大野威研究室ブログ

おもにアメリカの自動車産業、雇用問題、労働問題、労使関係、経済状況について、最近気になったことを不定期で書いています。

6月24日にトルコで大統領選挙: 選挙後が焦点

2018年06月07日 | 日記

  2018年6月24日(日)にトルコで大統領選挙がおこなわれる。

 エルドガン大統領の当選は確実視されており、焦点は選挙後にリラの下落をくいとめるため経済政策が引き締めに転換するかどうか

 フィナンシャル・タイムズによれば、今年に入ってトルコ通貨リラは18%下落。

 これに原油価格高騰などがかさなり、トルコの5月のインフレ率は12.2%に達した。

 またトルコの民間企業がもつ外貨建て債務は2950億ドル(32兆円:1ドル=110円)。リラ下落により利払いや借り換えコストが増加、企業収益を圧迫している。

 このためトルコのコングロマリット企業Gamaが銀行団に、10億ドル(1100億円)にのぼる債務返済の繰り延べを要請するといった事態も生じている。 

 しかし選挙をひかえエルドガン大統領は、緊縮財政にかじをきることを拒否。

 逆に、補助金を使ってガソリン価格を凍結。トルコ中央銀行の利上げにも強く反対している(トルコ中銀は5月23日に政策金利を3%上げて16.5%に引き上げた)。

 問題は、大統領選挙が終わった後に、リラ下落をくいとめるため緊縮財政にかじが切られるかどうか

 大統領選挙後のトルコの経済政策の変化に注目していきたい。

2018年6月8日(金)追記

 2018年6月7日(木)、トルコ中銀は政策金利を1.25%上げて17.75%に引き上げた


7月1日にメキシコで大統領選挙: ポピュリストのオブラドール氏が優勢

2018年06月06日 | 日記

 2018年7月1日(日)にメキシコで大統領選挙がおこなわれる。

 トランプ大統領は当選以来、メキシコとの国境に壁を作り、移民の取り締まり、強制送還を強く進めると主張。NAFTA(北米自由貿易協定)の再交渉では、メキシコに不利となる変更を強く迫っている。

 こうしたなか、これまで対米経済協力を進めてきた政党に批判が集中。世論調査では、ポピュリスト・オブラドール氏が他候補に20%近い差をつけている。

 ウォール・ストリート・ジャーナル(2018/6/4)は、オブラドール氏の経済政策を次のようにまとめている。

1) 若年失業者の就業支援に51億ドル(5.6千億円:1ドル=110円)をあてるほか、年金の倍増、2つの石油精製所の建設(インフラ投資)などをおこなう。

2) ガソリン価格を凍結する。

3) アメリカとの国境地帯で消費税を引き下げる。

4) 政府の腐敗追求、効率化によって上記に必要な資金200億ドル(2.2兆円:GDPの2%相当)を捻出する。具体的には5万ドル(550万円)以上の年収を得ている政府高官の給与を半額にし、政府内の管理職数を70%削減する。また省庁ごとにおこなわれている物品の購入を中央政府に集中させ効率化をはかるとともに、諸契約の入札制度の透明化を進める。

 ウォール・ストリート・ジャーナルによれば、現ニエト大統領のもとで政府債務は一時GDPの49%まで増加したが、現在は減少傾向にあり、今年度はGDPの0.8%相当の財政黒字がみこまれている。

 オブラドール氏の経済顧問ウルズア(Urzua)氏は次期政権は財政規律を重んじると述べているが、一部から政府負債の増加を懸念する声がでている。

 メキシコの株式はアメリカとの経済摩擦懸念などもあり、今年にはいって9%下落。通貨ペソの下落も続いている