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チリチリリン

風にゆれる風鈴のように
こころ休まる音を届けたい

「パラサイト」

2020年02月17日 | 映画の話

予告編でなんとなく内容はわかっていたので、本当は観たくない部類の映画でした。映画は久しぶりだという友人に一緒に行ってよと誘われて渋々観に行ったのです。

喜劇のように描いてますが、とても笑える話ではありません。とにかく話が汚い。汚いというのはゲロとか放尿とかの汚さだけでなく、嘘偽りを並べ、他人を貶めて自分がのし上がるという人間の汚さです。貧しいゆえに仕方なくを観て、重くて胸が苦しくなり、途中で抜け出したくなりました。頭も痛くなり、耳を塞いで、早く時間が過ぎないか、映画が終わらないかと祈ったほどです。

そのあと、主人公たちが自分たちが陥れた人が無事でいるか気遣うシーンが出てきます。生活が落ち着いて少し良心が戻ってくる、そうすると辛さがやってきます。貧しい者と富める者、その歴然たる差を目の当たりにして、羨ましいとかでなく「違うんだ!」と思い知らされるシーンがどうにも辛かったです。観終わってドッと疲れてしまいました。

大作でもなく、美しい映画でもなく、この映画がアカデミー賞を取ったのは本当にすごい事だと思います。


「1917 命をかけた伝令」

2020年02月16日 | 映画の話

当初、アカデミー賞作品賞の最有力候補だということだったが、観てなんか納得した。スケールの大きさやロングショット撮影をあげていたが、作品自体が、よくある話のような、前に見たことがあるような、既成概念を打ち破るほどのインパクトがない。

映画自体は、ハラハラドキドキ、最後まで楽しめます。

仲間の死が無駄死にだったような空しさをおぼえました。一応戦争映画だから仕方ないのかなぁ...


フォードvs フェラーリ

2020年02月12日 | 映画の話

アカデミー賞が発表されましたが、今年のノミネート作品は一つも見ていなかったので、どれにしようと迷った結果この作品にしました。実話だと丁寧に描けばこの長丁場になるのか、久々に3時間越えの映画です。

美しいフェラーリ車が人気があって、ルマンレースで一世を風靡していた時代、一台一台が手作りのフェラーリ社の経営は厳しく、米国大衆車のフォードが業務提携を目論んだが、”醜い車”を作ると一笑に付され、散々に侮辱される。フォード社はなんとかフェラーリの鼻を明かそうと、自社にレーシングカー部門を設立してルマンレースに打って出ようとする。

プライド高いフェラーリに散々にコケにされるフォードの動揺ぶりが面白いです。

フォード社が頼ったのが、米国人でただ一人ルマンを制した経験を持つマッドデーモン扮するカーレーサー、今は引退して車の販売店を開いているキャロル・シェルビー。そしてキャロルがこの男と見込んだレーサーがクリスチャン・ベール扮するケン・マイルズ。キャロルが車を設計しケンが試乗を繰り返しルマンに打って出る。

ところがフォード社内にもよそ者に大きな顔をされたくない幹部がいて、何かと邪魔をする。一匹狼で社風になじまないケンがレーサーチームから外され、結果ルマンで惨敗する。

「ラップタイムでフォード社は時速340キロを超え、フェラーリに脅威を与えた」と言い切るキャロルはかっこいい。

翌年はキャロルも負けずに主張し、チームメイトの協力もあって、ケンをレーサーに入れることが出来、彼は期待に応え、ダントツ一位でゴールしそうになるが、ここでまた例の幹部の横槍が入る。

「会社の宣伝のために、ケンに減速させ、フォードチーム3台を一斉ゴールさせよう」

側で聞いていても実に馬鹿げた発想だと思うのだか、キャロルの社内での立場を思い計って、ケンは従ってしまう。

自動車レースは競馬のように横並び一直線ではなく、縦並びでスタートするので、同時ゴールだと遠い位置からスタートしたものが優勝となる規則があって、ケンは優勝の栄冠を同僚にさらわれてしまう。

ここまで観て、娘が「後味悪い」と評していた意味がわかった。実に理不尽で後味悪い。しかもその優勝者が名前を知っているマクラーレンなので尚更だ。

フォードはその後もキャロルの力で何度かルマンを制している。ただケンは事故死をしてしまってレースで雪辱を期することが出来なかった。

キャロルとケンの男の友情がとてもいい感じなのに、実話という制限では完全なハッピーエンドに出来ない。悲しいね。

190分という長い映画だが、カーレースのスピード感と爆音に圧倒されて長くは感じませんでした。

 


「フィッシャーマンズ ソング コーンウォールから愛をこめて」

2020年01月13日 | 映画の話

 

なんだかすごくハッピーな映画を観たくなって、映画一覧の中から選んだのは、若くもイケメンでもないおじさんたちの魅力的な笑顔です。

1995年結成2010年に実際にデビューした漁師たちのコーラスバンド「フィッシャーマンズフレンズ」、海の上で歌っていたのだという舟歌や民謡はしゃがれた声でも思い切り力強く、ハーモニーも綺麗で、誰でも好きになりそうです。ファーストアルバムは全英トップ10入りを果たし、この映画も大ヒットなのだそうです。

物語は音楽プロデューサーが、冗談かと笑い飛ばす漁師たちを説得して、レコード化にこぎつけるまでのサクセスストーリーで、髭面で日焼け顔の漁師はみんな弾けるような笑顔、挿入される歌はどれも素敵で、不幸の影は無い、ハッピーな映画です。そしてコーンウォールの景色がとても綺麗です。

「フィッシャーマンズフレンズ」をググったら、同じ名前のしゃがれ声用ののど飴があるそうです(笑)

 

今日は成人の日で、新宿に出たら振袖姿の新成人がいっぱい。娘たちの成人の日のことを思い出しながら見ていました。

 


「ブレッドウィナー」

2020年01月06日 | 映画の話

    

アメリカ同時多発テロ後、タリバンの支配下にあるアフガニスタンが舞台。女は男と一緒でなければ外に出ることを許されず、買い物も勉強もできない。そんな中、教師の父親と物書きの母親に育てられた少女は物語を作って幼い弟に聴かせるのが上手だった。

父親の若い頃は平和な世界で男も女も教育を受けることができたと語り、娘にも地理や歴史を教えている。その父親がタリバンの収容所送りになり、家には少女と姉、母親と幼い弟だけになり、外に食物を買いに行くこともできなくなった。

11歳の少女は髪を切り少年に化けて外出し、家族を養うことになった。「ブレッドウィナー」とはパンを稼ぐものという意味だそうです。

テーマからして決してハッピーな物語でないことはわかっていたけど、注目を浴びているアニメーションスタジオの作品で、アカデミー賞にノミネートされたし、アンジェリーナ・ジョリーがサポートしているというので観たいと思っていました。

母親は遠くの親戚に上の娘を差し出し家族を救ってくれと頼み込む、少女はお金を稼いでなんとか父親を取り戻したいと奔走する。救いようのない困難な生活と並行して、少女が弟に聞かせる物語が劇中劇のように流れます。

『象の怪物に穀物の種を奪われて嘆き悲しむ村民の中、一人の若者が種を取り返すと遠い山に住む怪物の元へ旅する』

知り合った男の助けで収容所から父親を連れ出した少女は、衰弱した父親を荷車に乗せて砂漠の中を運ぶ、無事に家までたどり着けるか描かれていません。人さらいのように母親、姉、弟を連れ去ろうとした親戚から、命がけで逃れた3人も砂漠の中を歩く、こちらも家までたどり着けるのか...

ただ物語の中の若者は知恵と勇気で象の怪物から種を取り戻し村へ帰っていく、それだけが描かれます。

 

タリバン壊滅のための米国のアフガン攻撃はアフガニスタンの人々に自由と平和をもたらしたのでしょうか。イランとの新しい戦争の影がチラチラする今、弱いものに犠牲を強いる世界が来ないことを祈っています。