『三橋貴明の<ウラ読み>経済レポート』よりです。
(転載開始)
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野田首相が11月11日に
「TPP交渉参加に向けて関係国との協議に入る」と宣言し、
APECに向かいました。
この「協議に入る」の意味について、
民主党の反対派は「我々の意が通じた」と発言し、
推進派は「TPP交渉に参加することになった」と解釈し、
国民の方もわけがわからない状況になっています。
結局のところ、民主党内の反対があまりにも多く、
首相が「交渉に参加する」と言明することが出来なかった
という話なのでしょうが、
これほどの玉虫色の誤魔化しに基づき話を進めてしまうと、
党内の亀裂はますます深まることになるでしょう。
実際、首相の「協議開始」宣言の直後に、
民主党の鹿野農林水産大臣は、
「首相は参加表明とは言っていない。
今までの情報収集から一歩進んで、協議をするということで、
交渉参加を前提とするものではないと理解している」
と発言。
民主党内はもちろん、閣内ですら
全くコンセンサスが取れていない現実が
あからさまになりました。
国内の議論を放置したまま、
野田首相はAPECに向かったわけですが、
TPP首脳会談に招かれないという屈辱を味わいました。
さて、今後のTPP議論がどのように進むかはまだ不明ですが、
とにかく目立つのは推進派の
「抽象論」「イメージ戦略」「スローガン優先」の姿勢です。
数値的に、あるいは具体的にメリットを示ことが出来ず、
反対派が列挙する「具体的」「数値的」なデメリットに
反論することができないため、
抽象論ベースの議論をするしか無いわけです。
この状況は、
戦前に戦争を煽った大手新聞や軍部と全く同じであり、
わたくしは大変、危惧しています。
TPPのような大きな話を進める際に
「抽象論」で突き進むのでは、まさに亡国の道です。
TPP推進派は、
「日本の政治力で、TPPの問題点について解消すればいい」
と主張していますが、
APEC後にTPPサミットで合意した内容について、
すでにUSTRが発表しており、
その中にはISD条項、ネガティブリストなど、
日本としては到底受け入れられない協定が含まれています。
さらに、マレーシアのナジブ首相は
「すでに合意された事項について再交渉はありえない」
と断言しており(当然だと思います)、
日本がTPP交渉に参加し、
上記問題のある協定を撤廃させることは「不可能」です。
しかも、日本がTPP交渉に参加するには、
9カ国の合意を必要としており、
その協議に六ヶ月間は必要と言われています。
アメリカのオバマ大統領はTPPについて
来年夏に合意すると断言しているため、
日本が交渉に参加した後、
わずか二ヵ月後には正式合意になってしまうのです。
この二ヶ月という短期の間に、
「再交渉は有り得ない」と断言された条項を修正していくなど、
たとえアメリカであっても不可能です。
さらに、日本は世界の超大国でも何でもありません。
上記が「現実」であるにも関わらず、
「いや、日本が交渉すれば何とかなる」と思っていたとしたら、
その人は誇大妄想狂と呼ばれるべきなのです。
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(転載以上)
三橋さんのTPP論については、先日の日記でも触れました。
http://blog.goo.ne.jp/tera-3/e/d64ccf3f2f04bba41cf4583428cd3786
TPPを声高に推進する新聞も、よく読むと事実を書いていることも一部あって、自分なりにそれを繋ぎ合わせて見ると、この三橋さんの論旨と全く同じものになりました。
ただえさえ、交渉力に不安がある中で、マスコミも含めた推進派の方々は、“協議に参加すれば交渉できる。だからこそ早く参加すべき。”と言って来ましたが、そもそもそれはありえないという事を、米国を含めた国々がちゃんと言っているのですよね。
ここで出ているISD条項とは、Investor-State Dispute Settlementの略です。
“あるTPP加盟国(A国)に投資した別の加盟国企業(B企業)が、A国の政策によって損害を被った場合、B企業は、世界銀行傘下の国際投資紛争仲裁センターに提訴できる。その場合A国で裁判は行わない。”
という内容ですね。
この問題について、佐藤ゆかり議員が、“TPP参加の協議に入る”と野田総理が宣言した直前に、野田総理に国会で質問したところ、
なんと野田さんは、しどろもどろになってしまいました。
そして、国家間の条約が国内法に優先するのにもかからわず、
“基本的には我が国の守ってきたその法律で、対応できるように交渉をしていきたい”
というとんちんかんな答えをして、議長が速記を止める事態になってしまいました。
発表当日になっても野田総理がTPPついて何も理解していないということが露呈してしまった訳です。
佐藤議員は、例として、日本の水資源を守るために海外からの山林投資について制限を加えたり、日本のある地区で、外資に対する規制を出した場合に、海外企業から訴えられるリスクについて説明していましたが、全くその通りだと思います。
今、米韓のFTAについて、韓国では猛反対の声が上がっており、このISD条項も槍玉の一つにあがっています。
しかし、なぜか日本のメディアは、“米韓FTAに日本は大きく遅れている。だから日本はTPP参加を急げ”の一点ばりで、韓国の騒ぎもほとんど取り上げません。
やはり異常な状況だと思います。
でも、少しずつ風向きも変わって来ている部分もありそうです。
大手メディアも、総論では、TPPを早く、ということで全く変えていませんが、その中に、多少デメリットの部分も入れるようになって来たからです。
うがった見方をすれば、TPP推進の論調を、後で批判されないためのリスクヘッジが始まったと考えられなくもありません。
また、マスコミが、米国以外に、陰で重視し応援している中国や韓国への配慮という部分も出て来ているのではないかと想像します。
急に中国が日本のTPPを警戒しているという記事も出て来ましたし。
いずれにしても、国の将来、国家のあり方にかかわることですから、政治もメディアも、情報を歪めず隠さず、透明な情報提供をして、きちんと議論することが大切だと思います。
ほんとうにそうですよね。
これが現実にならないといけません。
現実になるにはまだ必要な道のりがありそうですが、このTPPや原発は私たちにそれを促しているように思います。
「到知」私もあるきっかけで知ったのですが、よい雑誌ですよね。
先月号(だったかな)の白鵬と元大鵬の対話もよかった。
自分の根っこの所を確認したり、見直す事ができるような気がします。白鵬さんと元大鵬さんのお話も素晴らしかったですね。