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チリチリリン

風にゆれる風鈴のように
こころ休まる音を届けたい

「アダムズ・アップル」

2019年12月06日 | 映画の話

 

 

新宿のシネマカリテというかなりマニアックな映画館のチケットをいただいたのですが、この映画、筋書き等読んでもどんな映画だかさっぱりイメージが湧かず、白紙の状態で見にいきました。”変わった” ”可笑しな” 映画で、でも引き込まれて観てしまいました。

アダムという主人公は刑務所を仮釈放されて、田舎町の教会で更正生活を送ります。教会の牧師、イヴァンは変な人物です。周りの情報によれば、これ以上ないくらいの不幸をいくつもいくつも背負っているのに、”これは悪魔が自分に試練を与えているだけ、神は必ず守ってくれる”と一層信仰に傾倒している風で、右の頬を打たれたら左の頬をの典型です。

他に二人いる更正中の男たちも変な人間で、一人はすぐに人の物をポケットに入れるコソ泥、もう一人は目出し帽をかぶって強盗をしてる風。イヴァンは悪い事は何も見いないし信じない。

一人正常な感覚の持ち主だと思っているアダムはイヴァンに現実を突きつけます。病で命の期限を切られるといった逃げようのない現実を正面から追い詰められ、とうとうイヴァンは”神に憎まれているかもしれない””神は救ってくれない”と並みの疑問を持つようになります。

ところがこの教会の共同生活は”変”なイヴァンが扇の要のような状態で、普通のイヴァンでは可笑しな住人たちを束ねる事はできず、みんな可笑しな状態になってしまうのです。アダムはおかしくなった住人をおかしくしないよう面倒を見る羽目になります。

 

「とりあえずの目標は庭のりんごでパイを焼く」と口にしたアダムの言葉が映画の題名です。りんごはカラスに食われ、虫に食われ、雷に打たれて炎上し、拾い集めたりんごは住人に食われ、コソ泥が隠し持った最後の一つでパイが焼かれます。アダムと奇跡的に回復したイヴァンが分け合って食べます。

最後にはスキンヘッドのアダムは髪を蓄え、牧師の助手として新しい更正人を迎えるのです。

 

この映画はデンマークのブラックユーモアの作品だそうです。ドンパチドンパチとエグいところもあるのですが、不思議と嫌な感覚は残らず、面白い映画だなぁと思いました。

 

 


「永遠の門」ゴッホの見た未来

2019年11月18日 | 映画の話

 

上野の森でゴッホ展が開催されている。美術館に行く前に、ちょっと退屈で寝てしまうよと言われたが、この映画を見ようと考えていた。

ゴッホの生涯は残された多くの手紙などで既に知られているのだが、待望の地アルルでそれまでにない明るい色彩の絵を描きながらも、繊細な神経ゆえ病魔に冒されて行く最後の2年の映画だというので、どうしても見たくなった。

私はアルルを訪れている、ゴッホの入院した病院も見ている、ゴッホが療養生活を送った療養所のあるサン=レミにも行っている。映画の中でもう一度、遠い記憶の地を見てみたかった。

ゴッホの絵のような麦畑や糸杉は見なかったけど、実際に歩いた野外劇場の遺跡が出てきて嬉しくなった。町のあちこちにゴッホのプレートがかけてあって(フランス語は読めない)、アルルの人たちにとって、ゴッホは郷土の誇りなのかと思っていたが、精神異常者で危険だからと追放の嘆願書が出されていたなんて事は知らなかった。

なぜ絵を描くのかと問われて、父親が聖職者で自らも聖職者を目指した事があるというゴッホが出した『未来の人々のために、神は私を画家にした』という答えは感慨深い。

次は未来の私たちのために、ゴッホが残した絵を見に行こう。今までと違って見えるかもしれない。

 


フッド ザ・ビギニング

2019年10月29日 | 映画の話

 

歯車が噛み合わない日ってあるもので、今日はそんな日だったのかもしれない。

早朝バイトの帰りに、最近できた評判のパン屋で朝食にカレーパンを買ってきて、好物のフィッシュ&チップスを作って食べ始めた。たっぷり入ったカレーが美味しくない。甘いのか辛いのかどっちつかずで我慢して食べていたが、とうとう三分の一は残してしまった。

新宿三丁目に映画を観に行くことにして出かけた。古巣の三丁目で用事を一つ二つ済ませ、12時には満席になってしまう人気のビストロに滑り込んだ。なのにランチのスズキのソテーは朝のフィッシュ&チップスとしっかり被ってしまってガッカリなとこに、大きなポットで出てくる名物のスープが、今日はサツマイモのスープ、自分で作ったサツマイモのスープに比べ、あまりに芋が少な過ぎて薄くてサツマイモの味も香りもしない。

そして目的の映画..........今度はツッコミどころが多過ぎて..........わざわざ電車に乗ってここまで観にきた自分、ご苦労様!

 

 

「ロビンフッドはシャーウッドの森に住む盗賊で、強欲な領主から金品を盗んで貧しい平民に分け与える」これが小学生の頃読んだロビンフッドの話。今回のロビンフッドも大筋は同じ。昼は領主で夜は盗賊、金貨を投げ歩く様は千両箱を小脇に抱え小判を投げ入れる鼠小僧の様。

冒頭、十字軍出兵で戦う相手が顔に入れ墨をしたジェイミーフォックスで、それはアラブ人とはだいぶ違うんでない?

フード付きマントのクラシックなイメージが、ユニクロのフード付きジャケットを着て渋谷を歩く若者の様で違和感アリアリ。

いかに訓練した弓の名手でも、何百人の護衛がいる金庫に策もなく一人で盗みに入るのは無謀を通り越してバカか?

平民と団結して輸送される金庫を奪い取るのだが、コンテナの様に大きな金庫の中の金袋を火事場のバケツリレーのごとく手渡しで運ぶのを見て、思わず下を向いてしまった。

ヒロインは彼を死んだと信じて他の男性と結婚した風なのにいつの間にかよりを戻し、彼女を奪われた男は次作では悪の側に取り込まれて彼の敵に回る、って「バッドマン」みたい。

と、まだまだ他にも突っ込み所満載。観に行くときは全ての既成観念を捨て余計な事は考えず、ただただアクション映画を楽しんで下さい。

 


「ディリリとパリの時間旅行」

2019年09月19日 | 映画の話

とても面白い映画だと思いました。面白いというのは、面白いことを考えるという意味です。ニューカレドニアから客船に忍び込んでパリにやってきたディリリは、船で助けてくれた伯爵夫人に仕込まれて小さなレディです。それなのに「お嬢ちゃん、この国の言葉を話せるの?」と聞かれて肩をすくめたりします。配達人のオレルと知り合って、パリを見物しながら少女誘拐時間を解決しようとします。

パリの街で出会う人は、キューリー夫人だったり、パスツールだったり、ピカソ、モネ、ルノアール、ドガ、ロートレック、ロダン、エッフェル、ツェッペリンなど著名人、上の高慢そうな女性はミュシャが描いたサラ・ベルナールです。どの人も似顔絵みたいに似せて描いてあるのかもしれませんが、私にはわかりませんでした。

パリの街並みが色鮮やかに綺麗に描かれています。焼けて無くなってしまったノートルダムも出てきました。少女誘拐がひどい女性蔑視の事件で、全体的に子供向けアニメでないのがまた面白かったです。見ている人も年配者が多かったです。


「シークレットスーパースター」

2019年08月13日 | 映画の話

歌手になることを夢見る少女、厳格で暴力的な父親に歌うことを止められ、顔を隠して歌う映像をユーチューブに投稿する。その歌声で瞬く間にスーパースターになる。

この父親の暴力がすごい! 母親は顔にアザを作り胸を骨折したこともあったという。それなのにそんな母親がさらにすごい! 父親の目を盗んで少女の夢を叶えようと奔走する。自身も自分の父親に勝手に結婚相手を決められ、ずっと耐えた生活を送ってきて、人生を半分諦めている風なのに。

離婚して父親から離れようと説得する娘にも、そんな事は出来っこないと諦めていた母親が、少女が自分と同じ運命にさらされた時決断する。夫に三行半を突きつけ、娘と息子の手を取り、夫から去ってゆく姿は雄々しくかっこいい。

インド映画は笑って泣けて、最後にズンと胸にくるものがあって、見て損はないという感じです。この映画では、インドに限らずどの世界でも、女は蔑まれて自由のきかない人生を生きてきたことを直視させられます。インドでは今もこれが珍しいことではないと訴えたかったのかな?