"ちょっと外から見た日本"

今、スペインに住んでいます。
大好きな日本のこと、
外からの視点で触れて見たいと思います。

「李登輝学校の教え」 李登輝、小林よしのり著

2010-11-23 05:10:00 | 日記
10年前に行った対談ですが、今に共通する問題意識がちりばめられています。

李登輝さんは、22歳まで日本人でした。京大に入り、学徒出陣も経験します。
日本で終戦を迎え、日本軍撤退後の1946年に台湾大学に編入学、アメリカにも留学します。

“私は日本人として、非常に正当な日本教育を受けた。
後に中国の教育も受け、アメリカにも学びましたが、私の人生に一番影響を与えたのは、この日本時代の教育だったのです。”

当時の日本統治における、台湾の教育制度を評価しています。

蒋介石をついで総統になった蒋経国に見出されて副総統となります。
そして蒋経国総統の任期中の死去に伴い、総統に就任します。

とは言っても全く政治基盤のないところからのスタートでした。

今の中国のように、当時の台湾も、「(国民)党」と「国」が不可分の「党国」という統治体制でした。軍隊も「党国」。
この軍隊を何とかして「党」と切り離し、純粋に国家に属する形に変えるところから始めなくてはなりませんでした。

実力者を牽制し、自らの基盤を固めつつ、同時に民主化も進めて行きます。
中国から、台湾をターゲットとした軍事演習及びミサイル発射実験を受けながらも、ついに民主的な総統の直接選挙を実現します。

台湾には、戦後に国民党とともに中国から移ってきた「外省人」と、それ以前から住んでいた「本省人」がいて対立していましたが、李登輝さんは、その区別をなくし、「新台湾人」であると定義して、融和を計りました。

2000年5月20日の政権の平和的交代を成功裏に完成することが出来たと考え、国民党の主席を辞め、民進党に政権が移ります。

“仕事をするには権力が必要だが、いつでも放棄出来るという覚悟ももたなくてはならない。
権力というのは「借り物」なのです“

“議員をしていた父に「僕に人を推薦してはいけない」と言っていた。そのお陰で自由に存分に仕事をすることが出来た。
約束を守ってくれた父に感謝します、”

“情に流されず、切るものは切る”

どこかの政治家に聞かせたい言葉がちりばめられています。

ただ、以前に金美齢の著書で紹介させて頂きましたが、せっかく台湾生まれの政権である民進党に政権が移ったのにもかかわらず、その後の台湾は、李登輝さんの望んでいない方向に進んでいるようです。
即ち、台湾の中国化が進んでいるのです。

日本には、“(東京裁判史観等で)自己否定があまりに酷すぎて、このままでは駄目だという考えが強くなってきた。これは非常にいいことなんです。”とエールを送ります。

李登輝さん自身は、中国に気を使う日本の外務省の為に、訪日ビザを取るのに苦労したり、会う相手やその言動に制限を受けたり、日本政府から相当気の毒な扱いを受けています。

それにもかかわらず、日本、そしてその未来に対して前向きなコメントが多く、読んでいてありがたく、かつ、日本政府の対応にやりきれないものを感じます。

李登輝さんは、この本の後にも、

「“靖国問題”とは中国とコリアがつくったおとぎ話なんだよ。」

と発言したり、尖閣諸島についても、

「(台湾が)他人の場所に行って、魚が取れただけでも上出来だった。それを自分の『戸籍』にいれようとは、あまりにも幼稚。」

と、無数の批判を浴びながらも、尖閣諸島は日本の領土だとの発言を繰り返しています。
そして、間接的に覇権主義の中国を批判します。

尚、何かと批判されやすい小林よしのりさんの発言、そしてその著作についてです。
確かに、発言もその絵も、過激な印象はありますが、私自身は、その内容は、正道だと思っています。
何よりも、新しい日本史観について、若者に突破口を開いた功績は素晴らしいと思っています。

面白かったのは、日本人の政治家の中にも台湾の理解者が増えて来た、と発言する李登輝さんへのコメント。

「鳩山由紀夫もずいぶんと変わったように見えるんだけども、あれはほとんど哲学のない男です。戦後民主主義者。
アメリカ型合理主義者ですね。中国に逆らえるかどうかと言えば難しいですよ。」

後に首相となる鳩山さんに対する10年前の発言でした。

李登輝学校の教え (小学館文庫)
李 登輝,小林 よしのり
小学館


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2 コメント

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Unknown (KOJI)
2010-11-24 04:12:54
李登輝さんは本当に素晴らしい指導者です。
以前、金美齢さんと一緒に台湾ツアーに伺った際にお会いすることが出来ました!
その時に忍ばせて持って行ってた「武士道解題」にサインまで頂けました!まさに家宝です。
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KOJIさん (テラ)
2010-11-24 04:54:53
ありがとうございます。
金美齢さんと一緒に台湾ツアーに行かれ、李登輝さんにもお会いになられたのですね。
そしてサインまで!(笑)
素晴らしい体験をされましたね。
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