大野威研究室ブログ

おもにアメリカの自動車産業、雇用問題、労働問題、労使関係、経済状況について、最近気になったことを不定期で書いています。

米企業、第2四半期決算はじまる: 収益後退となるか?

2019年07月15日 | 日記

 2019/7/15(月)からアメリカで第2四半期の決算が本格化する。

 ウォールストリートジャーナル(WSJ)によれば、S&P500の2019年第1四半期の純利益は前年比で0.3%のマイナス(アナリスト予想は4%のマイナス)だった。

 アナリストは2019年第2四半期の純利益も3%のマイナスと予想している。

 ちなみに、2四半期連続で純利益が前年を下回ることを収益後退という。

 1988年以降これまで6回の収益後退がおこり、そのうち3回はその直後に景気後退がおこっている。

 もし第2四半期の純利益がマイナスになると収益後退ということになる。

 WSJは、一般にアナリスト予想は控えめで、実際の決算は予想を上回ることが多いとしている。

 これから本格化する米企業の第2四半期決算に注目したい。


かわりゆく祇園

2019年07月14日 | 日記

 しばらく前に祇園で大きな火事があった。

 上はそのあとの様子。

 ところで、火事とおなじぐらいに、この周辺の変わりようにびっくりした。

 5年ぐらいまえであれば、このあたりは古いお茶屋がならび、一見さんが気軽に入れるような店は多くなかった。

 そういった雰囲気があるのが祇園だと思っていた。

 しかし、いまでは気軽に入れるお土産屋や飲食店が増え、雰囲気が大きく変わってきている。

 小さなショックを受けながら花見小路を歩いていると、ハードロックカフェの開店に偶然でくわした。

 東京にはかなり前から店があり、大阪や福岡にも支店があるハードロックカフェだが、京都には初出店。

 賛否はあるだろうが、私個人としては、町屋風のデザインで花見小路の雰囲気にうまく溶け込んでいるように感じた。

 祇園が10年後にどのようになっているか、大変気になるところである。

  

 

 20年ぐらい前、ラスベガスのハードロックカフェの前でとった写真。隣は連れ合い。


下院の民主党、最低賃金を15ドル(1650円)に引き上げる法案の可決目指す

2019年07月11日 | 日記

 米下院で過半数をにぎる民主党は、来週、2025年までに連邦最低賃金を15ドル(1650円:1ドル=110円)にひきあげる法案を可決することをめざしている。

 上院は共和党が過半数をにぎっているため、実際に法案が成立する見込みはないが、投票にさきだって中立のCBO(議会予算局)は、最低賃金引き上げが雇用に及ぼす影響の予想を公表した。

 CBOによれば、2025年までに最低賃金を15ドル(1650円)にひきあげた場合、全米で130万人の雇用が失われる

 CBOは、その一方で、最低賃金引き上げにより、全米で130万人が貧困から抜け出せるとしている(各種の福祉給付が不要となる)。

 ちなみにCBOは、2025年までに最低賃金を12ドル(1320円)に引き上げたときの影響も予想しており、全米で30万人の雇用が失われるとしている。<ちなみに、現在、アメリカでは毎月20万人前後の雇用が新たに生み出されている。>

 なお、アメリカでは州、郡、市レベルで最低賃金の引き上げが進んでおり、雇用への影響が調査されている。

 ウォールストリートジャーナルで「もっとも引用される研究」とされるマサチューセッツ大学の調査は、1979年から2016年にかけて州レベルでおこなわれた138の最低賃金引上げを調査し、低賃金職への影響はなかったことを明らかにしている

 つけたしであるが、トランプ大統領もさきの選挙期間中は最低賃金を10ドル(1100円)に引き上げることを支持していた。

 来年の大統領選挙では、トランプ大統領が最低賃金引き上げにどのような立場をとるのか注意してみていきたい。

2019年7月19日追記

  2019年7月18日(木)、米下院は2025年10月までに最低賃金を15ドル(1650円)に引き上げる法案を可決した


ロバーツ最高裁長官がスイング・ボータ―に

2019年07月03日 | 日記

  ロバーツ連邦最高裁長官スイング・ボータ―の役割を果たすことが明らかになってきた。

 スイング・ボータ―というのは、最高裁の判決が保守、リベラルどちらか一方に極端にかたよらないよう、両者のバランスをとる投票行動をする裁判官のことをいう。

 米連邦最高裁では長い間、保守派のケネディー氏がこのスイング・ボータ―の役割を果たしてきたが、2018年、ケネディー氏は高齢を理由に辞職の意向を発表。

 後任に保守派のブレット・カバナー氏が任命された。

 アメリカでは、カバナー氏の任命により連邦最高裁の判決が保守に振り切れる可能性が出てきたと心配されていた。

 しかし最近、国勢調査をめぐる重要な判決において保守派のロバーツ長官はリベラル派の判事グループに加わり、スイング・ボータ―となることが明らかになった。

 アメリカでは10年に一度おこなわれる国勢調査をもとに議員の配分がきまる。ところが、トランプ政権は、国勢調査にあらたに市民権の有無を尋ねる項目を加えることを決定し、裁判がおこされていた。調査に市民権についての項目が加わると、民主党支持が多いマイノリティーの人々の調査への回答が減る、つまり民主党の地盤の議員数が減ると考えられている。

 この非常に重要な問題について、ロバーツ長官はリベラル派のグループに加わり(判決は5対4)、政府は新しい質問をくわえる十分な理由を開示していないとして、新しい質問の追加(今年)を差し止めた

 連邦最高裁の判決が保守に振り切れれば、公平であるという司法制度への信頼が揺らいでしまう。ロバーツ長官の行動は、そのような事態の発生をふせごうというものである。

 もっともスイング・ボータ―といっても、バランスのとり方はひとそれぞれ

 ロバーツ長官は最近、選挙区の恣意的な区割り(ゲリマンダリング)をめぐるきわめて重要な裁判で保守派グループに加わり、それを合憲とする判断をくだしている(知事および上下院で多数派を占め、自由に選挙区の区割りをおこなえる州が多い共和党に有利)。

 近年、AIをつかった極端なゲリマンダリングがおこなわれ、選挙結果に大きな影響を与えていることが大きな問題になっていたが、今回、ロバーツ長官はこれを合憲と判断した。

 スイング・ボータ―としての役割(リベラル派への賛成)は最低限のものになりそうである。

 

2019/7/12追記

 2019年7月11日、トランプ大統領は連邦最高裁判決をうけ、国勢調査にあらたに市民権(国籍)の有無を尋ねる項目を入れることを断念すると公式に発表した

2020/5/30追記

 2020年5月29日、コロナ感染が拡大する中、カリフォルニア州が教会の礼拝に対して定員の25%の制限を設けたことに反対して起こされた裁判において、ロバーツ長官はリベラル派とともにカリフォルニア州の措置を合憲とする判断をおこない、5対4で合憲判決が確定した

 

米連邦最高裁のケネディー氏が辞職:最高裁の保守化が一気に進むか (2018/6/28)

トランプ大統領の国家非常事態宣言、違憲の疑いが強い (2019/2/28)