大野威研究室ブログ

おもにアメリカの自動車産業、雇用問題、労働問題、労使関係、経済状況について、最近気になったことを不定期で書いています。

サギノー工場、短いストライキの後、職場復帰

2015年12月11日 | 日記

 Automotive Newsなどによれば、Nexteer社のサギノー工場(ミシガン州)の労働者約3,000人(UAW Local699)は、先に労使間で合意された労働協約案を不十分だとして否決。2015年12月7日(月)からストライキに突入した。しかし20時間のストライキの後、12月8日(火)に労使間で新しい労働協約について暫定合意が成立。同日の夜シフトから生産が再開された模様。 

 前回否決された労働協約の内容は、1)4年かけて初任給を現在の時給13ドル(1560円:1ドル=120円)から15.35ドル(1840円)に引き上げる、2)(入った当初の労働者を除く)労働者の賃金を15.85-17.25ドル(1900円-2070円)の間に引き上げる、というもの。しかし多くの労働者は、この賃上げ額を不満として、あるいは医療保険の一部で負担増が生じることに反発して、当初の労働協約を否決。今回のストライキに至った。

 来週、新たに合意された労働協約について再び組合員投票がおこなわれる予定。いまのところ、新たに合意された労働協約の内容は明らかにされていない。新しい労働協約が多数の賛成を得ることができない場合、ストライキが再開される可能性が残っている。

  リーマンショック後、米製造業では賃金の停滞が続いていたが、ここにきて上記のような大幅な賃上げ事例が出始めておりマクロ指標への好影響が期待される。 

Nexteer社のサギノー工場(UAW Local 699)、新労働協約案を圧倒的多数で否決 (以前のブログ)

2015/12/24追記

 サギノー工場の組合員は、12月18日、新しい労働協約(5年間)を過半数の賛成で承認した。

 


ハイイールド債のデフォルト増加

2015年12月11日 | 日記

 海外で、ハイイールド債またはジャンク債(低格付け企業の発行する高利回り債)のデフォルト(債務不履行)増加を懸念する記事が増えている。12月8日のウォールストリートジャーナル(WSJ)は具体的に次のような数値をあげている。

 「米国のジャンク債発行残高は12月4日時点で1兆3000億ドルと、2007年の7090億ドルから急増」

 「バークレイズによると、新興国では高利回り社債のデフォルト率がこの1年間で3.8%となり、米国の2.5%を上回る。4年前は0.7%と、米国の2.1%を大きく下回っていた」

 同日付の別の記事でも以下のような数字があげられている。

 「エドワード・アルトマン教授によると。ジャンク債のデフォルト率は今年2.1%から2.6%に上昇し、2016年には09年以降で初めて過去30年間の平均3.8%を突破して4.6%に跳ね上がる可能性が高い」

 どちらの記事も、来年以降、ハイイールド債を発行している企業の借り換えがますます困難になり(借り換えコストが大幅に上昇し)、デフォルトが急増する可能性を示唆している。大きな混乱にならないことを祈るばかりだ。