てんちゃんのビックリ箱

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京都工芸繊維大学 美術工芸資料館 訪問 感想

2019-11-29 13:52:07 | 美術館・博物館 等
 

 京都の北山近くに出張があり、昼食を抜けば近く寺院もしくは庭か、小さな美術館に行けそうと判断し、ネットを調べた。それでこの資料館を見つけたので行ってみた。

 そこでは下記の二つの展示会をやっていた。入館料は200円

「草の根のアール・ヌーヴォー 明治期の文芸雑誌と図案教育
    会期:2019.10.28 - 2019.11.22

「ポスターにおける写真表現」
    会期:2019年11月18日(月)~12月14日(土)

どちらも なかなか面白かった。




1.草の根のアール・ヌーヴォー 明治期の文芸雑誌と図案教育



 この展示の背景には、明治の高名な洋画家 浅井忠の存在があることに驚いた。浅井忠は1900年前後2年間フランス留学した後、この大学に招かれその後存命中の6年間、図案の指導をしている。その図案というのが、フランス留学時に浅井が注目し資料を集めてきたアール・ヌーヴォーであった。また京都の工芸会にその指導を行った。このような形で明治の後半にアール・ヌーヴォーが日本に入り、文芸雑誌の表紙にも使われ、国民に広まった。

 展示されていたのは下記である。

・浅井忠作の絵 一枚
・浅井忠らがまとめた図案教育資料
・ミュシャ等のポスター
・アール・ヌーヴォーの影響を受けた文芸雑誌(「明星」等)の表紙や挿絵
・幻の挿絵画家・一条成美の作品(明星等に掲載)
・河瀬満織物株式会社のミュシャに着想を得た西陣織作品(現代作品)


(1)浅井忠の絵 <武士山狩図>
 浅井忠は黒田清輝とともに日本洋画の先駆者として、作品が重要文化財にもなっている画家である。その画家の作品がこの大学にある。
 従来からの日本の題材を、ヨーロッパの狩りの絵の技法を取り入れて書かれたもので、印象派が席捲していた時代でありその描き方が移入されている。非常に丁寧なタッチで気品があり、この大学の人が羨ましい。



(2)ミュシャ等のポスターおよび図案集
 ミュシャおよびその仲間の有名なポスターが数点並べられていた。図案集は
そのポスターの背景によく使われる草花の文様を単純化した手書きの図集が多量に並べられていた。京都地域へのデザイン指導への意欲が感じられた。

(3)文芸雑誌 (「明星」、「新聲」などの表紙/一条成美の絵
 与謝野鉄幹が文芸誌として発刊した明星の表紙は最初、一条成美に依頼された。彼は独学で日本画と洋画の技法を学び、明星の表紙や挿絵をアールヌーヴォーで飾り、好評を博した。しかし暫くして鉄幹とケンカし、別の本の装丁へと移った。明星は明治33年から41年発行されたが、ほぼずっとアールヌーヴォー調の表紙で、大正ロマンの前にロマンチックな風土を作ったことになる。
 (ポスターの図、および下記参照)

 




2.ポスターにおける写真表現



 こちらは、ポスターへの写真の適用に関する展示である。
 かの有名な赤玉ポートワインのポスターなどの大正12年(1922年)から始まった写真利用ポスターの発展過程が示されている。
 こちらの内容は、主に下記のものである。
・初期の美人画に似せたポスター
・60年代から70年代の映画ポスター
・オリンピックのポスター


(1) 初期の美人画に似せたポスター
 赤玉ポートワインのポスターは、写真というよりもほとんど絵画の雰囲気に加工されている。ほぼ無彩色の女性に、色彩のあるワインがよく映えている。



(2) 60年代から70年代の映画ポスター
写真を単純に使うのではなく、その後の処理で(1)のように色や濃さを加工したり、ポスターの中での文字の配置やコラージュのやり方を考えたりといろんな試みがなされた。それが、アートシアターギルドが主に関わった映画のポスターである。私もそのころ青春していたので、懐かしいポスターがたくさんある。あの頃は当然かのようにそれを見ていたのが、写真活用するために一生懸命デザイナーが競っていた主戦場だったのだ。今見ると確かにパンチのあるポスターが多い。
 (ポスターの中、参照)


(3)オリンピックのポスター
 1964年の東京オリンピックのポスターは、その頃子供の頃だったけれども、びっくりした。
 まず1枚目のポスター、写真でもないが単純に赤い大きな丸が、普通は黒い新聞の見開きの面の片側にどかんとでてきた。そして暫くして小学校に飾られた。なんて単純と思った。
 それが2枚目、陸上のスタート。すごい迫力で国際色豊かな選手がスタートを切っている。なんかオリンピックってこんなに迫力があるのかと急に興味がわいた。3枚目が水泳のバタフライ、田舎だったのでこんな泳ぎ方があるとは思わなかった。4枚目の聖火のランナーはおとなしくてほっとしたが、近づく開催日をおもわせた。オリンピックで初めての写真ポスターだそうだが、非常に効果的だったと思う。デザイナーの亀倉さんや企画を考えた人はすごい。

 


 



 札幌オリンピックも2点の写真ポスターがでた。視点を変え白ではなくブルーで競技を浮き立たせたのは面白い。これも亀倉さんの作品、東京オリンピックの時ほどの迫力はないと思う。


 
 長野オリンピックでは写真の印象がなかったが、イラストのポスターになっていた。

今度の東京オリンピックは、どんなポスターになるかたのしみである。

小さな資料館だったが 十分楽しめた。

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2 コメント

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東京オリンピックのポスター (ヒゲオヤジ)
2019-11-30 21:23:41
てんちゃん、こんばんは(^-^)/
私の雨引観音にコメント有難うございましたm(__)m
やっと私の専門分野となりました(笑)
とは言っても絵画の方は門外漢で・・・
浅井忠画伯の<武士山狩図>、初めて拝見致しました。
どうしても武士の絵となると日本画や版画を想像してしまいますが洋画のタッチで描かれた狩りの図、とても新鮮で興味深いです!
それから広告表現としてのイラストや写真、中でも1964年、東京オリンピックのために撮られたスタートの写真、撮られた早崎治さんは私の所属している写真家の団体で会長をされた方(1993年不慮の事故に因り没)で有り何度かお目にかかった事も有ります。
この撮影は大変苦労されたそうで、何度も撮り直し全てのランナーの顔が重ならない様、そして躍動感も損なわれない様に撮れた奇跡的な1枚だったとの事。
早崎さんの代表作となりました。
また赤玉ポートワインの広告が広告写真の草分けとして、またこの様な広告物を文化遺産として後世に残そうと、今私の所属している団体ではデータ化に取り組んでいるところです。
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ヒゲオヤジさん (てんちゃん)
2019-12-03 22:11:23
コメントありがとうございます。
 浅井忠画伯の<武士山狩図> そうなんです。油絵でこんな風に描かれた武士の絵、私もほとんど見ていません。

 東京オリンピックのスタートの写真に関しては、この展覧会でもその裏話を書いていました。最初にこの写真を見たときは、それぞれの人の姿勢が完璧で、合成したものと思っていました。

 赤玉ポートワインの写真は、小さいころ田舎の万事屋に貼ってあったという記憶があります。なんかもっとシャープな印象がありました。ともかくそういったものは文化遺産ですから、ちゃんと残してほしいですね。できればアナログとともに最先端のデジタル化を図ってほしい。

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