「効果・効能」を標ぼうできるかは、管理されており、それ以外の効果・効能を標ぼうすることは出来ません。
どこかのテレビ番組で、糖尿病に処方薬の睡眠薬を推奨する番組があったそうですが、ちょっと良識とか色々疑ってしまいますね。
実際には、市場に出た後に、思わぬ副作用、ならぬ、別の疾病への効果が発見されることもありますが、きちんと申請しないと、既に販売している医薬品だからといって、別の効果を言う事はできません。
そのテレビ番組で突然糖尿病への使用を推奨された製薬メーカーはいったいどんな気持ちだったでしょうか、多分割と迷惑な気もします。

因みに、ネーミングセンスが秀逸な某製薬メーカーさんの、ダジャレ系商品名を見て「ずるい!薬事法違反だ!」と言った食品会社の方がいましたが、商品名も含めて申請されているはずですので、違反ではありません。
アットノン、とかうっそだろ、と思うようなネーミングですが、「きず・やけどのあとの~」という効果効能がありますので、アットノンOKなのでしょうね。
因みに私はアットノンと同じ成分の薬を処方薬で貰いましたが、アットノンマジアットノン!ってなりました。
本当はいけないんでしょうが、処方されたのと別のあざにも使ったのですが、古い痕はあまりアットノン!てなりませんでした。根気が必要なのかもしれません。

再び閑話休題。
つまり、申請し、承認された効果効能以外を言ってはいけない!という決まりがある訳です。
これは「医薬品」として販売されているものに限らず、食品にも適用されます。
食品は基本的に「効果・効能」が無い物が殆どですので、食品について「病気が治る」とか言うのは、この薬機法に抵触する可能性が高いのです。
トクホや機能性食品など、一部「保健機能」を標ぼうできる食品も存在しますが、それらも申請や届け出が必要です。
また、一部栄養成分については、一定量含有することで、例えばカルシウムであれば「骨や歯の形成に必要な栄養素です。」といった記載が可能です(届出不要)。
これらは範囲が決まっており、それを越えると、表現によっては薬機法、健康増進法、景品表示法など、さまざまな法律にひっかかる無限の可能性を秘めています。
ぶっちゃけて言うと、景品表示法が唯一企業に金銭的なダメージを負わせることができるため、実は薬機法より景品表示法で検挙される方が辛いかもしれません。
まぁいずれにしろ、公に叱られると、会社のイメージダウンにつながる、と言えなくもないですが、多分現代ではあまり気にされていないんだろうなあと思うこの「効果・効能」の分野です。
事業者サイドは現代でも気にしていると思いますが、消費者サイドはあまり興味ないんじゃないかなぁ…気のせいかなぁ…と思います。
許可が出ているものに目移りしている状態なのかもしれませんが。

昔は「がんが治る!」とか言う食品を信じて医者にかかる機会を逸して亡くなる人なども居て、それなりに厳しく運用されていましたが。
その甲斐あってか、最近は過激な効果効能の宣伝は殆ど見かけなくなりました。
昔はただの食品を「がんに効く」とか言って売りつける過激な商品がある一方で、こつこつ体にいいとされる成分を入れた食品を開発し、うすらぼんやり仄めかす企業等も多くありました。
実際に論文発表などがされていて、根拠資料があっても、効果効能を標ぼうすれば、昔は直ちに「薬事法違反」でしたので、根拠資料は内部資料として、外部には出さないけど、何か実は効くと言われてる成分入れてます!この論文は使えませんが、何か花粉症売り場の近くに展開してください!周りにマスクとかおいてください!敏感な季節に!とかそういう感じでやっていた訳です。
ただ、「この人は割と真面目っぽいから許してやろう」とかお目こぼしをしているとろくなことになりません。
お役所は次々表現を規制していきます。
事、ここへ来て食品事業者も「根拠があっても言えないなんて…」みたいになり、なんやかんやでトクホが誕生します。
これでまぁ、食品でも体にいいんだ!と書きたい人は書けますよ!という環境を整えたわけですが、いかんせんお金がかかって仕方がないので、無申請の「いわゆる」健康食品の跋扈は無くならず。
先の食品表示法で更に規制を緩和して、届け出すれば事業者の責任で一定の保健機能っぽい何かをかけるんだよー、みたいに機能性食品が誕生しました。
この機能性食品、既に問題起こりまくりですが、その件については、また別記事で。

という訳で、届け出により保健機能が言えるかも!となったものの、一定の論文集めなど中小企業にはハードルが高い…というほどでもないかもしれませんが、まぁ低いハードルではないようです。
スーパーなどにいって、飴のコーナーなどへ行くと、「むずむずの季節に」「鼻が」などなど、トクホ誕生直前のピリピリムードだったら「気は確かか」と言われそうな商品が陳列されています。
流石に現代社会で、名も知れぬ業者の飴に花粉症を抑える力などないだろうと常識的に消費者は判断できるようになった今の時代、取締るほどでもないのかもしれませんね。
まぁ、プラセボ(偽薬、有効成分を含まない薬)と自分でわかっていても、服用することで効果が得られるという説もある位ですので、然程高額でもない飴で気休めを得られるならば、それも良いのかもしれません。

因みに、トクホだからって調子に乗り過ぎてバンバン承認内容を越えた広告をうった業者が薬事法違反で叱られたという事件がありましたが。
どんなに小刻みに段階を踏んで、頑張れば効果を言ってもいいよ!とかただの食品はそこまでだ!と格差をつけようとも、各々そのカーストの中で上限を突破してしまう事業者が出てくるものだなぁ…と思います。
広告におけるパッフィングの限界に挑戦してしまう、事業者の悲しい性質なのでしょうか。
トクホが出たばかりの頃は、トクホでもない緑茶飲料にトクホっぽいゆるーいマークをつけて、ヘル○アの恩恵にあずかろうとした事業者が居たり、同業他社がトクホを出したころに「トクホウ!」とさもトクホっぽく普通の飲料のTVCMを打ってみたり、割ととがった感じのことも行われていましたが。
現代は下火になりましたね。
機能性食品で堂々ととがった感じの商品を出していこうという感じでしょうか。

ただ、市場にはまだまだゆるーい感じの花粉症対策食品が売っています。
時間があるときに、ウォッチングしてみてはいかがでしょうか。

因みに身体の一部をなんやかんやするような表現は薬機法の規制対象になるので、「鼻スッキリ」などはNGだと思われますが。
「のど飴」はOKです。
不思議な話だと思いますが。
昔からなじみがあるから、効果があるとは思わないだろう、という理屈みたいですが…。
まぁ、Yah○○知恵袋で「のど飴というからには喉に効果があるのか」などという質問が立つくらいなので、アウト領域に移行しても良いんじゃないかしら、と思ったりします。
「せきのどあめ」とか「はなのどあめ」とかはアウトだと思うんですけど…。
最近は多くのメーカーから「はなのど飴」が出ているようで、一種の一般名称みたいになりつつあるんでしょうか…。
しかも栄養機能食品だったりすると、「ビタミンCで粘膜関係をフォローしつつ、他の訳わからん謎エキスを推し、はなスースーとか…花粉症対策ですって言ってるようなもんだろ!栄養機能食品はこういう売り方したらNGじゃなかったの?!緩くなったな!」などと思い、感慨深いです。

歌は世につれ世は歌につれ、じゃないですが、表示は世につれ世は表示につれ、というのもあるのかもしれません。
赤信号、皆で渡れば怖くない、と思わせておいて、景品表示法では数社一斉検挙などもありましたので、まだまだ予断を許しませんが、他社に出し抜かれっぱなしというのも厳しいのでしょうね。

薬事法関連の厚労省周りの人々は、まぁ本業の医薬品の方が忙しいでしょうし、機能性食品も怪しい動きをしていますし。
健康増進法は…。やはり機能性食品に引っ張られてそうですし。
消費者庁は新しい表示法とか、色々忙しいでしょうから。
今が一番、一般食品の、いわゆる健康食品がやりたい放題できる時期なのかもしれませんね。

添加物の表示は意外と複雑なんですよ。正直説明するのが面倒ですが、何か説明を試みてみます。

2017-02-21 20:33:48 | 表示に関する話題
添加物の表示については、食品業界に勤めている人ならばなんとなく皆知っているような気がしていましたが、そんなことはなかったぜ!ということにいつからか気づきました。

さて、まあ、本格的な食品添加物の表示については、「食品添加物表示ポケットブック」を見るとわかりやすいです。
信頼の政府刊行物。
割とコンパクトですが、お値段なんと2500円(平成28年度版の場合)。
個人で買うにはお高いですが、基本を全部学ぶときにはやはりこれが一番わかりやすいのかなと思います。

さて、でもそんなお高い本を買うより、あやふやな私の情報を選ぶぜ!という方はここから先をどうぞ。

添加物の表示方法はみっつあります。
・物質名表示
・一括名表示
・用途名併記

物質名表示、はその名の通り、物質名を書くものです。
グリシン、とか、炭酸水素ナトリウム、とかそんな感じです。
一番単純ですね。

一括名表示は、いくつかの物質をまとめて書くことでOK、としているものです。
例えば、香料やベーキングパウダー。
いくつもの添加物の組み合わせで構成されていて、物質名を全部書くとやたら長くなるし、そもそもこの添加物の中の物質名にそんなに消費者興味ないだろという前提で、一括名での表示が可能な緩いやつらです。

用途名併記は、用途を書いて、そのあと括弧で物質名を書くというものです。
甘味料(ソルビトール)とか保存料(ソルビン酸)とか。
これが一番厳しいやつですね。
物質名だけではだめだ!何のために使っているのかきちんと書きなさい!ってことですね。

まぁでも、実際のところ、食品業界の人間ですら混乱するのが括弧がついてくる添加物の表示です。
上の文章を見ると、「括弧がつくってことは、用途名併記ってやつじゃないの?」と一見思ってしまう人もいるのではないでしょうか。
実際、混同しているふしが見られる人が割と居ますが、括弧がついているからと言って、カッコ内が全て物質名とは限りません。

では、実際に例を挙げてみましょう。
1)リン酸塩(Na、K)
2)調味料(アミノ酸等)
3)ゲル化剤(増粘多糖類)

全て括弧が付きますが、
1)は物質名表示
2)は一括名表示
3)は用途名併記
です。
Na、K、アミノ酸等、を物質名のように話をしてくる人が実際いますが、添加物の物質名としてこれらはありません。

そんなことは常識じゃん、と食品表示を生業とする方は思うでしょうが、消費者側で、添加物を気にする人達でも、表示方法まで詳しく網羅している人がどれほど居るのかわかりません。
情報化が進み、文字列として「危険な添加物」のリストが手に入れば、どのような法則で表示されているかなど、興味の外なのかもしれません。
因みに私も一時期食品表示を生業としてきましたが、自分が手がけたことのないような食品分野の添加物の表示については疎かったりします。
ライムを購入したときに「防かび剤(イマザリル)」という表示を見たときはときめきました。

さて閑話休題。

1)のリン酸塩(Na、K)ですが。
これは、例えばピロリン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、リン酸三カリウム、などのリン酸塩を複数使ったときなどにできるおまとめ表示です。
「おまとめ表示なら『一括名表示』ではないのか?」と思うかもしれませんが、あくまで「物質名」を「まとめた」ものです。専門っぽく書くなら同種の塩、か同種の酸と塩を纏められますという程度です。
「リン酸」の「塩」(塩、というのは、ナトリウムとかカリウムとかと引っ付いている状態、まぁ若干語弊がありますが、そんなイメージで)という物質をまとめて表示したのが「リン酸塩(Na、K)」です。
一括名表示は割と異なる分野からの物質を集めて、その用途的な集合名(私の造語です)を表示するものですので、幅広く一括できます。
物質名おまとめ表示には酢酸(Na)とか、リン酸塩(Na)などがあります。
化学の力でまとめているだけの表示というところですかね。

次は2)調味料(アミノ酸等)ですね。
調味料だけですかね、一括名表示で括弧がつくのは。
違ったらすみません。
他の一括名は、先に例にあげた「香料」や「ベーキングパウダー」のようにあっさりしたものが殆どですね。
ただ、調味料だけは、系統を後ろに括弧で書きます。
「後ろに括弧で書くって、それは物質名とは違うの?アミノ酸だし」という人もいますが。
調味料にはアミノ酸、核酸、有機酸、無機塩の4つの系統があります。
それぞれ沢山の種類が登録されていて、それを組み合わせて味に深みを出すわけですが。
どの系統を使っています、というのを書いているのが後ろの括弧の中身なのです。
物質名そのものではない、というところがポイントでしょうか。
因みに、複数の系統を使っている場合は、一番多い系統の名前を書いた後に「等」をつけます。
例えば、アミノ酸だけを使っている場合は「調味料(アミノ酸)」、核酸を沢山、有機酸を少し使っている場合は「調味料(核酸等)」となります。
一つだけだと一層用途名併記感が増しますが、アミノ酸はあくまで物質の総称ですので、物質名とは違います。
全部書くには多すぎるけど、さすがに何系を使っているか位は興味があるかも?という参考情報なのでしょうか?ちょっと意図までは知らないです…ご存じの方いたらコメントください。

最後に3)ゲル化剤(増粘多糖類)、これはちょっと特殊ですね。
あからさまに物質名でない様相を見せている増粘多糖類ですが、お察しの通り増粘多糖類は物質名そのものではありません。
一定の多糖類を混ぜて増粘剤、ゲル化剤、安定剤といった用途に使う場合には「増粘多糖類」とまとめることが出来ます。
まとめているなら一括名表示じゃん!とおもうかもしれませんが、ここでのポイントは「使用目的と物を明らかにすることが目的」という用途名併記の志です。
増粘安定剤として登録されている「多糖類」という物質たちを括弧内でまとめて表示しています。
ゲル化剤(増粘多糖類)であれば「ゲル化剤」という用途のために「増粘安定剤として登録されている多糖類」という物質を使っていますよ、ということです。
調味料(アミノ酸等)などとは志の方向性が違うということでしょうか、説明していて私も意味がよくわからないですがフィーリングで乗り切ってください。
なんなら増粘目的の場合は「増粘剤(増粘多糖類)」となって増粘が被るので、「増粘多糖類」だけで良いとされています。
括弧が消えた!
もう一括名表示にしか見えないですが、「増粘」目的のために、「増粘安定剤として登録されている多糖類」という物質を使っていますよ、ということです。

ちなみに用途名併記については、もう一つ特殊な要素があります。
それは、着色料です。
用途名併記の原則から言えば、用途名に括弧して物質名、なので、着色料(紅麹)となりますが、これは紅麹色素と表示することも許されています。
またもや括弧が消えました。
物質名表示じゃないか、と思うかもしれません。
確かに物質名だけになっていることは事実ですが、「色」という文字が入っていることで、着色目的で使用していると明示できるとされています。
なので、前に書いて括弧をつけても、後に「色素」をつけても「着色目的」という用途を表示している、と見做されるのです。
ただし、気をつけなければならないのは、「着色料()」を必ずしも書かなくて良い、という思い込みから、単に「紅麹」や「カラメル」と書いてしまう人が稀にいますが、これはアウトです。
食品のカラメルと勘違いされる、といった可能性があるので、着色目的であれば必ず「色」をどこかに入れなければいけません。
何なら「着色料(カラメル色素)」と書いても問題ないですが、文字数が多いのであまり実行している人はいないと思います。

用途名併記の大事なところは「何が目的か」とどんな物質を使っているか、を併記することです。
テンプレ的に言われる、目的を書いて括弧で物質名を書く、というのは、わかりやすいですが、本質までを説明していないですね。
ただ、全てを説明すると、ざっくり知りたい人には詳しすぎてわからないよ!ということもあるので、端的に言うと、そういうものが多い、という説明としては「用途名の後に括弧をして物質名を書く、例外として~」という記載がわかりやすいと言えばわかりやすいのでしょうね。

添加物表示は割と応用が多いので、現場の人間も恐らく混乱し、小さな店などでは間違いも散見されますね。
応用が多い理由としては、少ない文字数で必要な情報を伝える事、を重視した結果なのかもしれません。
添加物だけの表示の頃は良かったかもしれませんが、今は法律も複雑化して、新しく覚える人たちは大変ですね。
ただ、実際表示は文字数との戦いが多いので、見やすくするためにも文字数を減らしたりする工夫は本当は大切なんだと思います。
表示文字数が多くなって、フォントに長体がかけられて細長くなっているのをみると、見づらい!と切実に思います。