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「すでに起こったことは、明らかに可能なことがらである」
在台日本語教師の東アジア時事論評あるいはカサンドラの眼差し

中国メディア:日本衆議院戦後60周年決議を「赤旗」を利用して批判

2005年08月04日 | 日本の安全と再建のために
 中国yahooで見る限り、中国人が極めてよく利用していると言われるヤフーの中で、中国メディアが取り上げる日本関連の記事は、最近、先に上げた8月1日の”日本核武裝”報道のように極めて「謀略」的色彩の濃いものが目立つ。8月4日は、トップに次ぐ二段目「報刊要聞精選」に、日本の衆議院の戦後60周年決議を批判する以下の記事が掲載された。

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日共抗議日本國會“60年決議”將侵略戰爭合理化 (日本共産党日本国会60周年決議の侵略戦争合理化に
抗議)
http://cn.news.yahoo.com/050804/1363/2e5ye.html来源:参編
據日本《赤旗報》3日報導,日本共產黨委員長志位和夫2日就日本國會強行通過“戰後60年‘國會決議’”發表了抗議性講話。他指出,這份決議除了應該紀念聯合國成立和二戰結束以及日本被炸60周年以外,還應該明確記錄日本對過去發起的侵略戰爭和殖民統治所進行的反省。然而,由自民黨、民主黨、公明黨最終提出的決議草案站在了將侵略戰爭合理化的立場上。“國會決議”為的是紀念聯合國成立60周年。聯合國成立的初衷,就是嚴懲日本和國法西斯,嚴肅審理這場規模浩大的侵略戰爭,並防止類似事件再度發生。但日本這次的“國會決議”違背了戰後整個國際社會的初衷。不但如此,這次“國會決議”甚至和此前日本政府的自身立場都自相矛盾。在戰後50年之際,“村山談話”曾明確表示“我們對過去的侵略和殖民統治進行深刻地反省和道歉”。小泉首相本人也曾在今年4月的亞非峰會上,作了相同內容的發言。然而,此次“國會決議”卻給了日本政府已見雛形的戰爭反省立場當頭一棒。當前,由於小泉首相在參拜靖國神社問題上頑固不化,日本政府又無法在戰爭問題上端正態度,日本已經遭到亞洲和世界,乃至日本國民的嚴批評。此時,國會作為國家的最高權力機關,又強行通過將侵略戰爭合理化的 “國會決議”,這是國會史上莫大的汚點和恥辱。 
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 長いので形容や理由を述べた部分をはぶいて、以下に要点を紹介する。
 〔要旨〕日本『赤旗』によれば、日本共産党志位和夫は、2日の戦後60周年国会決議の強行通過に抗議して、以下のように述べた。決議は、連合国との和平、第二次大戦の終結、日本の被爆60周年の他、日本の過去の侵略戦争と植民地支配への反省を述べるべきである。しかし、自民、民主、公明党の最終案は、侵略戦争を合理化する立場に立っている。(中略)日本のこの度の国会決議は、戦後の国際社会全体の初めの誠意(初衷)に違反している。それにとどまらず、(中略)戦後50年の村山談話や小泉首相が今年4月述べた同じ発言に対し、今回の国会決議は、日本政府に既に見られる戰爭反省の手本を顧り見ない。先に、小泉首相が靖国問題に譲らないことで日本政府が戰爭問題で態度を正せないため、日本はすでにアジアと世界、および日本国民から厳しい批判を受けている。今、国会が国会決議通過を強行したことは、国会史上の非常な汚点・恥辱である。

 以上の記事の『赤旗』からの引用は、一見すると共産党の反対意見をほぼ忠実に訳したものと思われる。しかし、日本共産党ホームページの記事は、内容が違っていた。以上と対照するために、全文を以下に挙げる。
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2005年8月3日(水)「しんぶん赤旗」戦後60年 侵略戦争合理化の決議 戦後の国際社会の原点覆すもの志位委員長が抗議の談話
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik4/2005-08-03/2005080301_05_1.html
一、本日の衆院本会議で、自民、民主、公明、社民は、戦後六十年にあたっての「国会決議」を強行した。
 わが党は、この決議案が提起されたさい、「国連創設およびわが国の終戦・被爆六十周年」にあたっての決議という以上は、日本がおこなった過去の侵略戦争と植民地支配への反省が明記されるべきであると主張した。
 ところが自民、民主、公明によって最終的に提起された決議案は、わが党の主張を入れるどころか、「ここに十年前の『歴史を教訓に平和への決意を新たにする決議』を想起し」という一文を挿入するものとなった。
 十年前の「国会決議」とは、世界の列強が、「侵略的行為」や「植民地支配」をおこない、日本はその風潮にのっただけのことであり、日本だけが特別に悪い罪をおかしたのではないという内容のものであった。いわば侵略諸国も、それとたたかった反ファシズム諸国も、「どっちもどっち」だという議論で、日本の侵略戦争の合理化をはかるものだった。この「国会決議」は当時の連立与党(自民、社会、さきがけ)の賛成で強行されたが、日本共産党は「決議」の重大な問題点をきびしく批判して、反対の態度をとった。
 一、今回の「国会決議」に、十年前の「国会決議」を「想起」するという一文が挿入されたことは、侵略戦争の合理化の立場が盛り込まれたことを意味する。
 戦後六十年の記念すべき年に採択される「国会決議」に、こともあろうに侵略戦争を合理化する立場が盛り込まれ、わが党以外のすべての政党の賛成で強行されたことは、きわめて重大である。
 「国会決議」は、「国連創設六十年」も記念するとしているが、国連創設の原点は、日本とドイツの侵略戦争をきびしく断罪し、二度とこうした誤りをくりかえさないということにあった。今回の「国会決議」は、この戦後の国際社会の原点をくつがえすものといわなければならない。
 さらに、この「国会決議」は、これまで日本政府自身が表明してきた立場とも、あいいれないものである。戦後五十年にあたっての「村山談話」では、「侵略と植民地支配への反省とお詫び」を表明し、小泉首相自身も、四月のアジア・アフリカ首脳会議の場で、同じ内容の発言をおこなっている。「国会決議」は、これまで政府がまがりなりにものべてきた立場にも、まっこうから反するものである。
 わが党は、この「国会決議」の強行に、強く抗議するものである。
 一、いま、首相の靖国神社への参拝の固執など、日本政府の過去の戦争にたいする誤った態度が、アジアと世界からも、日本国民のなかからも、きびしい批判をよびおこしている。そのときに、国権の最高機関である国会が、侵略戦争を合理化する「決議」を強行したことは、国会の歴史に大きな汚点を残したものである。
 わが党は、歴史の事実をゆがめる逆流の横行を許さないために、ひきつづき力をつくす決意である。
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 先の要旨と、以上の『赤旗』の記事とを対照してみると、中国ヤフーは、『赤旗』の記事を引用または要約したのではなく、恣意的に、日本共産党志位委員長の主張と違う内容に、書き換えたことが分かる。
 志位委員長の批判は、三つあるが、その一とニは、中国ヤフーの記事では、全く書き換えられている。志位委員長は、、決議の「ここに十年前の『歴史を教訓に平和への決意を新たにする決議』を想起し」を、十年前の決議が侵略戦争を肯定しているからだめだと行っているのに対し、中国ヤフーの記事では「自民黨、民主黨、公明黨最終提出的決議草案站在了將侵略戰爭合理化的立場上」と、ただ「侵略戰爭合理化的立場上」に書き換えている。この決議への評価は、十年前の決議に対する解釈により、志位委員長の解釈が正しいのかどうかがわかれるが、中国ヤフーは一方的に、「侵略戦争を合理化する」とだけ述べた。
 第二は、二点目で「今回の「国会決議」に、十年前の「国会決議」を「想起」するという一文が挿入されたことは、侵略戦争の合理化の立場が盛り込まれたことを意味する」と志位委員長は述べているが、中国ヤフーは、そうした部分を一切省略して、「「国会決議」は、「国連創設六十年」も記念するとしているが、国連創設の原点は、日本とドイツの侵略戦争をきびしく断罪し、二度とこうした誤りをくりかえさないということにあった」以下からだけを「“國會決議”為的是紀念聯合國成立60周年。聯合國成立的初衷,就是嚴懲日本和國法西斯,嚴肅審理這場規模浩大的侵略戰爭,並防止類似事件再度發生」と、ほぼ逐語訳にしている。
 なお、決議に関するこのニュースは、日本の各新聞でも報道されているが、その要旨は以下のとおり。
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衆院の戦後60年決議要旨
 国際平和の実現は世界人類の悲願であるにもかかわらず、戦争による惨禍が絶えない。戦争やテロリズムなどによる人命の喪失が続き、大量破壊兵器の拡散も懸念される。
 このような国際社会の中で、本院は国連が創設以来60年にわたり、国際平和の維持と創造のために発揮した英知と努力に敬意を表する。
 われわれは、ここに10年前の「歴史を教訓に平和への決意を新たにする決議」を想起し、わが国の過去の一時期の行為がアジアをはじめとする他国民に与えた多大な苦難を深く反省し、あらためてすべての犠牲者に追悼の誠をささげる。
 政府は、日本国憲法の恒久平和の理念のもと、唯一の被爆国として核兵器の廃絶、あらゆる戦争の回避、世界連邦実現への道の探究など、持続可能な人類共生の未来を切り開くための最大限の努力をすべきだ。
2005年08月02日火曜日
http://www.kahoku.co.jp/news/2005/08/2005080201001303.htm
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 中国ヤフーが出している記事は、「参編」とあって、編集者不明の極めて奇妙な記事だが、それを除いても、大きな問題点は二点ある。
 一つは、日本共産党が前回からの経過を踏まえて批判し反対している国会決議を、まるで、今回初めて決議が出され、それが「自民黨、民主黨、公明黨最終提出的決議草案站在了將侵略戰爭合理化的立場上」であるかのように、見せかけるという仕方で、本来の論旨を変えて、「據日本《赤旗報》3日報導」と、『赤旗』の責任に帰している点である。いわば『赤旗』を利用する形で、間接的に国会決議を批判し、しかも国民には、その内容が「侵略戰爭合理化的立場」とだけ伝わるようになっている。
 二つには、記事を読んだ中国人には、日本の国会決議の内容は前回も今回もまったく分からないという点である。従って、記事を読んだ中国人は「侵略戰爭合理化的立場」だけを読んでいるということになる。翻って、決議本文を見れば、今回の決議本文のいったいどこに「侵略戰爭合理化的立場」が明示されているのか?私たちは、「わが国の過去の一時期の行為がアジアをはじめとする他国民に与えた多大な苦難を深く反省し、あらためてすべての犠牲者に追悼の誠をささげる」以上の何を言えばいいのか?こう決議した国会議員に、内容を知らない中国人は、当然、この決議文は、「侵略戰爭合理化的立場」と言うに違いなく、両国の溝は深まるばかりである。中国ヤフーは、十年前がだめだから今回もだめだという日本共産党の詭弁を利用して、中国人の目から日本の国会が出した決議を隱蔽し、「侵略戰爭合理化的立場」だけを強調している。ここでも、”日本核兵器開発”という謀略記事と同じ、言論での謀略が行なわれている。
 こういう形で、日中両国民の間に、次第に憎悪が増幅していくのである。今の中国メディアは、かつての日本メディア(日中戦争を煽動したのはどこの正義の味方か)とともに、まったく戦争製造機としか言いようがない。
 情報を国民の手に、これが”平和を守る”唯一の手段であろう。

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