てんちゃんのビックリ箱

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為三郎記念館(古川美術館分館)特別展 「高北幸矢インスタレーション」 感想

2019-07-02 13:21:34 | 美術館・博物館 等

 古川為三郎は愛知県出身で日本ヘラルド映画を創業し、30社の大グループまで育て上げた人で、バブルの頃には財産1兆円以上とフォーチュン誌に取り上げられた大富豪である。
 粋人としても知られ、茶室のある邸宅にしつらえるため多くの刀剣と日本美術を蒐集したが、それらを公開するため古川美術館を開館するとともに、その邸宅を自らの記念館として開放した。
 今回古川美術館の特別展とともに、記念館でも独自の特別が開催されたので、初めて訪問した。
まず、記念館のほうの展示について述べる。

展示会名:為三郎記念館 特別展
高北幸矢インスタレーション「落花、未終景」
場所:古川美術館分館 為三郎記念館
期間:5月18日~7月15日
訪問日:2019年6月28日


1.展示内容について
 高岡幸矢氏は三重県出身で、環境デザイン、グラフィックデザインの分野で名を成した69歳の人である。その彼が7年前からアーチストとしてインスタレーションを展開している。きっかけは15年前の椿の落花の夢。一面に落ちた真っ赤な椿が地面を覆いつくし、そこで華やかに咲き続けていたとのこと。
 それから「美しく老い、豊かに終えていく」ということを考えて、椿の落花を中心に展示環境と組み合わせたインスタレーションを実施している。今回も邸宅内外に手作りの椿の落花を展開するとともに、板画を展示している。私とほぼ同年齢であり、テーマについては
共感を持った。テーマの「未終景」とは、散っても終わりではないという意味。

 邸内は残念ながら、撮影可能なのは1室のみである。ただし外は自由でインスタレーションよりも邸宅そのものが魅力的だった。
 
2.屋内の展示
 非常に古いが清掃および整備が行き届いている部屋に落花が並べられ、所々に板絵が掛けられている。そして後述するが、庭を囲む部屋などには、訪れた人がお茶を飲む席がしつらえられている。
 板絵も下記の1枚のみが撮影可能だった。
 オレンジという暖かい色に、やや黄味がかった丸みを帯びた不定形のものが浮かんでいる。ブルー基調のものもあったが、これがメイン展示。オレンジは秋のイメージもあるので、終わりの前の華やかさを考えたのかもしれない。

< 残光 >



人生が
オレンジ色に
染まりゆく
今 残光を
慈しむ時
(実際の表題は違うかもしれません)



 そして同様に1カ所のみ撮影可能だった邸内のインスタレーション。囲炉裏を切った周りに、造り物の椿の落花が置かれている。囲炉裏から血が噴き出したようにも見え、生々しい。

< 部屋が鼓動する >



いつの間に
赤い椿が
溢れ出し
生々しくも
部屋が鼓動する。



 他の部屋も、このような感じ。しかしこの部屋ほど高密度に置かれていない。



3.邸宅外の様子
 邸宅外には、茶室と素晴らしい庭がある。特に庭の巨木が素晴らしい。


< この家の主 >



我こそは
この家の主
庭を埋め
天に傘さし
地下に根をはる




< 巨人の梯子 >



我を呼ぶ
木漏れ日追って
見上げれば
さあ登ってみよと
巨人の梯子



 その巨木と家の間に滝から小川が流れ、回遊路が作られている。小川の中、そして庭の所々に遠慮がちに椿の落花が置かれている。地面に落ちた血の斑点のようにも見え、なまなましい。本当の椿なら色褪せていくだろうが、この場合にはずっとこのなまなましさが維持される。

作者が最初夢に見たような、一面赤い椿で覆われた大地と言うのも見てみたかった。逆になぜこんなパラパラの椿にしたのだろう。


< ほつほつと >



ほつほつと
貴方の辿った
路示す
赤い椿は
今も輝く



< また夢語る >



流れても
その輝きは
失われず
落ち着く先で
また夢語る




 その椿の拡大写真も示す。作者がバルサ材から一個一個手作りをしているとのこと。


< 心注ぎ込むもの >



一輪
また一輪と
増えていく
私の心
注ぎ込むもの





4.その他
 私は、古川美術館とのセット券でここに来たが、この建物だけの入場券は800円で、呈茶つきである。とても美味しそうな和菓子とお茶のセットで、ここの庭を眺めてのんびりできる。高級ホテルでお茶を飲むよりも、こちらのほうが得と思う。








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2 コメント

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日本家屋に赤い椿 (ヒゲオヤジ)
2019-07-04 19:47:37
てんちゃん、こんばんは(^-^)/
バラ園の最終回にコメント有難うございましたm(__)m
しっとりとした日本家屋のお写真、静寂な空気感が伝わってきます・・・
個人的には赤い椿が有っても無くても日本家屋の雰囲気は変わらないと思います。
勿論点景として散りばめられた赤い椿も、綺麗だと思いますが、インスタレーションはその作者の心理を表した物、人に因って理解出来る物、或いは好き嫌いが有るかと思います。
ただ私がこの日本家屋の庭や小川に散りばめられた椿を見て、真っ先に思ったのは黒澤明監督の椿三十郎のシーンで庭に咲いた椿を川に流すカットでした。
俗人的な見方で済みません。
それと椿の花は首から落ちる事で武家に嫌われた花とか・・・
武家屋敷の様な為三郎記念館に散りばめられた赤い椿、面白い対比かも知れません(^o^)
返信する
ヒゲオヤジさん (てんちゃん)
2019-07-05 00:47:26
コメントありがとうございます。

椿はヒゲオヤジさんも書かれたように、武家には首が落ちる花として嫌われました。
しかしこのインスタレーションの作者は、逆に首のように落ちていてもそこでまだ椿として生々しく生きている(サクラのようにバラバラになったら散った時点で終わり)と考え、高齢者となった自分をそこに重ね合わせたのです。
 すなわち、サクラのようにサラッと終わるのではなく、花咲いた後に落ちてしまっても、そこで自分の生の輝きを維持していきたいという風に考えたのだと思います。

 彼はデザインの活動のピークを多分過ぎたのだけれど、その後をまだ輝かせたいと、その主張をアーティストになって、インスタレーションを展開する中で、主張しているのだと思います。
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