致知出版社の「人間力メルマガ」よりです。
(転載開始)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
致知出版社の「人間力メルマガ」
【2011/12/7】 致知出版社編集部 発行
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●いよいよ明日発売です!
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
『人間学入門』(藤尾秀昭・監修)
明日限り(23時59分まで)のアマゾンキャンペーン
※詳しくは下記をご覧ください。
⇒ http://www.chichi.co.jp/book/ningengaku_guide.html
いつも「人間力メルマガ」をご愛読いただき、
誠にありがとうございます。
本日は12月8日(木)に発売される『人間学入門』より、
KDDIを設立した稲盛和夫氏(京セラ名誉会長)の
お話を一部ご紹介します。
──────────────────────────────────
「なぜ第二電電(現KDDI)を設立したか」
稲盛和夫(京セラ名誉会長)
『人間学入門』より
http://www.chichi.co.jp/book/ningengaku_guide.html
─────────────────────────────────
■なぜ第二電電(現KDDI)を設立したか
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
善きことを追求することで、事業を発展させることができる、
と私は信じておりますし、自分自身でも実行してきたつもりです。
一つの実例として、第二電電という会社を
設立した時のお話をしたいと思います。
京セラという会社が少し大きくなったからといって
なぜ電気通信事業に乗り出すのか。
また、東京の経営者ではない、
関西の、しかも京都の事業家が全国ベースの事業に乗り出すというのは、
何か思い上がっているのではないか。
当時はこのようなことを、多くの新聞・雑誌に書かれました。
私は自分が長距離電話の会社を
やることになろうとは思ってもおりませんでした。
しかし海外でも事業をしておりますので、
日本の通信料金が非常に高いということは身に染みて感じていました。
なんとか競争の原理が導入されて、
国民が安い料金で電話を使えるサービスが必要だと思っていたところでした。
けれども、何兆円という売り上げを上げる巨大な企業、
明治以来ずっと独占でやってきたNTTに
対抗できるような企業はできるのだろうか。
できるとしたら、経団連を中心とした日本の大企業が連合体をつくる以外に、
NTTに対抗できるものはないだろうと思っていました。
民間でなんとか早く連合体をつくってNTTに対抗し、
料金を安くしてくれないものかと思っておりましたが、
巨大なNTTに立ち向かうには
あまりにリスクが伴(ともな)うというので、どこも名乗りを上げません。
そのうちに私は日本の大企業が連合体をつくってNTTに対抗しても、
本当の意味での競争にはならないのではないか。
利権の分け合いをするだけで、一般国民から見ると、
競争をしたように見えるけれども、実際は若干(じゃっかん)安くなった程度の料金で
お茶を濁してしまうのではないか。こう思うようになりました。
新しい電気通信事業には、我われのような若い者が燃えて、
二十一世紀に向けて新しいチャレンジをすることが必要なのではないか。
そういうことを思い始めたら矢も楯(たて)もたまらなくなって、
自分の立場もわきまえず、自分の会社の力もわきまえず、
闇雲(やみくも)にNTTに挑戦しようと思い始めたのです。
無謀な戦いだということはよく分かっていました。
しかし考えれば考えるほど、諸外国に比べて大変に高い通信料金を
安くしてあげなければ、国民の方々に対して
申し訳ないという思いが募(つの)ってきました。
NTTの若い技術屋さん、私と親しい人たちに集まってもらって、
どうすればNTTに対抗できるかということを議論し、計画を練りました。
なんとかやれるのではないかというところまで辿り着きましたが、
実際踏み切るとなると、大変に悩みました。
■「動機善なりや。私心なかりしか」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
いまでも当時のことはよく思い出します。
悩み抜いた揚げ句、私は家に帰って寝る前に、
自分は新しい会社をつくって、
無謀にもNTTに挑戦しようとしているけれども、
それは正しいことなのかどうかを、毎晩自問自答することにしたのです。
「動機善なりや。私心なかりしか」という文章を
自分でこしらえて、それを毎晩唱えるわけです。
新しい通信会社をつくってNTTに対抗しようとするのは、
国民のために料金を安くしてあげたいからだ、と自分では言っているし、
思っているけれども、それはきれいごとではないのか。
京セラという会社を京都につくって成功し、少し有名になったものだから、
さらに東京という檜舞台(ひのきぶたい)へ出て行って、
大向(おおむこ)うを捻(うな)らせるような
大見得(みえ)を切りたいという自己顕示(けんじ)欲があるのではないか。
自分がやろうとしていることは本当に人のためを思ってやることなのか、
私利私欲ではないのか。
それを私は「動機善なりや。私心なかりしか」という言葉を唱えながら、
自分に厳しく問い続けたのです。
半年間、一日も休まず、自問自答を繰り返しました。
そして私の思いは決して私利私欲に端を発したものではない、
という結論に辿り着きました。
国民のため、世のため人のために、
犠牲を払ってでもやろうとしている自分の気持ちに、
嘘偽りはないということが分かりました。
そこで、役員会で自分の気持ちを話し、
「大企業の方々もリスクが大きいというので、
なかなかおやりにならないから、自分がやってみたい」
ということを話しました。
その頃、京セラには、現預金で1500億円ありました。
だから、
「もし失敗しても1000億注ぎ込んだら撤退するので、
1000億はどぶに捨てたつもりでやらせてほしい」
ということを言って乗り出したわけです。
※続きは本書をご覧ください。
●『人間学入門』の立ち読みページはこちら
⇒ http://mixpaper.jp/scr/viewer.php?id=4edf079db3891
==================================
いかに人間力を磨くか、各界の先達に学ぶ
『人間学入門』(藤尾秀昭・監修) 1,000円(税込)
→ http://www.chichi.co.jp/book/ningengaku_guide.html
==================================
(転載終了)
京セラの稲森さんが今のKDDIを始められた時の有名なエピソードですね。
京セラの経営で名声や財を成しただけに、この件で、色々書かれたり言われたりするこ
とはある意味稲森さんも読んでいらしたことでしょう。
その上で、稲森さんが判断のよりどころとしたのは、他人がどう思うかではなく、自分の心の中の本当の動機を確認することだったのですね。
「動機善なりや。私心なかりしか」
やはり本当は色々な思いがあったのだと思います。
半年間毎日自問自答を続けられたということにそのことが表れているように思います。
それは、稲森さんの人間らしさをあらわしているようにも思えますし、その覚悟の大きさをあらわしているものだとも思います。
ほとんど何もないところからNTTに対抗する勢力をつくることは、半端な動機では達成することは難しいことだったと思います。
今、携帯電話の業界でKDDIがない世界を想像するのは、なかなか難しいものがあります。
その後、稲森さんは、更に畑違いとも思えるJALの再建を担当されることになります。
やはりそのことについては色々な反響があったことでしょう。
「動機善なりや。私心なかりしか」
自問自答がまたあったことでしょう。
そして、経営を引き受けられてからたった1年で黒字化を達成しました。
経営には業種を越えて共通するものがあり、そして、経営者の心の奥底の動機のあり方が経営の本質に大きく関わっているのだと思います。