大野威研究室ブログ

おもにアメリカの自動車産業、雇用問題、労働問題、労使関係、経済状況について、最近気になったことを不定期で書いています。

アメリカでデフォルトが増加:最近の気になる経済記事

2015年12月06日 | 日記

<アメリカでデフォルト(債務不履行)が増加>

 先日のフィナンシャルタイムズ(FT紙)によれば、2015年これまでの世界のデフォルト総額は950億ドル(約11兆円:1ドル=120円で計算)と2009年以降で最高となっている。最大の原因は石油価格の下落で、とくにアメリカの小規模石油、ガス関連企業が大きな影響を受けている。その結果、上記デフォルトの5分の3はアメリカで生じている。また5分の1は新興国市場で生じている。こうした状況をうけて現在、アメリカの石油、ガス関連企業によって発行されるハイイールド債(格付けの低い企業が発行する高利回り債)の約4分の3は、米国債より10%以上(ベーシスポイントではない!)高い利回りとなっている。

<邦銀の海外融資>

 日経(10/11)によれば、2012年~14年12月の石油ガス業界むけ協調融資は三菱UFJが世界1位、みずほが5位、三井住友が10位となっている。これについて日経は「3メガ銀とも資源関連投融資は全融資の4~5%にとどまり、仮に焦げ付いても大きな傷を負うことはなさそうだ」と記している。

<中国鉄鋼業が巨額の赤字>

 FT紙によれば、中国のトップ101鉄鋼企業は2015年10月までで110億ドル(約1.3兆円)の赤字となっている。これは、2014年の総利益の2倍以上にあたる。こうした中、10月には国有鉄鋼企業大手の中国中鋼集団(Sinosteel)が債務遅延(デフォルト)に陥る事態も起きている。そしてFT紙は問題の原因である過剰生産を解消するには10%以上の設備廃棄が必要だとする識者の見解を紹介している。

<コメント>

 超低金利が続く中、少しでも金利を稼ぎたいということで日本でもハイイールド債やそれを組み込んだハイイールドファンドが人気を集めている。私も最近、高齢の親戚がごく少額ではあるがピムコのハイイールドファンドを地元銀行(京都ではない)から買っていることを知ってひっくり返りそうになったことがある。親戚はグロスの名前を聞いたことすらないはずだ。去年まではデフォルトがきわめて低い率だったので、それでもよかったのだろう。ただこれからはどうだろうか。

 米利上げを控え、日本でもすでに既発債の一部は大きく値を崩している。この数年で急激に積みあがったハイイールド債は、米自動車販売のサブプライム(低信用の人向けの融資)とともに、これから世界経済に大きな影を投げかける可能性が高いのではないかと、まあ私などが考えても仕方がないが思ったりしている。

 <2015/12/7追記>

 日経(12/7)は、GPIFが今年の10月からハイイールド債への投資を始めたとしている。ハイイールド債にもいろいろなものがあるとは思うが、よりによって今からと思うのは私だけではないようだ。