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89歳の日々

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藤沢周平の「半生の記」「藤沢周平のすべて」「三屋清左衛門残日録」「蝉しぐれ」

2007-02-14 22:23:31 | 読書
 
 藤沢周平はたまたま本屋で「半生の記」を手にとってから愛読するようになった。
 「藤沢周平のすべて」では丸谷才一等の周平フアンの作家達が作品を語っている。井上ひさし氏は、物語の海坂藩の地図を描きながら読んでいると言い、杉本章子氏は周平のデビュー当時から,作品の総て読んでいて作中の人物とは知り合いの人の様に親し気だ。
 こんな本を読むのも面白いし、語られている作品をまた読みたくなる。丁度2~3日病気で寝ていたので、これらを再読した。

 「三屋清左衛門残日録」は、江戸藩勤めを終え、故郷に帰った清左衛門の物語だが、退職した後は子供の時楽しんだ釣りをしたり、剣術を又始めて道場で子供たちを指南する役にしてもらったり、経書を学びに行ったりする。たびたび飲み屋で昔の友達と飲んだり、地元の素朴で美味しい料理を食べたりする。
 これは、退職者にとって、理想的すぎる暮らし方ですね・

 ”日は一直線に野を照らし、野の向こうに今は克明な姿を現して来た城下の木立や家々の白壁などを照らしていた。野の稲は、いちめんに直立する穂をつけ、白い花がひらくのも間の無いだろうと思われた”「三屋清左衛門残日録」から。

 ここには誰もが懐かしい風景が浮世絵のバックのように描かれている。若い時に詩や俳句に親しんだ作者の四季折々の自然描写が、物語を彩っている。

 でも、おかしいのは「たそがれ清兵衛」のように、いぜんは剣の名手だった人が今は、市井にうずもれ世間の笑われ者に様になっていても,ひとたび剣を取ると目にも止らぬ妖剣をもって強い相手を倒すのです。日ごろの練習の無しで・・・

 故郷に帰った清左衛門は、妻を亡くして、息子夫婦と暮らしている。藩主が彼の退職時に隠居部屋を作って与えた程の役であって、現在も不自由の無い暮らしをしているが、嫁にはなるべく世話にならないように気を遣っている。だが彼の貧しい友は嫁にも余り世話もして貰えないのではないかと案じで居る。

 恵まれている彼とは言え、老いの寒々とした寂寥感が、忍び寄って来ている。こんな生活をしている、清左衛門を取り巻く物語を面白く読んだ。

・・・ これに続いて「蝉しぐれ」をよむ。かの謹厳実直な(ような?)渡辺昇一氏が義母の読んでいる「蝉しぐれ」を読んで以来、熱烈なフアンになったと書いている。一寸読み始めると、何度か読んだこの物語を、私もついつい読み終えてしまう。



お正月 ・・・帚木蓬生作 「逃亡」を読む・・・

2007-01-09 21:45:21 | 読書
        神をも欺く(と夫が言う)「パック入りのお鏡」

 九谷美陶園は、山代温泉の町にあるので、20年前からお正月の2日からショウルームを開けて営業しています。20年ほど前には、お正月4日間ほどはどこのお店も開けていなくて、温泉に来れてたお客様が行くところが無くて困ったようです。それで旅館から、元旦からでも営業を始める様に、言われました。

 このごろは、元旦からでも営業しているお店が多くなりましたが、九谷美陶園としては、相変わらず2日からショウルームのみは開けて私も着物を着ます。毎年おいで下さるお客様もありまして、本当に懐かしく1年中の様々なことをお話し、親戚の方のように思えたり致します。夫も羽織袴を着たら良いのですが、面倒がって中々着ません。

 写真は、自宅のお鏡飾りです。お餅は2段くっ付いている真空パック入りの物で、搗き立てのお餅ででは無いので、夫は「神をも欺いているか!」と嘆いています。

 玄関飾りは当地の通常のものでは無く、一寸変わった物を飾っています。
お正月は、2日から忙しいので、年末の27日と30日の2回自宅で忘年パーテイをしました。

 パーテイとお正月の料理は孫娘が覚えたいと言って、写真を取りレシピーを書いておりました。お料理は外国に行っても、とても役に立ちますので、簡単なパーテイや、正月料理を出来るようになるのは大賛成です。
  
 ところで、お正月の間は帚木蓬生「逃亡」を読みました。2段組で600ページほどの本ですが、ついつい引き込まれて読み継いでしまいました。

 敗戦の時中国にいた憲兵が、報復される事を恐れ、隊から脱走し日本に帰る邦人収容所に潜りこんで何とか帰国します。しかし日本の巡査に見つかり、中国での裁判を受けなければならない「JHQからの通達」を持って来る。それから逃亡しまわり、過酷な生活を続けるがとうとう捕らえられる・・・。

 中国で日本の憲兵達がした残虐の数数、また米国が日本の町・民間人に空が暗くなるほどの爆弾を落とし1夜に何万人をも殺し、遂には原子爆弾を落とす。その米国の兵隊を生体解剖する日本人・・・。

 作者は大学で仏文専攻し、TBS勤務の後医学部卒業し、現在精神科医との事だがどちらのサイドにも就かず、物事を公平に述べている。 しかし戦争の最高責任者が沢山の兵隊を死に至らせ、終戦後に至っても何千人の兵隊達が外国でリンチのような裁判で死んで行った!
 その最高責任者に対しては、作者は決して許さない。 

 「世紀の遺書」と言う本は、以前読んだが、戦後海外に呼び出されてそこでの裁判で死刑にされた人達の遺書を集めた大部の本で、悲痛の書であった事を思い出す。戦争の悲劇を忘れている政治家は先ず読んで貰いたいが、どうしたら読むんでしょう?

 

「風の影」カルロス・ルイス・サフオン を読む

2006-12-29 22:27:57 | 読書
 「風の影」は」スペインの作家によるミステリー。
バルセロナの地図が付いていて、作中に書かれている通りや教会をなぞって歩けるのではないかと思われる。

 以前訪れた、」ピカソの美術館があるユダヤ人街の重々しい雰囲気などが思い出される作風。

 1936年から39年にかけての凄惨なスペイン内戦時代前後がバックになっているが、全体にゴシック小説というジャンルと思われる。古いおどろおどろしい建物、恐ろしい奇怪な雰囲気は、私には珍しいスタイルの本。

 結構面白く読ませて、この忙しい年の瀬に拘わらず読んでしまう。
でも、3人ほどの女性はいずれも同じように妖精のようなはかなげで、兄妹がいて兄の友人がその妹と恋愛関係になる。同じような状況が重なっている。 ヒローイン・フリアンの恋は「嵐が丘」のヒースクリフを思わせる。

 1昨日は会社の最後の日で、自宅にスタッフやお世話になっている方を招き、手料理で忘年会をする。皆様ご苦労様でした。

 「ローストビーフ1k」を焼き、「海老のフライ」は衣の付いているのを生協で求め唯揚げるだけで楽だった。「りんご入りの白和え」「サラダ」「蟹缶と卵のすーぷ」「果物入りの杏仁どーふ」。こんな時間が余りかからないで出来るメニューでした。

 年賀状も何とか書き終わり、明日もう一度お客様をする、メニューを作り買い物をして来て、「花はさくら木」読み始める。なかなか面白い・・。

「ミン妃暗殺」を読む

2006-12-21 23:43:50 | 読書
                  (写真は加藤様から頂いた胡蝶蘭)
「ミン妃暗殺」―朝鮮王朝末期の国母―  新潮文庫
 これは私の好きなミステリーではなく、ヒストリーを角田房子氏が1987年に書かれたものです。

 1895年(明治28年) 朝鮮駐在公使の計画により軍人、警察関係者、民間人合わせて500人ほどの日本人が、未明に王宮を襲い、朝鮮王朝末期のミン妃を殺害したのです。
 彼女は、日本の支配権が強まるのを恐れ、ロシアに助けを求めようとし、暗殺されました。

 事件のすぐ後で公使は、「これで朝鮮もいよいよ日本の物になった。もう安心だ」と明るく答えたと言います。
この事件に至るまでの日本が朝鮮王朝や人々に与えた数々の暴虐を少しでも知れば、韓国人の気持ちも少しは分かる事になります。
 
 最も恐ろしいのは、学校でも日本の近代、現代史を教えないと言う事ではないでしょうか。私共の時代でも歴史の教科書が明治にならない内に、高校3年の授業は終わっていました。その辺りは入試には出ないと言うようでした・・・

 「過去に目を閉ざす者は、現在にも盲目になる」と言うワイツゼッカー元西独首相の言葉は、今日の新聞にもたまたま取上げられていましたが、これでは日本人は盲目の人ばかりになりはしないでしょうか?

 (そのワイツゼッカー氏ご夫妻は私共のショウルームで1時間ほどご覧になり、よく吟味されて当工房の作品を3点お求め下さったのです!)

寒い夜は、読書でしょうか

2006-03-13 23:51:41 | 読書
 
  (写真はポンペイの遺跡の石畳。イタリでの個展のおり写しました)

 図書館に予約していた「ジェイン・オーステインの読書会」を貰いに行った日の新聞の読書欄では、同書を取り上げていて、オースチンの『高慢と偏見』を読んでいない人にも、満足させるように書いている本との事でした。

  モームの「世界の十大小説」(岩波新書)に19世紀のはじめに書かれた「高慢と偏見」が選ばれたことで、彼女の株が大いに上がったと言われる。私は何度かこの本にトライした事があったが、どうも面白くなかったか、古い岩波文庫の極小の文字だったからか、いずれにしても読めなかった。

  まず、書棚にあるモームの「世界の十大小説」では、彼がオースチンに就いて、言い難い事もすらすらと書いているのが面白い。オースチンが可愛がっていた姪が、彼女のことを“つまり・・平民の卑しさがあり、上流社会の礼儀や流行の何一つ知らない”とこき下ろしている事にも、如何に大作家であろうともオースチンは、育ちが育ちなので、不思議はないとモームは言ってのけます。

  3年ほど前に夫婦でイギリスに行った時に、ロータリーのメンバーのお宅に泊めて頂いた。その御夫妻がウインチェスターンを案内して下さった時に、オースチンの住んでいた変哲のない四角いレンガ建ての家も見せて下さったが、其処が終生の棲家であったようだ。
 
 「世界の十大小説」で、次は「赤と黒」のスタンダールに就いての説明が面白くて読み続けずには居られない。いずれも私の説明が下手なので、これは読んで頂くしかない。

  先ごろ、孫息子に「11歳の誕生日のお祝いに何か買って上げる」と電話をしたら「漫画が良い」と言う。息子から漫画は漫画でも「学習まんが―少年少女日本の歴史24巻」にして欲しい言われ、アマゾンに頼む(ついでに私にはダヴィンチコードの文庫本も)先ず私共の方に届けて貰って、どんなものか一寸見てみようと思い、そのほかにお菓子でも入れる積りだが,未だ着いていない。

  3年ほど前に、ゲーム好きな その孫息子に漫画の「ハルミの囲碁」を16巻ほど買ってあげた事がある。20回以上読んで 囲碁のやり方を何とか自分で覚えたようだ。彼のベッドの中の窓際側にずらりと、漫画の囲碁の本が並んでいた。この子はオセロでは殆どの大人に負けないが、夫ほどの囲碁好きにはならない様に思う。

  30年以上前には,息子の好きな野球の本を、小学年4年の頃だったか、本屋の店に有っただけ9冊位買って上げたら、大学に入っても野球部で過ごすようになってしまった。 その後も野球好きは続き、オランダ勤務でも、大いに色々な人達と愉しんだらしい。

  何はともあれ寒い夜は、九谷美陶園を忘れてゆっくり読書を愉しみましょう。

名古屋在住の方に
 mailを有難うございました。(6月17日に書き足します)
残念ながら、ご存知の方と私共は違うと存じます。私共は18年ほど前に夫が老父の後を継ぐ事になり、東京から帰郷したのです。そのため野球好きな息子は東京育ちです。2ヶ月ほども書かずにおりましたのに、お読み頂き恐縮です。
 読書好きな方なのでしょうか?私も旅行、食事、読書、お庭・・などが好きです。

名古屋在住の方に
 私も札幌、神奈川の住人でした。夫の寺前 瑛生の故郷に30年振りに帰って来ているのです。
私共のmailは bitouen@kutani-mfg.jp です。(美陶園@九谷ーmfg。jp)