共和党は伝統的に自由貿易主義であり、トランプ氏の保護貿易的主張は実現しないとする見方が多い。
しかし私は、①共和党支持者のあいだで自由貿易への反対が増えている、②新自由主義を標榜するレーガン政権において保護貿易的政策が積極的に進められた、という2つの点から、トランプ政権において保護貿易的政策が進められていく可能性が高いと考えている。
かつては、共和党より民主党支持者のほうが自由貿易へ否定的意見をもっていた。
しかし大統領選挙のさなかおこなわれたPOLITICOとハーバード大学の共同世論調査によれば、その傾向が現在は逆転している。同調査によれば、自由貿易が仕事を奪うと考えるのは民主党支持者で54%であるのに対し、共和党支持者では85%に達している。また自由貿易が地域社会を傷つけてきたと考える者の割合は、民主党支持者で24%であるのに対し、共和党支持者では47%となっている。
Pew Research Centerの調査でも、自由貿易を悪いと考える者の割合が、民主党支持者で34%(よいは56%)であるのに対し、共和党支持者で53%(よいは38%)となっている。とくにトランプ氏支持者で自由貿易を悪いと考える人が多くなっている(67%)。
こうした支持層の変化は、共和党に貿易政策の転換を強く促していると考えられる。先日、ライトハウザー氏が通商代表部の代表に指名されたが、氏はこの数年、共和党に保護主義への転換を求め続けていることでも有名である。
もうひとつ、トランプ氏が見本とする共和党のレーガン大統領は新自由主義の旗頭であったが、そのもとで保護貿易的政策が進められたことも忘れることはできない。
1981年に大統領となったレーガン大統領は、トランプ氏と同様に、大幅な減税をおこなう一方、支出(レーガン氏は国防費、トランプ氏はインフラ投資)を大幅に増額したことで、財政赤字を拡大させた。この結果、当時はインフレ期待が高かったこともあり、政策金利が10%を超えて大きく上昇。それにより大幅なドル高がもたらされることになった。
大幅なドル高は、貿易赤字を拡大させたため、第二次レーガン政権は保護貿易的政策を積極的に進めることになる。とくに対米赤字の元凶となっていた日本がターゲットとなり、円の切り上げ(プラザ合意)、自動車の輸出自主規制がおこなわれることになった(この時、通商代表部の次席次官をつとめていたのがライトハウザー氏)。
もっとも自由主義的とされるレーガン大統領のもとで、こうした保護貿易的政策が進められたことはしっかり銘記される必要がある。
そしてレーガン大統領を見本と仰ぐトランプ氏は、この過去の「成功」を現代によみがえらせようとしているようにみえる。
今後の展開をしっかり見ていきたい。