CNN/ORCの共同世論調査でついにトランプ氏がクリントン氏を上回った。
調査は9/1-4日にかけて1001人を対象におこなわれた。結果は、トランプ氏45%、クリントン氏43%とトランプ氏の支持率がクリントン氏を上回った(統計誤差3.5%)。
アメリカの大統領選挙では州ごとに票が集計され、もっとも票が多かった候補がその州に割り当てられた「選挙人」(人口比例で割り当て)を獲得する(注)。そして全国でこの選挙人を半分以上獲得した候補が大統領になる。
ところで、多くの州は民主党あるいは共和党の支持がひじょうに強固で、長い間、大統領選挙で他党候補を選んだことがない。このため大統領選挙では、スイング・ステーツといわれる大統領選挙で民主党候補を選ぶこともあれば共和党候補を選ぶこともある揺れる州が焦点となる。結果的に、アメリカの大統領選挙はスイング・ステーツを押さえた候補が勝つ仕組みになっている。
したがってアメリカの大統領選挙の結果を占ううえで重要なのは、全国調査でなくスイング・ステーツの世論調査である。とはいっても、選挙資金で圧倒的な優位をほこるクリントン氏が全国調査とはいえトランプ氏に逆転されたことの意味は小さくない。
これからおこなわれるテレビ討論会の結果によっては、トランプ大統領の可能性が出てくるかもしれない。
個人的には、イギリスのEU離脱に似てきているように思う。イギリスの外では多くの人が経済的な損失を考えれば、イギリスのEU離脱はないと考えていたが、イギリスの人々は自国民優先(移民抑制)という大きな賭けに出た。今回もアメリカの外では多くの人が、これまでのトランプ氏の問題発言や米国版の万里の長城を作るといった極端な政策を考えれば、トランプ氏が大統領に選ばれる可能性は小さいと考えている。しかし実際には、意外なほど多くのアメリカ人がトランプ氏のアメリカ第一主義-具体的には保護貿易や未登録移民の取り締まり強化など-を訴えるトランプ氏を支持している。
投票日直前には、クリントン氏の国務長官(外務大臣)時代の問題メールが公開されることも決まっており、もし最後まで支持率が拮抗した場合、トランプ氏が大統領になる可能性が少なからず出てきたのではないかと思う(2016年11月5日追記:今週、国務省からメールが公開されたが、問題がある内容のメールは含まれていなかった。しかし、FBI長官がメール問題の捜査再開を公言したことで、あたかも機密情報の漏えいなど大きな疑惑があるかのような誤ったイメージが拡散し、トランプ氏の支持が急伸することになっている)。
もちろん、いまがトランプ氏のピークで、このあと失言などで早々に勝負がつく可能性もあると思うが、選挙の行方をしっかり見ていきたい。
(注) メイン州とネブラスカ州の2州は、選挙人を州と選挙区に2分し、州および選挙区それぞれについて、最も投票が多かった候補に選挙人を割り当てる仕組みを取っている。