大野威研究室ブログ

おもにアメリカの自動車産業、雇用問題、労働問題、労使関係、経済状況について、最近気になったことを不定期で書いています。

トランプ氏、支持率低下

2017年01月15日 | 日記

 2017年1月13日(木)に発表されたGALLUP調査によれば、大統領就任直前の支持率としてはトランプ氏の支持率は歴代最低で、12月にくらべても支持率が低下していることがわかった。

 ギャラップによると第一期就任直前の支持率は、クリントン大統領が68%(不支持18%)、ジョージ・W・ブッシュ大統領が61%(同25%)、オバマ大統領が83%(同12%)であるのに対し、トランプ氏の支持率は44%(不支持51%)と過半数を切り歴代最低となっている。

 さらにもともと低い支持率が低下傾向にあることもわかった。12月の支持率は48%(不支持48%)だった。

 共和党支持者の支持率は依然86%の高率であるが、民主党支持者の支持率は13%(12月の17%からさらに低下)と低迷している。

 とくに目立つのが無党派の支持率低下。無党派の支持率は12月の46%から33%に大きく低下している。

 通常、大統領就任後100日間はハネムーン期間と呼ばれ、メディアは新政権に対する性急な非難や判断を避けるとされている。しかし、トランプ氏はツイッターを通じてCNNなどメディアに対する誹謗中傷(フェイクメディアなど)を繰り返しており、またロシアとの癒着疑惑が勃発するなど、今回はこれが守られそうにない

 就任前から、再選が危ぶまれる状況になってきている。

 だた心配もある。支持率が低かったジョージ・W・ブッシュ大統領は9・11(大規模テロ)をきっかけにイラクに侵攻して支持率を急上昇させた。おなじことが起こらないよう願うばかりである。


トランプ大統領、ロシアに私生活の秘密を握られる?

2017年01月13日 | 日記

 インフルエンザの予防注射をしたのに風邪をひいた。

 これが結構きつい。月曜日は最終授業なので休講にすることができない。月曜に声が出るか心配。

 ところでトランプ氏の選挙後初の記者会見のひどさが話題になっている。

 なかでもひどかったのが、正面に座っていたCNNの記者に対して「おまえはフェイクニュース(嘘つきニュース)だ」、「質問の機会は与えない」「無礼だ(黙れ)」と激しく攻撃した場面である。

 その背景にあるのは、CNNによって報じられたトランプ氏はロシアに私生活の弱みを握られているとの報道である。

 日本の新聞では詳しく説明されていないがニューヨーク・タイムズ(1/11)によれば、情報源は元MI6(イギリス情報部)のスティール氏。氏は、最初は共和党の反トランプ派に、次はクリントン支持派に雇われ、トランプ氏のあらをさがしてレポートにまとめることになった。その内容は、ロシアが売春婦とトランプ氏の会話を録音しているとか、ロシアはおいしい事業の話でトランプ氏を取り込もうとした、といったセンセーショナルなものであった。

 あまりに衝撃的なため、このレポートはMI6やアメリカの情報機関に提出され、その後オバマ大統領、マケイン上院議員などが知るところとなった。さらにコピーは新聞社などに広く出回ることになった。

 スティール氏はFIFAの汚職事件でFBIに協力するなど米英の情報機関からは信頼の厚い人物とされているが、各社はレポートの裏が取れないためニュースにできないでいた。

 しかし、記者会見前になってCNNがこのレポートを報道したため、あのようなひどいやり取りになった、というのがNYTの記事である。ちなみにNYTは、レポートの信ぴょう性を確かめることは困難としている。

 最近トランプ氏を知った人は会見でのこうしたやりとりにびっくりしたと思うが、もとからトランプ氏を知っている人(つまりほとんどのアメリカ人)には普段見慣れたいつものトランプ氏である。

 一部の人は大統領になったらトランプ氏は変わると考えているが、記者会見やツイッターでの挑発的な発言をみるかぎりトランプ氏はこれまでのスタイルを変えるつもりはないようだ。

 このトランプ劇場は(最低)4年続く・・・・。


ニューヨーク州、全公立大学の授業料を無料化

2017年01月09日 | 日記

 ニューヨーク・タイムズ(1月3日)によれば、2017年1月3日(火)、NY州のクオモ知事(民主党)は、一定年収以下の場合すべての公立大学(2年制のコミュニティー・カレッジ含む)の授業料が実質無料となる仕組みを導入すると発表した。

 NY州の仕組みは、返済不要の奨学金の受給額と授業料の差額を州が負担するというもの。 

 当初は10万ドル以下(1200万円以下:1ドル=120円で計算)の世帯が授業料無料の対象となるが、2019年までにそれを12.5万ドル(1500万円)まで引き上げる予定。これによりNY全州で約20万人の授業料が実質無料になるとみられている。

 NYTによれば現在、NY州立大学(4年制)の授業料は6,470ドル(78万円)、州立のコミュニティー・カレッジ(2年制)の授業料は4,350ドル(52万円)。

 さきの大統領予備選挙で、民主党のサンダース氏は大学の無料化を公約に掲げ若者から大きな支持を集めていたが、NY州知事の決定はこれを州レベルで実現するもの。この動きが他州に広がるか注目される。NYTによれば、これまでにオレゴン州とテネシー州がコミュニティーカレッジの学費を実質無料化している。

 

◆ 補足

 日本では誤解されているが、アメリカは大学数こそ私立のほうが多いが、学生数は公立のほうが多い(日本と逆で私立は小規模校が多いため)。

 また日本では、アメリカの州立大学の学費は日本の私立大学の学費より高いというイメージがあるが、まったくの誤解である。この十年余りでアメリカの公立大学の学費はかなりあがったが、それでも日本の私大の学費よりは安く抑えられている(しかもアメリカの大学に入学金はない-少額のデポジットが求められることはある-)。ちなみに州立大学の学費は一般に、州出身者と州外出身者(国外含む)の二本立てで、家族が州の納税者である州出身者には授業料が低く設定されている。一方、家族が税金を払っていない州外出身者-国外含む-にはその数倍の高い学費が適用される。日本からの留学生にはこうした仕組みを知らず、自分が支払っている高い学費が一般の学費だと思っている人も多い。

 なおアメリカの公立大学の多くは州立で、フラグシップ(基幹)大学と呼ばれる各州のトップの公立大学にはノーベル賞受賞者を輩出している有名大学(UCLA、UCバークレー、ミシガン大学など)も多い。


ニューヨーク州、インディアンポイント原発を廃止へ

2017年01月07日 | 日記

 ニューヨーク・タイムズによれば、2017年1月6日(金)、ニューヨーク州のクオモ知事はインディアンポイント原発を2021年までに廃止すると発表した。

 インディアンポイント原発は、マンハッタンからわずか30マイル(50km)の距離にあり、その危険性がたびたび指摘されてきた。クオモ知事は、2020年4月までに2基ある原発のうち1基を、残りを2021年4月までに停止するとしている。ただし、NYによれば、代替エネルギーが見つからない場合は停止が2024-25年まで伸びる可能性があるとされている。

 先日は東芝が、米原発建設会社の買収に際し、同社の価値を過大に見積もっていた可能性(数千億円の特別損失が発生する可能性)が浮上したが、背景にはアメリカにおける原発への規制強化と建設期間の長期化(建設コストアップ)がある。この傾向は、地球温暖化を否定し、エクソンCEOを国務長官に指名するトランプ大統領のもとで変わることはないだろう。アメリカ人の多くは原発産業を斜陽産業とみなしている。


新自由主義のレーガン大統領のもとで保護貿易的政策が積極的に進められた

2017年01月05日 | 日記

 共和党は伝統的に自由貿易主義であり、トランプ氏の保護貿易的主張は実現しないとする見方が多い。

 しかし私は、①共和党支持者のあいだで自由貿易への反対が増えている、②新自由主義を標榜するレーガン政権において保護貿易的政策が積極的に進められた、という2つの点から、トランプ政権において保護貿易的政策が進められていく可能性が高いと考えている。

 かつては、共和党より民主党支持者のほうが自由貿易へ否定的意見をもっていた。

 しかし大統領選挙のさなかおこなわれたPOLITICOとハーバード大学の共同世論調査によれば、その傾向が現在は逆転している。同調査によれば、自由貿易が仕事を奪うと考えるのは民主党支持者で54%であるのに対し、共和党支持者では85%に達している。また自由貿易が地域社会を傷つけてきたと考える者の割合は、民主党支持者で24%であるのに対し、共和党支持者では47%となっている。

 Pew Research Centerの調査でも、自由貿易を悪いと考える者の割合が、民主党支持者で34%(よいは56%)であるのに対し、共和党支持者で53%(よいは38%)となっている。とくにトランプ氏支持者で自由貿易を悪いと考える人が多くなっている(67%)。

 こうした支持層の変化は、共和党に貿易政策の転換を強く促していると考えられる。先日、ライトハウザー氏が通商代表部の代表に指名されたが、氏はこの数年、共和党に保護主義への転換を求め続けていることでも有名である

 もうひとつ、トランプ氏が見本とする共和党のレーガン大統領は新自由主義の旗頭であったが、そのもとで保護貿易的政策が進められたことも忘れることはできない。

 1981年に大統領となったレーガン大統領は、トランプ氏と同様に、大幅な減税をおこなう一方、支出(レーガン氏は国防費、トランプ氏はインフラ投資)を大幅に増額したことで、財政赤字を拡大させた。この結果、当時はインフレ期待が高かったこともあり、政策金利が10%を超えて大きく上昇。それにより大幅なドル高がもたらされることになった。

 大幅なドル高は、貿易赤字を拡大させたため、第二次レーガン政権は保護貿易的政策を積極的に進めることになる。とくに対米赤字の元凶となっていた日本がターゲットとなり、円の切り上げ(プラザ合意)、自動車の輸出自主規制がおこなわれることになった(この時、通商代表部の次席次官をつとめていたのがライトハウザー氏)。

 もっとも自由主義的とされるレーガン大統領のもとで、こうした保護貿易的政策が進められたことはしっかり銘記される必要がある。

 そしてレーガン大統領を見本と仰ぐトランプ氏は、この過去の「成功」を現代によみがえらせようとしているようにみえる。

 今後の展開をしっかり見ていきたい。