新宿のシネマカリテというかなりマニアックな映画館のチケットをいただいたのですが、この映画、筋書き等読んでもどんな映画だかさっぱりイメージが湧かず、白紙の状態で見にいきました。”変わった” ”可笑しな” 映画で、でも引き込まれて観てしまいました。
アダムという主人公は刑務所を仮釈放されて、田舎町の教会で更正生活を送ります。教会の牧師、イヴァンは変な人物です。周りの情報によれば、これ以上ないくらいの不幸をいくつもいくつも背負っているのに、”これは悪魔が自分に試練を与えているだけ、神は必ず守ってくれる”と一層信仰に傾倒している風で、右の頬を打たれたら左の頬をの典型です。
他に二人いる更正中の男たちも変な人間で、一人はすぐに人の物をポケットに入れるコソ泥、もう一人は目出し帽をかぶって強盗をしてる風。イヴァンは悪い事は何も見いないし信じない。
一人正常な感覚の持ち主だと思っているアダムはイヴァンに現実を突きつけます。病で命の期限を切られるといった逃げようのない現実を正面から追い詰められ、とうとうイヴァンは”神に憎まれているかもしれない””神は救ってくれない”と並みの疑問を持つようになります。
ところがこの教会の共同生活は”変”なイヴァンが扇の要のような状態で、普通のイヴァンでは可笑しな住人たちを束ねる事はできず、みんな可笑しな状態になってしまうのです。アダムはおかしくなった住人をおかしくしないよう面倒を見る羽目になります。
「とりあえずの目標は庭のりんごでパイを焼く」と口にしたアダムの言葉が映画の題名です。りんごはカラスに食われ、虫に食われ、雷に打たれて炎上し、拾い集めたりんごは住人に食われ、コソ泥が隠し持った最後の一つでパイが焼かれます。アダムと奇跡的に回復したイヴァンが分け合って食べます。
最後にはスキンヘッドのアダムは髪を蓄え、牧師の助手として新しい更正人を迎えるのです。
この映画はデンマークのブラックユーモアの作品だそうです。ドンパチドンパチとエグいところもあるのですが、不思議と嫌な感覚は残らず、面白い映画だなぁと思いました。